大学・研究機関由来のデータを情報源とする2016年から2017年に発表されたフィンランドの研究成果物のオープンアクセス(OA)状況等の分析(文献紹介)

2020年8月17日付で、科学計量学・計量情報学国際学会(ISSI)の公式オープンアクセス(OA)ジャーナル“Quantitative Science Studies”の「受理直後(Just Accepted)」の論文として、“Open access at the national level: A comprehensive analysis of publications by Finnish researchers”が公開されています。

同論文は、フィンランド学会連盟(Federation of Finnish Learned Societies:TSV)のJanne Pölönen氏ら5人の共著論文です。著者らはOAのモニタリングの情報源として、Web of Science(WoS)やScopusといった商用の文献情報データベースではなく、大学・研究機関に由来するデータを用いて、国全体の研究成果物のOA出版点数や割合を推定可能であるか検討することを目的とした研究を実施しました。著者らはフィンランド14大学の最新研究情報システム(Current Research Information System:CRIS)に由来するデータが保存された出版情報サービスVIRTAを情報源として、2016年から2017年の期間に査読を経て発表された研究成果物48,177件の分析、及びWoS、Scopusをはじめとした主要データベース収録データとの比較を行っています。

論文では、分析・比較の結果として、VIRTAのデータは人文社会科学分野を中心に、WoSやScopusに収録されていない研究成果を多数収録していることや、分析対象の中でWoSに収録されたジャーナルに掲載された研究成果のOA率は33%、Scopusの場合は35%であったのに対して、WoS・Scopusに未収録のジャーナルに掲載された研究成果の場合は52%となり、大きな差異が見られたことなどを紹介しています。

著者らは、VIRTAのような大学・研究機関に由来する情報源は、分野を超えた研究成果の実態把握等において、商用の文献情報データベースよりも付加価値があることを指摘し、各国のこうしたデータを統合することで国境を越えて包括的に研究成果のOA状況をモニタリングするための基盤を構築可能である、と結論づけています。

Pölönen, J.; Laakso, M.; Guns, R.; Kulczycki, E.; Sivertsen, G. Open access at the national level: A comprehensive analysis of publications by Finnish researchers. Quantitative Science Studies. 2020, Advance Publication.
https://doi.org/10.1162/qss_a_00084

参考:
E1791 – 欧州におけるCRISと機関リポジトリの連携の現状
カレントアウェアネス-E No.302 2016.04.28
https://current.ndl.go.jp/e1791

応用科学大学コンソーシアム運営によるリポジトリサービス“Theseus”等のネットワークが展開するオープンな研究成果物公開プラットフォーム(フィンランド)(記事紹介)
Posted 2019年10月31日
https://current.ndl.go.jp/node/39404

フィンランド研究コミュニティの2020年から2025年までの国家戦略・事業計画の第1部として学術出版物のオープンアクセス(OA)に関するポリシーが公開される
Posted 2019年11月29日
https://current.ndl.go.jp/node/39631

2019年におけるフィンランドの大学等の研究成果物のオープンアクセス(OA)化状況:査読付学術論文の64.9%がOAで出版(記事紹介)
Posted 2020年5月27日
https://current.ndl.go.jp/node/41048