図書館情報学学位プログラムによって将来の図書館員は実社会の課題に十分に備えることができているのか?(記事紹介)

米・Library Journal誌(オンライン)に、2023年6月1日付けで、記事“Do LIS Programs Prepare Future Librarians for Real-World Challenges?”が紹介されています。

この記事では、図書館からの黒人・先住民・有色人種(BIPOC)やLGBTQIA+関連図書の排除を求める動きを筆頭に、図書館員に対する圧力が増す中で、図書館情報学(LIS)学位プログラムによって卒業生たちは実社会の課題に十分に備えることができているのかについて、米国のLIS学位プログラムを提供する大学の事例とともに論じています。以下のような内容が述べられています。

・145の図書館が参加した2022年の調査では、調査に回答した図書館員の50%がプログラム提供校で検閲等に対処するための研修を受けており、70%が仕事上で何らかの研修を受けたと答えたが、そのほとんどは単発のセッションだった。また、研修の多くは実践的な戦略よりも、図書館員としての理想や知的自由の概念に重きを置いていた。

・米国図書館協会(ALA)のドラビンスキ(Emily Drabinski)氏によると、LIS学位プログラムに普遍的に求められることは、公共施設である図書館のおかれた社会的構造への理解を学生に促すことであり、自分たちの図書館に必要な資金や支援を獲得するために、いかに組織として自治体で行動を起こすべきかという問いへの答えを持てるようにすることである。

・いくつかの大学は実践重視のカリキュラムに転換しつつある。ワシントン大学情報大学院では、多様性やインクルージョンについて重点的に扱うとともに、実務家をゲストスピーカーとして招いたり、インターンシップやフィールドワークを積極的に行っている。また、イリノイ大学Urbana-Champaign校も図書館での実習やインターンシップに重きを置くとともに、現在の政治的状況や社会正義の問題に対応した新講座を開講している。

Do LIS Programs Prepare Future Librarians for Real-World Challenges? (Library Journal, 2023/6/1)
https://www.libraryjournal.com/story/do-lis-programs-prepare-future-librarians-for-real-world-challenges

参考:
国際図書館連盟(IFLA)、「図書館情報学専門職教育プログラムのためのガイドライン」を公表 [2022年07月29日]
https://current.ndl.go.jp/car/46570

Library Journal誌、2019年の米国の図書館情報学大学院卒業生の就職・給与状況調査の結果を掲載 [2020年10月23日]
https://current.ndl.go.jp/car/42338