2019年9月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.80, no.6に、米・オハイオ州のボーリング・グリーン州立大学 (Bowling Green State University:BGSU)図書館で電子リソースを担当する大学図書館員であるAmy Fry氏による論文“Ebook Rate of Use in OhioLINK: A Ten-Year Study of Local and Consortial Use of Publisher Packages in Ohio”が掲載されています。
同論文は、90以上の機関が加盟する米・オハイオ州の図書館コンソーシアムOhioLINKがコンソーシアム購入したSpringer、Wiley、及びOxfordの電子書籍パッケージについて、COUNTERの利用統計等に基づき、刊行年が2007年から2017年までの(Wileyのみ2012年から2017年まで)タイトルの利用率を調査し、その結果を分析したものです。
OhioLINKはSpringer、Wiley、Oxfordの電子書籍について、最新タイトルパッケージのコンソーシアム共同購入をOxfordとは2006年から、Springerとは2007年から、Wileyとは2012年から進めており、論文著者の所属するBGSUの電子書籍コレクションの大半はこの共同購入に依拠しています。2018年5月現在、OhioLINKは共同購入した、Oxfordのタイトル12,915点、Wileyのタイトル7,755点、Springerのタイトル少なくとも7万8,828点を加盟機関に提供しており、これらを合わせた10万点近いタイトルが論文の調査対象となっています。
同論文では、
・コンソーシアム全体としては、刊行年が2007年から2014年までのタイトルはどのパッケージでも90%以上の利用率となり、2007年から2017年までに刊行された全タイトルの利用率がいずれも80%を超えるなど、高い利用率となっていること
・BGSUのみでの利用率については、コンソーシアム全体の利用率よりもはるかに低く、刊行年別の利用率はいずれの年も50%以下であり、全タイトルの利用率も16%から24%とコンソーシアム全体の利用率よりもはるかに低い数値であったこと
・調査タイトルの60%以上が刊行年から1年以内に最初の利用があり、刊行年が2012年以降のタイトルについては刊行年から3年後以降に利用されたタイトルは10%以下であるなど、刊行から1年以内の利用が大半を占めること
・BGSUについては、調査タイトルの利用率は紙書籍の利用率を下回ったこと
などが指摘されています。
調査結果を踏まえた結論として、
・コンソーシアム全体としては刊行後数年以内にほぼ100%のタイトルが利用されており、コンソーシアム共同購入型の電子書籍契約は利用の観点からは最良の投資効果をもたらしていることが示唆されること
・電子書籍について、利用者は刊行年の新しいタイトルを素早く利用するという行動を見せているため、刊行年の古いバックファイルタイトルはそれほど大きな投資効果をもたらさない可能性があること
・BGSUでは紙書籍の利用率が高い傾向を示したが、電子書籍の受入は今後も着実に拡大するため、利用者のニーズを最大限満たすコレクションとなるように資料購入費を管理するには、継続して利用者の行動や傾向を追跡する必要があること
などを挙げています。
Fry, Amy. Ebook Rate of Use in OhioLINK: A Ten-Year Study of Local and Consortial Use of Publisher Packages in Ohio. College & Research Libraries, 80(6), 2019, p. 827-841.
https://doi.org/10.5860/crl.80.6.827
参考:
E1605 – 大学図書館のコレクション構築とデジタル・コンテンツ<報告>
カレントアウェアネス-E No.266 2014.09.11
http://current.ndl.go.jp/e1605
米ニューメキシコ州の大学図書館、EBSCOのデータベースを共同契約
Posted 2013年10月25日
http://current.ndl.go.jp/node/24678
香港の8大学図書館による電子書籍コンソーシアム
Posted 2008年6月23日
http://current.ndl.go.jp/node/8090