ハイブリッドなオープンアクセス環境における「出版物にかかるトータルコスト」:英国23機関の調査(文献紹介)

Journal of the Association for Information Science and Technology(JASIST)誌に掲載予定の論文、”The “total cost of publication” in a hybrid open-access environment: Institutional approaches to funding journal article-processing charges in combination with subscriptions”の早期公開版が、2015年2月13日付けで公開されています。著者は英シェフィールド大学のStephen Pinfield氏らです。なお、JASIST誌は有料ですが、本論文はオープンアクセス(OA)で公開されています。

この論文では論文処理費用(APC)に関する助成を受け、OA雑誌等で公開される論文が増えてきた状況を受け、雑誌の購読にかかる費用とAPC費用の総体で構成される、ある機関にとっての「出版物にかかるトータルコスト」(TCP)のモデルを構築しようというものです。その目的達成のために、英国23機関を対象に、2007~2014年のAPCの支払い状況や雑誌購読にかかる費用等を尋ねています。

調査の結果、APCに対する対象機関の支払いは2012年以降顕著に増加しており、これは英国のOA方針が影響していると指摘されています。また、APCの大部分は購読型の雑誌も刊行している、大手商業出版者に対して支払われていました。2013年には調査対象機関においてAPCはTCPのかなりの部分を占めるに至っており、平均してTCP全体の10%をAPCが占めるようになっていたとのことです。

Pinfield, S., Salter, J. and Bath, P. A. (2015), The “total cost of publication” in a hybrid open‐access environment: Institutional approaches to funding journal article‐processing charges in combination with subscriptions. J Assn Inf Sci Tec. doi:10.1002/asi.23446
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/asi.23446/abstract

参考:
E1579 -日本におけるOAジャーナル投稿とAPC支払いをめぐる調査 カレントアウェアネス-E No.262 2014.07.10
http://current.ndl.go.jp/e1579

E1606 – 大学/研究機関はOA費用とどう向き合うべきか<報告> カレントアウェアネス-E No.266 2014.09.11
http://current.ndl.go.jp/e1606

オープンアクセス雑誌におけるAPCの導入状況
Posted 2014年6月17日
http://current.ndl.go.jp/node/26366

DOAJ収録誌のAPC調査 2014年5月版が公開される
Posted 2014年10月28日
http://current.ndl.go.jp/node/27318