カレントアウェアネス-E
No.344 2018.03.22
E2008
北見市立中央図書館でのプラモデル製作講座について
●講座概要
北見市立中央図書館(北海道)は,2018年1月27日プラモデル製作講座「本のあるくらし講座・ガンプラをつくってみよう」を開催した。対象は初心者の大人で,小学3年生から受講可能,参加費1,200円,定員10名とした。
●来館の動機付けとして
「本のあるくらし講座」は,図書館未利用者に対する来館のきっかけづくりを目指した大人向けのワークショップとして,新館オープン直後の2018年1月から月1回程度実施している。「玄人志向の初心者向け講座」をコンセプトに,毎回,年齢・性別などの特定のターゲット層を想定しながらテーマを変えて開催し,本の紹介も行う。今回のプラモデル製作講座はガンダム世代とされる40代から50代の男性の参加を狙ったものであった。テーマは,趣味として継続したくなるような魅力と奥深さを基準に決定している。2017年度の開催テーマには「大人のぬりえ」「消しゴムはんこ」「似顔絵」「動物のぽんぽん(動物の顔モチーフの毛糸玉)」「天気管(天候予測器)製作」などを選んだ。
●講座準備と当日の様子
定員10名を超える申込があり,13名まで受け付けた。当日は3名が欠席,10名が参加した。うち図書館未利用者は6名だった。9割が男性で,9歳から70歳まで幅広い世代からの参加があった。また,プラモデルの製作機種は申込時に「ガンダム」「ザク」「シャア専用ザク」の3つから選択可能としたところ,申込のあった機種はガンダム7体,シャア専用ザク4体,ザク2体であった。
講師は,毎回テーマを決めた後に市が発行する『団体・指導者ガイドブック』や情報紙を参考に適任者を探しており,今回は市内の老舗模型店員に直接伺い,お願いした。
当日参加者は,講師の説明に耳を傾けながら黙々と作業を進めていた。意外にも館内にある据え置き型の拡大読書レンズがモールド(部品の彫刻やスジ彫り)の処理など細かな作業に有用で,中高年男性に好評であった。ガラス張りの会場には見学者も多く訪れた。
●開催後について
参加者アンケートによると,全員が「楽しかった」「また参加したい」と回答した。また,図書館を利用したことが無かった参加者からは,この講座をきっかけに図書館を身近に感じるようになり「初めて本を借りた」「イベント情報をチェックするようになった」との回答もあった。プラモデル講座は題材を変えて2018年度も開催を検討している。
●住民全ての図書館であるために
当市において,3年以内に図書館貸出利用のあった住民は約3割で,7割が未利用者である。2016年に行ったアンケートによると,利用しない理由には「敷居が高い」など,図書館を身近な存在と感じていない回答が多かった。当館では未利用者に図書館の認知を広め,その活用を働きかけることは重要な図書館施策の一つであると考えている。本講座も含め,年間約60回開催しているすべてのイベント企画は利用者の新規開拓,来館のきっかけづくりを視野に入れて行っている。
当初最も難しかったのは集客だが,開催後アンケートをイベント種ごと,年代性別ごとに分析し,有効な情報伝達ツールを特定して駆使していくことで安定した集客を確保している。特に若年層へのSNSでの伝播力は想像以上で,チラシを1枚も配布しないうちに200枚の入場チケットが売り切れることもあった。
●今後のイベントについて
これまで最も集客や問合わせがあったイベントは声優朗読会であった。また,今回のプラモデル製作講座,3月21日開催の地元出身タレントによるものまね読み聞かせにも多くの問合わせがあり,何かしらのエンタテインメント性やサブカルチャー色が付加されたイベントが来館に結びつくようである。
今後も定番イベントに加え,新たな利用者の呼び水となるようなイベントを開催し,全ての住民にとって第3の場所となる図書館を目指したい。
北見市立中央図書館・川畑恵美
Ref:
https://twitter.com/kitamilib/status/945978975704162305
https://www.city.kitami.lg.jp/docs/2017122000069/files/15-16.pdf