CA786 – WAISシステム / 山口義一

カレントアウェアネス
No.149 1992.01.20


CA786

WAISシステム

1989年にDow Jones, Thinking Machines, Apple Computer, KPMG Peat Marwickの4社は,Wide Area Information Servers(WAIS:「ウェイズ」と発音する)の共同開発を始め,このほどその試作品が完成した。このシステムは,全国に散在するフルテキスト情報を,ただ一とおりの簡単なやり方で検索できることが最大の特徴である。Dialogなどを利用する場合は,一定のコマンドを用いて,データベースの指示に従い,正確に検索式を記述しなければならないが,WAISは複雑なコマンドを用いることなく英語の簡単な質問文で複数のデータベースを検索できる。文字,音,画像など,マルチメディアの情報源も処理できる。

検索には,レレバンス・フィードバックと呼ばれる手法を用いている。質問文を入力すると,一回目の検索がおこなわれ,検索された文献のリストが表示される。検索結果が不満足ならば,この中から自分の要求に適合する文献を選択して,再度検索を求めることができる。すると,選択した文献の情報をもとに検索式を修正して,二回目の検索が行われる。

また,利用者が質問文を登録しておくと,システムは定期的に検索を実行し,その結果(フルテキスト)を個人用の電子新聞として利用者に送り届けるというサービスもある。

WAISシステムは,利用者とシステムとの仲立ちの役目を果たすクライエント,各データベースを管理し,実際に検索を行うサーバー,クライエントとサーバーとの間をつなぐプロトコルの3部分からなる。検索は次のように行われる。まず,利用者が英語で質問文を入力すると,クライエントは標準プロトコル形式に質問を翻訳し,サーバーに伝送する。サーバーは受信した後,自分の索引言語に変換し,質問に適合する文献の検索を行う。検索された適合文献のリストが再びプロトコルに翻訳され,クライエントに送信される。クライエントは,送られてきた文献リストを利用者に表示し,さらに,その中から利用者が選んだものについて,フルテキストを表示する。

このようなテキスト情報を検索するソフトウェア・マーケットはDelphi Consulting Groupの分析によれば,現在は小規模であるが,成長しつつある。1989年にアメリカの利用者は6万人以下であった。しかし,1992年には16万に増加するであろうと予測している。

山口義一(やまぐちぎいち)

Ref: Kahle, Brewster et al. An information system for corporate users: Wide Area Information Servers. Online 15 (5) 56-60, 1991
Markoff, John. For the PC user, vast libraries and getting the data will be simplified. New York Times 1991.7.3