カレントアウェアネス
No.185 1995.01.20
CA982
アメリカ公共図書館におけるInternet事情
今や世界二千万人が利用しているといわれているインターネット。我が国でも今までは一部の機関でのみ利用されていたが,10月からは,JICSTがこのインターネットを通じて日本情報を発信していく計画があり,ますます我々に身近なものになりつつある。そのインターネットが果たしてアメリカの公共図書館でどの程度まで普及しているのか,以下に紹介するのは1495の図書館を対象にした調査報告である。
クリントン大統領と米国議会は,インターネットを最終的には全世界に広げ,地球的ネットワークをめざすと決定した。そのためには,まず米国内の公共図書館がNII(全国情報インフラストラクチャ)構想に積極的に参加することが必須条件であるとしている。
しかし,現状は,公共図書館の役割の明確化,行政の責任範囲などはっきりしたビジョンがないため,なかなか思うように進んでいない。
マックルア(Charles R. McClure)らは,「公共図書館についての国の計画および政策は,司書のほかにも行政マン,教育者,一般大衆など様々な人々に支えられて成り立っていくだろう,そのためにも計画の指針を明確化すべきだ」と唱えている。
現在,アメリカの公共図書館の21%しかインターネットに接続しておらず,大規模図書館(利用者100万人以上)ほど接続率,接続回線数は多い。また,地域別にみると西部地域が最も高く,南部,中西部では普及が遅れている。このような傾向は,接続方法,利用額,利用されているプロトコルの種類についても同様である。
まず,利用状況をみると圧倒的にE-mailの利用率が高く(83%),MosaicとGopherがそれに続いている(69%)。これらは,それぞれイリノイ大学,ミネソタ大学で開発され,コンピュータ経験の少ない人でも容易に操作できるというメリットにより公共図書館でも利用されているようだ。このインターネットを通して公共図書館で使われているサービスは,文献収集(42%),電子索引(42%),レファレンス回答(41%),図書館間貸出(30%)が主なもので,従来の図書館業務の改革を痛感せざるをえない。
また,このインターネットを利用者にオープンにしている公共図書館は,13%のみであり,図書館の規模の大小にかかわらずあまり差はみられない。今後の端末機増設計画により,この点は解決されるであろう。
今後,公共図書館へのインターネット導入に際しては,図書館スタッフへの専門知識・技術の充実と,機器の導入,利用料などに伴う予算の充実が益々求められている。
なお,公共図書館へのインターネット導入に際して,最後にそれぞれの立場の担当者に的確な勧告が述べられている。
まず,政策担当者は,ネットワーク社会を推進するためにも公共図書館を全面的にサポートすべきである。その一環として,公共図書館を政府の情報・サービス事業の伝達手段として利用すべきである。
図書館司書は,ソフト面のみならずハード面についてもインターネットに関するあらゆる知識の拡大に努め,地域コミュニティをサポートする役目を負うこと。他機関との交流も,革新的ネットワーク情報を提供する上で不可欠であることを認識すべきである。
全国図書館情報学委員会(NCLIS)に対して,追加調査を進展させるためにもフォローアップ会議を開催することが肝要である。
「図書館建設・サービス法(LSCA)」に関しては,公共図書館を強力にサポートするためにも法改正し,政策の問題点を見直す必要がある。
このように政府の強力なバックアップを受け,社会的にもかなり注目されているアメリカにおいて,問題点を抱えながらもインターネットの導入が着々と進行している様子に比べて,我が国の図書館界にネットワーク網が普及するにはまだかなりの時間がかかることだろう。が,近い将来確実にネットワーク社会が到来することが予想され,図書館員は,あらゆる方向にアンテナを張り巡らすことが必要であろう。そして,この報告からも「今,図書館員が何をなすべきか」を学べるはずである。
福島三喜子(ふくしまみきこ)
Ref. McClure, Charles R. et al. Public Libaries and the Internet. Inf Retr & Libr Autom 30 (2) 1-4, 1994