CA965 – 全米目録協調計画(NCCP)のその後 / 飯倉忍

カレントアウェアネス
No.182 1994.10.20


CA965

全米目録協調計画(NCCP)のその後

増え続ける出版物,それをMARCで提供するまでのタイム・ラグの拡大という問題に国立図書館は頭の痛い(?)思いをしてきた。他方,幾つかの書誌ユーティリティが,速報性を一つの武器に勢力を拡大してきた。しかし,その結果,それぞれの書誌ユーティリティが独自にネットワークを形成したため,複数の書誌ユーティリティ間での目録データの検索が行えず,またデータの互換性がなくなり,品質についても必ずしも保証されなくなってきた。そこで,巻き返しという訳でもなかろうが,全国レベルでの目録の作成と品質の保証をしつつ,タイム・ラグを短縮し,併せて目録対象資料範囲の拡大をねらって,米国議会図書館(LC)が8つの協力館と共に全米目録協調計画(NCCP)を本格的に始めたのは,1988年のことであった(CA523参照)。

最近このNCCPの評価について,LCと協力館のそれぞれの立場からの報告が出されている。

NCCPの評価は,LC側と協力館側との間で異なり,LC側が概ね肯定的な評価であるのに対して,協力館側にはかなり厳しい評価がある。LCと協力館とで評価に食い違いが出てくるのは,結果としてLC側の負担が軽減されたのに対して,協力館側は,LCの作業レベルに合わせるための負担が増加し,協力に見合うだけのメリットが得られていないからではないかと思われる。

タイム・ラグも短縮されるようにはなってきたが,各協力館のカバーする領域が似たり寄ったりであるため,目録対象資料の範囲の拡大までには至っていない。LCは一般資料に対する目録作成の負担が減った分,その部分を補うべきなのであるが,必ずしもそういう方向には進んでいない。もちろん,だから失敗したというわけではない。当初2年程度の計画であったが,方針や業務内容等の修正や見直しを行いつつ,現在なお継続中である。

協力館が作成した目録は,LCの目録,即ちUS/MARCとして外部へ提供される。したがって,目録規則の運用や主題目録法は全てLCの指示に従うことになる。ところが,規則解釈や主題分析は協力館が考えていた以上に複雑であり,LCと同程度の目録作成が困難,ということがわかってきた。協力館の目録担当者はあらかじめLCの研修を受けた後,作業にあたることになるのだが,担当者にとってこの研修自体は勉強にはなったものの,やはりLCとの差が極めて大きいことが判明し,協力館は目録作業の単純化をLCに求めた。

特に大きなギャップが指摘されたのは件名の扱いで,これはl991年5月に会合がもたれ,件名細目の部分が幾分簡素化されることになった。

また,経済的にも大きな問題があった。LCと協力館との間のデータのやりとりは,当初,商業回線を用いていたため,費用が予想以上に増大し,当初図書館振興財団から出ていた補助金が途中で打ち切られてしまった。ただし,この部分については,インターネットを使用することで改善が図られるものと考えられている。

一定の品質を保証しながら,多数の図書館が共同して一つの目録を作成するためには,LCはリーダーシップをとると同時に,協力館の意見も十分にくみとって,計画に反映させるようにすることも重要なのである。

飯倉 忍(いいくらしのぶ)

Ref: Wiggins, Beacher. The National Coordinated Cataloging Program. Cat Classif Q 17 (3-4) 163-188, l993
Rosenblatt, Susan. The National Coordinated Cataloging Program from the participent's perspective. Cat Classif Q 17 (3-4) 189-199, 1993