2019年8月19日、フィンランドの大学・研究機関・公共図書館からなるコンソーシアム“FinELib”は、主要学術出版社とのオープンアクセス(OA)出版契約交渉の状況を報告した記事“Negotiations 2019 – aiming for open publishing”を投稿しました。
FinELibは、学術論文のOA化・購読料支払の不要化を目指す世界的な潮流を汲んで、コンソーシアム参加機関及び参加機関所属の研究者への研究論文を購読・利用する権利と追加料金を支払うことなく容易に自身の論文をOA化する権利の提供を目的として、主要学術出版社とOA出版契約締結のための交渉に取り組んでいます。
記事投稿時点のOA出版契約の交渉状況として次のことが示されています。
・Wiley社とは現在約1,250誌の購読契約を締結しているがOA出版に関する利益を受けられる内容とはなっていない。同社とは契約期限を2019年12月末に延長して、2020年以降のOA出版契約への転換を目指す交渉を継続している。
・Sage社との現在の単年契約では約950誌が購読可能でこれらの雑誌への投稿時には論文投稿料(APC)が大幅に割引される。更新後の2020年契約では研究者が追加料金を全く支払わずにOA出版が可能な内容となるように交渉している。
・英国王立化学会(RSC)とは2019年に40誌に関する“Read & Publish”契約を締結し2019年7月までに28本の論文がOAで出版されている。2019年12月末で期限が切れるが、契約更新を交渉中である。
・Elsevier社のCell Press系のジャーナル、Springer Nature社のNature系のジャーナル、米国科学振興協会(AAAS)のScience系のジャーナル、米国電気電子学会(IEEE)の電子ジャーナルパッケージ“IEEE/IET Electronic Library”については、OA出版へ転換する契約モデルの提案がなく、これらの出版社との交渉は特に難航している。
・Taylor & Francis社との契約は2018年末に失効している。同社から新たな提案はなく現在契約交渉は進行していない。
Negotiations 2019 – aiming for open publishing(FinELib,2019/8/19)
http://finelib.fi/negotiations-2019-aiming-for-open-publishing/
関連:
Negotiations(FinELib)
http://finelib.fi/negotiations/negotiations/
Agreement between RSC and FinELib promotes open access in chemistry(FinELib,2019/2
/25)
http://finelib.fi/agreement-between-royal-society-of-chemistry-and-finelib-promotes-open-access-in-chemistry/
Additional time for negotiations with Wiley(FinELib,2019/4/5)
http://finelib.fi/additional-time-for-negotiations-with-wiley/
参考:
フィンランドのコンソーシアム“FinELib”、Taylor & Francis社との契約交渉が合意に至らず
Posted 2019年2月6日
http://current.ndl.go.jp/node/37535
フィンランドのコンソーシアム“FinELib”とElsevier社が契約締結で合意
Posted 2018年1月18日
http://current.ndl.go.jp/node/35333
フィンランドの研究者グループ、Elsevier社の雑誌の編集・査読へのボイコット運動を実施中
Posted 2017年7月5日
http://current.ndl.go.jp/node/34308
フィンランドの大学・研究機関における学術雑誌購読費用の詳細が公開される 出版者ごとの詳細までの公開は世界初?
Posted 2016年6月14日
http://current.ndl.go.jp/node/31801