米国大学・研究図書館協会(ACRL)のブログACRLogに、”Tales of the Undead…Learning Theories: The Learning Pyramid”と題した記事が掲載されています。著者は米ラドフォード大学情報リテラシー・アウトリーチ部門長のCandice Benjes-Small氏と、インストラクション・ライブラリアンのAlyssa Archer氏です。
この記事では学習定着率(学習内容を学習者がどの程度覚えているか)について、「本等を読んで知ったことは2週間後には10%しか覚えておらず、人から聞いたことでは20%、画像等を見て知ったことは30%…と続き、実際に自分で体験したことは2週間後でも90%覚えている」等とする、いわゆる「学習のピラミッド」モデルが、なんの根拠も持たないことを解説しています。記事によれば、このピラミッドは1946年に出版された図書の中で初めて用いられたものですが、元々はあくまで理論的なモデルであって、具体的な数字と結び付けられたものではなかったとのことです。それがその後、著者の意図に反して実践的なモデルと捉えられるようになり、具体的な数字も後から付け加えられたもので、実際には根拠となる研究は行われてはいませんでした。米NLTが自分たちの研究成果によるものと主張したものの、その証拠は「失くした」等としており信用のおけるものではなく、そもそも実際の研究に基づいた値なら「10%、20%、30%…」等というきれいな10%刻みになるわけがない等と指摘されています。
同記事ではこの「学習のピラミッド」モデルに根拠がないことは広く知られているにも関わらず、未だに教育に関するプレゼンテーションや文献等で引用される「ゾンビ」であるとした上で、なぜ未だに人を惹きつけるのかについても論じています。また、このピラミッドモデルがでたらめであることを知っている教員も増えてきているため、プレゼンテーションの中で「学習のピラミッド」モデルを出すことは発表者自身の信用を損なう、とも指摘しています。逆に教員がこのピラミッドモデルをポジティブに引用している場面に遭遇した場合には、注意深く対応することも同記事では薦めています。
Tales of the Undead…Learning Theories: The Learning Pyramid(ACRLog、2014/1/13付け)
http://acrlog.org/2014/01/13/tales-of-the-undead-learning-theories-the-learning-pyramid/