科学技術・学術政策研究所(NISTEP)、「粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」を公開:ハゲタカジャーナルやハゲタカ学会に関する提言の翻訳

2023年6月13日、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、国際学術団体であるインターアカデミーパートナーシップ(InterAcademy Partnership:IAP)が発行した、粗悪な学術誌や学術集会(いわゆるハゲタカジャーナルやハゲタカ学会)に関する提言を和訳し、「粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」として公開したと発表しました。

発表によると、今回翻訳されたのは、粗悪な学術誌や学術集会の増加を抑制する実践的かつ効果的な介入策を特定するべく立ち上げられた、IAPのプロジェクト「粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」の2年間の研究成果を踏まえた提言“Combatting Predatory Academic Journals and Conferences” の概要にあたるものとしています。

具体的な提言の内容としては、以下を含む8つの項目が挙げられています。

・略奪的な行為(predatory practices)に対する認識や理解は一般的に不十分である。大学院生から経験豊富な研究者、指導教員、メンター、図書館司書に至るまで、研究に関わるあらゆるレベルの人材が、略奪的な行為に対する意識を高めるとともに、リスクや脆弱性を軽減し、こうした行為を利用・助長したくなる誘惑に打ち勝てるよう、しっかりとしたトレーニングを実施することが早急に求められる。

・粗悪な学術誌や学術集会は増加傾向にあり、研究や研究の公正さに対する社会的信用を損ない、研究資源の著しい損失を生み出す危険性がある。主要な国際的組織や国際的な科学ネットワークは、世界的な非営利団体や既存の関係者から成るコンソーシアムによって学術出版や学術集会に認定を与えることが必要かどうか議論するなど、この問題に取り組むための協調的かつ部門横断的な活動を新たに開始・主導すべきである。

・現代の研究評価制度が、略奪的な行為を助長する主要な要因の一つになっている。大学や研究助成機関、専門家集団、代表機関といった研究ガバナンスに関わる機関には、研究評価制度を、より公平で影響力があり、かつ目的に適ったものへと改革する責任がある。一部の学術機関や研究助成機関の取組により、責任ある研究評価の機運がすでに高まっているが、このような動向を改革の足がかりにすべきである。

「粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」を公開しました(6/13)(NISTEP, 2023/6/13)
https://www.nistep.go.jp/archives/55063

粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために(NISTEP)
https://doi.org/10.15108/IAP_CPAJC2023JP
※提言[PDF: 27ページ]です。

Combatting Predatory Academic Journals and Conferences(IAP)
https://www.interacademies.org/project/predatorypublishing

参考:
インターアカデミーパートナーシップ(IAP)、ハゲタカジャーナル・学会に関する調査報告書を公開 [2022年03月15日]
https://current.ndl.go.jp/car/45787

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)、「プレダトリージャーナル判定リストの実態調査」を公開 [2023年03月23日]
https://current.ndl.go.jp/car/175058

E2542 – IAPによるハゲタカジャーナル・学会についての調査報告書
カレントアウェアネス-E No.444 2022.09.29
https://current.ndl.go.jp/e2542

CA1960 – ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から / 千葉 浩之
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1960