E2018 – 「学術出版における透明性の原則と優良事例」第3版が公開

カレントアウェアネス-E

No.345 2018.04.19

 

 E2018

「学術出版における透明性の原則と優良事例」第3版が公開

 

    2018年1月,オープンアクセス学術出版協会(OASPA),Directory of Open Access Journals(DOAJ),出版倫理委員会(COPE),世界医学雑誌編集者協会(WAME)の出版関連4団体が「学術出版における透明性の原則と優良事例」(Principles of Transparency and Best Practice in Scholarly Publishing)の第3版を公開した。初版は2013年12月に公開されている。同原則は16の項目からなり,出版者が4団体に加盟する際の評価基準と位置付けられている。また,加盟後に原則を満たしていないことが判明した場合,4団体は当該出版者と連携してその事項に対処することとなっている。もし,当該出版者が対応不可能,あるいは,対応することを望まない場合,会員資格の停止や取り消しといった措置が取られる。本稿では,今回発表された第3版の概要を紹介するとともに, 2015年6月に公開された第2版との主な違いについてもあわせて触れておく。なお,第3版と第2版には項番にも大きな変更があることから,第3版の項目名の後に,丸括弧と算用数字を記載し,第2版における項番を示した。

    「1. ウェブサイト」(8)は,学術誌のウェブサイトに掲載すべき情報に関する規定で,高い倫理的・専門的基準を保証する取組が行われていることを示すとともに,著者・読者に誤解を与えない情報を掲載することを求めている。具体的な記載内容として,学術誌の目的や専門領域,想定する読者層,投稿資格,ISSN(紙版・電子版とも)等をあげている。「2. 雑誌名」(9)は,学術誌のタイトルについての規定で,著者や読者が他の学術誌と混同しないよう命名することを要請している。「3. 査読プロセス」(1)は,査読に関する情報をウェブサイトに明記することを求める規定で,査読に関するポリシー,掲載論文の査読の有無を明示することとしている。第3版では,ウェブサイトでの査読方法の公表や,ウェブサイトで原稿の受理や迅速な査読処理を保証してはいけないことが追加されている。

    「4. 所有者・運営者」(7)では,学術誌の所有者・運営者に関する情報をウェブサイトに掲載することとしており,出版者に対しても,所有者・運営者を誤解させるような組織名・雑誌名を付けないよう求めている。「5. 運営組織」(2)は,学術誌の運営組織に関する規定で,当該領域の著名な専門家からなる編集委員会等の運営組織を持つとともに,ウェブサイトに編集委員会所属の委員の氏名の掲載を,「6. 編集チーム/連絡先情報」(3)では,編集者の氏名と所属及び編集事務局の連絡先情報の掲載を求めている。「7. 著作権とライセンス」(5)では,第3版から項目名に「ライセンス」が加わっており,著作権に関するポリシーやライセンスに関する情報は投稿規定に記載するとともに,全論文において著作権者を明示すべきとしている。また,ライセンスに関する情報はHTML版・PDF版含めて各版の全記事に記載することとされている。第3版から,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)への対応や,機関リポジトリ等に掲載可能な版の明示が加えられている。「8. 掲載料」(4)では,査読や出版に必要な経費について,著者が原稿の投稿前に容易に見つけることができるような場所に掲載すべきとし,第3版からは,費用が不要な場合もその旨を示すことが付加されている。

    「9. 研究不正を特定し対処するプロセス」(6)は,剽窃,引用の操作,データの改竄,偽造といった研究不正行為が判明した際に,出版者・編集者が該当論文を特定し,公開を取り止めるといった妥当な措置を採ることを求める規定である。研究不正行為が指摘された場合,出版者・編集者はCOPEのガイドライン,もしくは同等のものに従う必要があるとしている。第2版では「利益相反」という項目名であった「10. 出版倫理」(10)では,学術誌が,著者や貢献者/苦情・要請への対処/利益相反/データの共有や再現性/研究倫理の監視/知的財産/論文に関する出版後の議論や訂正に対する出版者の選択肢,といった出版倫理に関するポリシーを策定し,ウェブサイトに掲載することを求めている。

    「11. 刊行計画」(14)では,学術誌の刊行頻度の明示を,「12. アクセス」(11)では,学術誌や掲載論文の閲覧方法・購読料に関する情報の明記を求めている。「13. アーカイブ」(15)は,電子版の公開停止に備えての,バックアップや保存に関する計画の明示を求めるものである。「14. 収入源」(12)では,ビジネスモデルや収入源(掲載料,購読料,広告費,転載料,組織・団体からの支援)のウェブサイトへの明示を求める規定で,第3版からは,掲載料や著作権放棄が論文の採否に影響しないことを求める内容が追加されている。「15. 広告」(13)では,広告が掲載される学術誌の場合,広告の種類,広告を採用する主体,オンライン版での広告の表示方法といった広告に関するポリシーを明示することを求めるとともに,第3版からは,広告が編集方針に影響を与えてはいけないことや,広告と論文を明確に分けることが付け加わっている。「16. ダイレクトマーケティング」(16)は,原稿を依頼する際に,その行動が適切かつ謙虚であることを求めるもので,第3版からは,著者に提示される出版者や学術誌に関する情報は正確で,誤解を招くものではいけない点が追加されている。

関西館図書館協力課・武田和也

Ref:
https://oaspa.org/principles-of-transparency-and-best-practice-in-scholarly-publishing-3/
https://blog.doaj.org/2018/01/15/principles-of-transparency-and-best-practice-in-scholarly-publishing-version-3/
https://publicationethics.org/resources/guidelines-new/principles-transparency-and-best-practice-scholarly-publishing
http://www.wame.org/about/principles-of-transparency-and-best-practice
https://publicationethics.org/resources/guidelines
https://oaspa.org/principles-of-transparency-and-best-practice-in-scholarly-publishing-2/
https://oaspa.org/principles-of-transparency-and-best-practice-in-scholarly-publishing/