CA829 – 新時代を迎えるスペインの国立図書館 / 川村芳郎

カレントアウェアネス
No.157 1992.09.20


CA829

新時代を迎えるスペインの国立図書館

スペインの国立図書館は新時代を迎えようとしている。新立法によって自主運営権が拡大され,同時に近代化を目指している。

この新時代を迎えるにあたって,同図書館のISBN・図書センター部長カルメン・ラカンブラ女史が新館長に任命された。政府としてはプラド美術館が絵画の殿堂とするなら,国立図書館を書物の殿堂にする意気込みで,1992年の予算を前年の30%増の57億ペセタにした。

ところで新館長は種々の理由で改革が進んでいないことを認めた上で,当面の重点事業として以下のことを列挙した。すなわち,現在進めている改修工事をなるべく早く終えること,業務の効率化を目的として機構改革を実施すること,ほかの図書館への貸出し事業を活発にすること,充実したスペイン全国書誌を作成すること。

同館は資料の保存業務と同時に,利用者に対して情報とサービスを提供しなければならないが,現在の600人の職員では不足している。また新館長は,情報システムで近代化すべき点があると語っており,93年を目標に情報システムの改善の準備を進めている。このシステムの完成は内外の図書館との協力及び研究者に対するサービス向上という点でぜひとも必要なことである。

従来同館の利用者は研究者が多かったが,今後は一般市民が利用しやすいようにする,というのが新館長の方針である。しかし同館を利用する多くの研究者がいるのは事実だから,一般市民の利用との調和を図りたいと,同館は考えている。このためにはもちろん人員増も必要だが,場合によっては,予約制の導入も必要になろう。

ともあれ,図書館としては市民に見せたいと思っている蔵書が多数あるので,常設の展示会を開催して,国立図書館をもっと身近な存在にしたいと願っている。

川村芳郎(かわむらよしろう)

Ref: El Sol 1991.11.28
Diario 1992.1.12