2023年5月10日付で、英国下院の科学・革新・技術特別委員会（Commons Science, Innovation and Technology Select Committee）による科学研究の再現性に関する報告書“Reproducibility and Research Integrity”が公開されました。
報告書は、同国の政府が研究と革新に重点を置き、研究開発への公的投資を過去最大規模で増加させているものの、実験やデータ分析の結果を再現することが困難なために一部の科学研究の完全性が疑問視されており、「再現性の危機」の懸念が生じていると指摘しています。そして、英国における問題の規模、どの分野が最も影響を受けているか、特に人工知能（AI）やその他のますます複雑化するソフトウェアの導入が研究の再現性に及ぼす影響について、包括的かつ厳格に評価する必要性を強調しています。
報告書の中では、研究の再現性の問題のみに焦点を当てた小委員会の設置等が勧告されています。また、資金提供を受けた研究にオープンアクセスを要求するという英国研究・イノベーション機構（UKRI） の方針を歓迎するとしつつ、研究助成金受領者に対して、その研究に関する出版物と並行してデータとコードを共有することを義務付けることや、研究者がそのキャリアの初期において再現性に関する研修を受けること等を推奨しています。
MPs call for research sector reforms to address concerns with reproducibility of science（UK Parliament, 2023/5/10）
https://committees.parliament.uk/committee/135/science-innovation-and-technology-committee/news/195158/mps-call-for-research-sector-reforms-to-address-concerns-with-reproducibility-of-science/
Reproducibility and Research Integrity（UK Parliament）
https://publications.parliament.uk/pa/cm5803/cmselect/cmsctech/101/report.html
Reproducibility and Research Integrity – Report Summary（UK Parliament）
https://publications.parliament.uk/pa/cm5803/cmselect/cmsctech/101/summary.html
※報告書の概要です。
関連：
Research integrity（UK Parliament, 2018/07/11）
https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmsctech/350/35002.htm
参考：
E2448 – 英・UKRIの新オープンアクセス（OA）ポリシー公開について
カレントアウェアネス-E No.425 2021.11.25
https://current.ndl.go.jp/e2448
CA2025 – 再現性・複製可能性と研究図書館 / 西岡千文
カレントアウェアネス No.353 2022年09月20日
https://current.ndl.go.jp/ca2025
