CA934 – ロサンゼルス公共図書館中央館の改修なる / 清水悦子

カレントアウェアネス
No.176 1994.04.20


CA934

ロサンゼルス公共図書館中央館の改修なる

暴動や自然災害に打ちのめされてきたロサンゼルス市で,多くの人が「希望のしるし」と認める出来事があった。1993年10月3日,ロサンゼルス公共図書館中央館(LAPLC)が修復・拡張されて再オープンしたのである。古かった施設を新しく広くし,かつ1986年の放火によるダメージから立直るのに要した費用は2億1390万ドル。その調達にはロサンゼルス図書館財団や図書館コミッショナーズ理事会(会長は映画作家――話題作“Dave”などを書いた――ゲーリー・ロス(Gary Ross))が力を発揮した。

復興の経緯

1981年,LAPLCは古くなった施設の改修計画に着手した。開架スペースの不足,エアコンや駐車場の不備に加え,火災防止システムの欠陥が主な理由であった。1986年,2度の放火による火事で,計画は中断してしまった。この時約40万冊の本が灰となり,焼け残った75万冊は,急速冷凍処理を施されまたは倉庫に保存された。この作業はボランティアの協力によって,きわめて短時間のうちに完了した(CA446,CA524参照)。1988年,計画は再び動きだし,施設拡張工事の起工記念行事が行われた。1989年には,1986年に冷凍処理された蔵書が,最新の技術を用いて解凍・乾燥され,仮設の図書館に戻った。5月にはこれらの本が一般の利用に供された。1992年4月のロス暴動では,幸いにもLAPLC は襲撃を免れている(CA830参照)。1993年,仮設の図書館から新しい建物へ本の移動が始まった。同時に,全蔵書にオンライン目録・貸出システムのためのバーコードが付与された。そして10月3日,再オープンの運びとなったのである。

開館記念行事

開館の前夜,図書館の復興に貢献した市の名士らが出席して,参加費500ドルのディナーパーティーが催された。有名人も多く集まり,口々に図書館を賞賛した。作家レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)は,LAPLCが「私の大学」であると述べ,振付師のデビー・アレン(Debbie Allen)は,館長のマーチネズ(Elizabeth Martinez)を「私のヒーロー」と呼んだ。リヨーダン(Richard Riordan)市長は,「図書館の質を見ればその市の質が分かるものだが,ロサンゼルスは最高の図書館を持っている」と胸を張った。彼は図書館の予算を今後増やしていくと約束したし,このパーティーでLAPLCは50万ドルの収益を得た。

開館当日,8万人の市民が記念行事に参加した。様々なアトラクションが繰り広げられ,利用カードは1日で1万枚以上も発行された。

新しい施設

修復・拡張された中央館が備える主な施設は,次のとおりである。

  • グッドヒュー(Goodhue)館
    復興に尽力した実業家クック(Lodwick M.Cook)の名を冠した丸天井の大広間,KLOSおはなし劇場,復元された壮大な壁画,広々とした開架スペースを持つ本館
  • トム・ブラッドレー(Tom Bradley)棟
    主題図書室と講堂に至るアトリウムを経て主題図書室と講堂に至る
  • OPACと自動図書搬送システム
  • 保安設備,900台以上収容の地下駐車場
  • ロバート・ F. ・マグアイア3世(Robert F.Maguire)庭園とカフェ

これらの施設を備えた新しいLAPLCは,ロサンゼルス市の誇りとなり,最も注目を集める建物となって,貴重な文化・情報・娯楽の源となるだろう。

ところでロサンゼルス市は今年1月17日,マグニチュード6.6の大地震に見舞われたが,幸いこの新しい中央館は,市の中央部に近い約40の分館(分館は全部で68)と同様にほとんど被害がなく,数日中にサービスを再開した。

清水悦子(しみずえつこ)

Ref: Libr J 118(16) 38-40, l993.l0.1; 118(18) 15-18, 1993.11.1; 119(3) 98-99, 1994.2.l5
Am Libr 24 (10) 914-915, 1993.11