感染症拡大の状況下において図書館資料の衛生状態を保つ方法(記事紹介)

American Libraries誌の2020年3月27日付ブログ記事として、フリーランスの著作家であるLara Ewen氏による“How to Sanitize Collections in a Pandemic”が公開されています。

公開されたブログ記事は、新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中で、利用者・図書館職員双方の安全を保つための課題等について、専門家の様々な意見を紹介する内容です。ブログ記事ではフロリダ大学図書館の資料保存担当者であるデュラン(Fletcher Durant)氏のコメントを紹介しながら、図書館資料の衛生状態を保ち安全を確保するために、簡単・安全でコストのかからない方法は、時間をかけてウイルスを隔離することであることを指摘しています。デュラン氏は、最低24時間、できれば14日間ウイルスから隔離することが最良の消毒方法であり、全ての図書館が2020年3月17日付の米国図書館協会(ALA)の勧告に従って、閉鎖すべきであると提案しています。デュラン氏は、図書館は感染症拡大を媒介するリスクを孕んだ施設であり、そのような事態が発生した場合には利用者の健康への直接的な影響のみならず、図書館への社会的な信頼低下を招く可能性がある、とコメントしています。

一方、議会サービスを行う米国議会図書館(LC)をはじめ、完全な閉鎖が困難な図書館においては、消毒に関してより一層の措置が必要になることを、LCで資料保存を担当するナダル(Jacob Nadal)氏のコメントとともに指摘しています。ナダル氏は、タブレット・ドアノブ・返却ポスト・コンピュータなど硬い素材の表面は専門的な清掃が必要である、としています。また、バーチャルリアリティヘッドセットに感染リスクがあるため、図書館での利用停止を推奨しています。現場で働く図書館員に対しては、紙・ブッククロス・ポリエステル製のブックジャケットといった図書館で一般的に使用される素材からの感染リスクに応える研究は存在しないため、徹底した手洗いを呼びかけています。

その他、資料の消毒にあたっては、資料の損傷にも注意を払う必要であることが指摘されています。記事の中では、紫外線照射による殺菌は、殺菌に十分な紫外線強度が高いため資料損傷の恐れがあることなどが紹介されています。

How to Sanitize Collections in a Pandemic(American Libraries,2020/3/27)
https://americanlibrariesmagazine.org/blogs/the-scoop/how-to-sanitize-collections-covid-19/

参考:
米国図書館協会(ALA)の理事会、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をうけ、図書館の閉鎖を勧告
Posted 2020年3月18日
https://current.ndl.go.jp/node/40526

米国図書館協会(ALA)、新型コロナウイルス感染症に関する声明を発表
Posted 2020年3月16日
https://current.ndl.go.jp/node/40496

韓国図書館協会(KLA)、「新型コロナウィルス感染症拡散防止のための行事運営・防疫管理指針」「新型コロナウィルス感染予防のための集団施設・多人数利用施設の消毒案内」を会員館に通知
Posted 2020年2月17日
https://current.ndl.go.jp/node/40263