Wikipediaからの引用は学術論文や図書のインパクトの証になるか(文献紹介)

Journal of the Association for Information Science and Technology誌に掲載予定の論文、” Are wikipedia citations important evidence of the impact of scholarly articles and books?”の早期公開版が2016年6月13日付けで公開されています(本文は有料)。著者は英国・ウルヴァーハンプトン大学のKayvan Kousha氏とMike Thelwall氏です。

この論文では2005~2012年に出版され、論文データベースScopusに収録されている、英語で書かれた論文302,328本と、モノグラフ18,735冊に対する、Wikipediaの記事からの引用の状況を調査しています。調査の結果、学術論文については、Wikipediaの記事から1回以上引用されているものは全体の5%にとどまり、研究評価に使うには少なすぎるとされています。一方、モノグラフについては全体の3分の1が1回以上、引用されており、特に人文学分野において引用が多かったとのことです。

この結果を受け、著者らはモノグラフについて言えば、Wikipediaからの引用がインパクトに関する証拠になりうるとしています。ただし、Wikipediaからの引用は記事の書き換えによって容易に操作できるため、関係者が関心を抱くような研究評価に使うことは推奨できないともしています。

Kousha, K. and Thelwall, M. (2016), Are wikipedia citations important evidence of the impact of scholarly articles and books?. Journal of the Association for Information Science and Technology. doi: 10.1002/asi.23694
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/asi.23694/abstract

参考:
Wikipediaは論文のどの箇所で、なぜ引用されるのか?(文献紹介)
Posted 2014年7月8日
http://current.ndl.go.jp/node/26524

誰でも書き換えられる文献への参照:健康科学分野の査読論文におけるWikipediaの引用状況調査(文献紹介)
Posted 2014年3月26日
http://current.ndl.go.jp/node/25762