2019年9月5日、Elsevier社は、科学論文の引用に関わる不正行為の検出と防止のためオランダ・ヴァーへニンゲン大学(Wageningen University & Research:WUR)と提携したことを発表しました。
科学論文の引用において、特定の研究者や雑誌への引用を増やすことを目的として、関連性のない文献の引用を行うという不正行為が発生することがあります。Elsevier社はWURとともにこうした不正行為の検出・防止のための分析的な手法を開発しています。分析の対象には査読者も含まれており、Elsevier社はプレスリリースの中で、同社の文献データベースScopusに基づいて実施した分析の結果、必ずしも全てが不適切とは言い切れないものの、0.8%の査読において不正の疑われる引用の提案が行われていたことを報告しています。
同社は論文公開前のできるだけ早期にこうした不正行為を防ぐことを次の段階として検討しています。査読者に対しては、投稿された論文の査読前に引用は全て論文と関連している必要があり操作的な引用は許容できないことを再認識させることを挙げています。また、WUR推奨の手法を用いて、査読過程で疑わしい内容のレビューを自動的に検出してフラグ立てする調査も同時に行われている、としています。
Elsevier works with Wageningen University to detect and prevent citation manipulation(Elsevier,2019/9/5)
https://www.elsevier.com/about/press-releases/science-and-technology/elsevier-works-with-wageningen-university-to-detect-and-prevent-citation-manipulation
Elsevier werkt samen met Wageningen University om citaatmanipulatie te detecteren en voorkomen(Wageningen University & Research,2019/9/5)
https://www.wur.nl/nl/nieuws/Elsevier-werkt-samen-met-Wageningen-University-om-citaatmanipulatie-te-detecteren-en-voorkomen.htm
参考:
E2018 – 「学術出版における透明性の原則と優良事例」第3版が公開
カレントアウェアネス-E No.345 2018.04.19
http://current.ndl.go.jp/e2018
CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤 翔
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1829
CA1582 – ES細胞論文捏造事件に見る電子ジャーナルの効用と課題 / 村上浩介
カレントアウェアネス No.287 2006.03.20
http://current.ndl.go.jp/ca1582