第2章 デジタル環境下における欧米の視覚障害者等図書館サービスの全国的提供体制 / 深谷 順子, 村上 泰子

第2章 デジタル環境下における欧米の視覚障害者等図書館サービスの全国的提供体制
第1節 米国
2.1.1 米国における視覚障害者等を対象とした図書館サービスの提供体制
(1)米国の視覚障害者等関連施策の概要
 米国は、2002年12月現在、面積は962.8万平方キロメートル(日本の約25倍)、人口は2000年現在、2億8,142万人である(1)。1994年10月から1995年1月にかけて、商務省の主導の下に行われた国勢調査によると、約5,400万人、人口の20%近くが何らかの障害を持っている(2)。日本の総人口に対する障害者の割合は様々な統計から4〜5%であることが分かっている(3)が、それと比較するとかなり多い割合である。この数値は、米国内の黒人コミュニティ(約3,000万人)よりもはるかに多い。
米国障害者法
 米国の障害者を定義しているのは、米国障害者法(P.L. 101-336 Americans with Disabilities Act of 1990:ADA)(4)(5)である。これによると、障害者は、主たる生活活動の一ないしそれ以上を実質的に制限する身体あるいは精神障害を過去に持った記録があるか、あるいは、そのような障害を持つとみなされる者である。生活活動を制限するという社会的な意味で障害を捉えているという点と一時的に生活活動が制限されても障害者とみなすという点で、障害者の割合が多くなっていると考えられる。ADAは、「障害」だけでなく、「補助具とサービス」を、1.資格のある通訳者あるいは音で伝えられる資料を聴覚障害者に伝える効果的な方法、2.資格のある朗読者、テープの本、その他視覚を通して伝えられる資料を視覚障害者に伝える効果的な方法、3.機器や装置の取得と改良、4.その他のサービスと行為、と定義している。コミュニケーションに障害のある人のための代替手段について明文化している点が特徴である。
 ADAは、米国でアクセシビリティを義務付けた最初の法律でもある。ADAの導入部分では、障害者を取り巻く状況の現状解説が盛り込まれている。その中で障害者が差別に直面する分野として、雇用、住宅、公共施設、教育、交通機関などとともに、コミュニケーションも挙げている。条文には、雇用、公共サービス、民間事業体によって運営される公共性のある施設及びサービス、テレコミュニケーションの章がある。公共サービスは、公共事業体(州、地方自治体、そのすべての局、課、特別目的区、その他の機関、全米鉄道旅客公社及びすべての通勤局)のサービスを指す。国立や州立の図書館のサービスはこの中に含まれる。また、図書館は、公共性のある施設及びサービスにも含まれるため、私立の図書館であってもADAの範疇に含まれる。
 米国議会図書館(Library of Congress:LC)は、ADAに従うことを表明し、その下で、アメリカ手話通訳サービスプログラム(American Sign Language Interpreting Services Program:ASL/ISP)、盲人・身体障害者全国図書館サービス(National Library Service for the Blind and Physically Handicapped:NLS)を行っている(6)。建物自体のアクセスも考慮しており、障害のある人を平等に雇用する機関であることを明示している。ADAコーディネーター兼障害雇用プログラムマネージャー(Disability Employment Program Manager)がおり、ADA関係の調停や障害者雇用の窓口となっている。
 ADAでは差別の禁止は、ほぼ章ごとで触れられているが、各章で共通しているのは障害者の活動への参加の拒否を禁止することである。この参加の拒否は差別であるという考え方は、1973年に制定されたリハビリテーション法第504条(Section 504 of the Rehabilitation Act – Nondiscrimination under Federal grants and programs)(7)の流れを汲んでいる(8)。
リハビリテーション法第508条
 更に、障害者の電子情報技術のアクセシビリティに踏み込んで規定しているのが1998年8月に修正されたリハビリテーション法第508条(Section 508 of the Rehabilitation Act (29 U.S.C. 794d), as amended by the Workforce Investment Act of 1998 (P.L. 105-220), August 7, 1998 – Electronic and information technology)(9)(10)(11)である。
 508条は、1.障害のある連邦政府職員が、障害のない連邦政府職員と同様に、情報やデータを入手し利用できなければならないこと、2.連邦政府及び機関が提供する情報やサービスを求める障害のある一般市民が、障害のない一般市民と同様に、情報やデータを入手し利用できなければならないこと、3.電子情報技術の開発・導入・保守・利用をアクセス委員会から公表される基準に適合させることが過度の負担となる場合、各機関は対象となる障害のある人に対しアクセスを可能にする代替手段によって情報及びデータを提供しなければならないこと、を規定している。修正508条制定後、アクセス委員会は、電子情報技術アクセス諮問委員会を結成し、508条を徹底するための手段として電子情報技術のアクセシビリティ基準の策定に取り組んだ。508条の基準は、2000年3月から5月まで基準案に関する一般からの意見聴取を行い、2000年12月の最終基準公示を経て、2001年6月に正式に施行された。
 LCのウェブサイトは、508条とW3C (World Wide Web Consortium)の『ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン』(Web Content Accessibility Guidelines 1.0)(12)に準拠している(13)。また、これらの法律や指針の成立前の古いページも準拠した形への更新を進めている。そして、電子資料・電子情報をすべての人が利用できるようにするためにあらゆる努力をすることを宣言している。サイトの利用でトラブルがあった場合の窓口は、ADAコーディネーターである。また、ウェブ・スタイルガイドの中に、アクセシビリティの項目を設けている(14)。
 NLSに関連する法律・規則には、次のようなものがある。主な法律を成立年順にたどることで、NLSの歴史的発展を見ることができる。
プラット・スムート法
 最初の注目すべき法律は、1931年3月3日に制定された、成人の視覚障害者(15)に対して本を提供するための法律、通称プラット・スムート法(Act of March 3, 1931 (Pratt-Smoot) An Act to provide books for the adult blind.)(16)である。LCでは1897年から視覚障害者に対しても閲覧サービスを行っていたが、この法律により、毎年10万ドルの予算がLCに支出され、成人の視覚障害者を対象とした全国的な貸出しサービスが開始された(17)。資料を貸し出すために適切な地域図書館を配置することが明示され、退役軍人に対するサービスを優先するという条件も付けられていた。1946年からは視覚障害者サービス部門を統合し、盲人奉仕部(Division for the Blind)となる。また、1952年には、プラット・スムート法から「成人」の語が削除され、サービスを児童に対して拡大した。
 LCの一般利用者の利用資格は18歳以上であり、写真・現住所の入った身分証明書を持参し利用登録をする形式を採っている。したがって、現在も基本的に18歳未満の児童・青少年にはサービスをしていない(18)。ここでのサービス拡大は、視覚障害者の読書環境を考慮し、特別に利用資格を広げたものであると見ることができる。 
プラット・スムート法を改正する法律
 次の法律は、1966年7月30日に制定された、視覚障害者のための書籍及びその他の資料を整備することに関連して、その資料をその他の身体障害者のために整備することを許可する法律(P.L. 89-522, An act to amend the Acts of March 3, 1931, and October 9, 1962, relating to the furnishing of books and other materials to the blind so as to authorize the furnishing of such books and other materials to other handicapped persons.)(19)である。このプラット・スムート法の最終改正により、NLSのサービスは、視覚障害者以外の身体障害者にも拡大された。ここで言う視覚障害者及び身体障害者とは、「身体的制限のために通常の印刷物を読むことができないことを資格のある権威者によって認定された視覚障害者及び身体障害者」のことである。これに伴い、盲人奉仕部の名称も盲人及び身体障害者奉仕部(the Division for the Blind and the Physically Handicapped:DBPH)に改められた。名称は、1978年にDBPHからNLSに改められ、現在に至っている。 
著作権法を改正する法律
 NLSのサービスに大きな影響力を持つ最近の法改正は、1996年9月16日に公布された、著作権法を改正する法律(Copyright Law Amendment, 1996 : P.L. 104-197)(20)である。従来は、視覚障害者のために無料で著作物のコピーや録音図書を1部作成することはフェア・ユースとして認められていたが、一般に配布するための多数のコピーを作成するには著作権者の許諾が必要であった(21)。NLSも許諾を得て図書を作成していた。この改正により、一般の文字情報を得ることのできない障害者のための点訳・録音に際して著作権者の許諾が不要となった。
 著作権法改正前から、米国は録音方法や再生機器を特殊なものにするというクローズドシステムを採ってきた(22)。それは著作権法にも反映されており、製作機関は限定しないが、「特殊な形態で複製し頒布すること」が条件として入っているのである。
合衆国法典
 合衆国法典(United States Code)は、第2巻で議会について、その第5章で議会図書館について定めている。そのうち、NLSに関しては、135条a(23)、135条a‐1(24)、135条b(25)で規定している。これらの規定は、主に、プラット・スムート法とその改正法によって成立した。135条aは図書と音声資料について、135条a‐1は音楽資料について、135条bは地域のセンター(地域図書館)について規定している。135条aでは、米国に居住する視覚障害者とその他の身体障害者の利用のために、印刷された図書や浮き出た文字の図書、音声複製物やその他の形態の資料の購入・維持・音声複製物の再生機器の補充を行い、LCの規定の下に利用の資格を持つ者に貸し出すことが定められている。135条bでは、それらを地域のセンターを通して貸し出すことを定めている。
連邦規則法典
 連邦規則法典(Code of Federal Regulations)は、第36巻第7章第701部第701.10条(26)で、NLSのサービスに関して、1.プログラムの内容、2.利用資格基準、3.地域図書館を通しての貸出し、4.ナショナルコレクション、5.施設や学校への貸出し、6.音楽スコア、7.退役軍人の障害者へのサービス優先、8.問い合わせ先、を規定している。
 利用資格基準によると、NLSのサービスを受ける資格のあるのは、次の人々である。
1.矯正した良い方の視力が20/200以下、又は、視野が20度未満の視覚障害者
2.標準の印刷資料を読むことが困難な視覚障害者
3.身体的制限により標準の印刷資料を読んだり、利用したりすることができない人
4.生まれつきの機能不全で読書が不可能であり、普通の方法では印刷資料を読むことができない人
 いずれの場合も、資格のある権威者(competent authority)の認定が必要である。資格のある権威者とは、内科医、整骨療法医、視力検定者、看護婦、セラピスト、ソーシャルワーカー、図書館員などである。4.の場合の認定は、内科医と整骨療法医が行う。
 視覚障害や身体障害がない限り、学習障害者、ディスレクシア(Dyslexia)(27)、注意欠陥障害の人、慢性疲労症候群の人、自閉症者、機能的非識字者、知的障害者等は、サービス対象者とはならない(28)。
(2)米国の視覚障害者等に対する図書館サービス提供体制
 NLSのサービスは、全国規模のネットワークを通じて提供されるものと直接利用者に提供されるものの二つに分けられる。
 全国ネットワークを通して提供されるのは、点字資料・録音資料・読書器・再生機器の貸出しサービスである。NLSは、学生のための教科書や専門家のための調査資料を作成しない(29)。例外的に音楽資料は作成するが、重きをおいているのは娯楽的読書資料(recreational reading material)のフィクションや一般的なノンフィクションである。この選書基準の根底にあるのは、一般利用者が公共図書館を通して利用できる図書と同じタイプの図書を点字図書・録音図書として製作して提供しようという考え方である。児童へのサービス拡大は、この考えの延長と捉えることができる。
 この考え方は、一般の公共図書館・点字図書館があまり製作してこなかった専門的録音図書を製作し提供しようとする日本の国立国会図書館のサービスとは立場を異にする。両者の立場の差は、サービスの導入時期の差から生じたものと考えられる。NLSのサービス開始時期は1931年であり、当時は視覚障害者に対してサービスをしている公共図書館・点字図書館は少なく、最初に組織化された地域図書館はわずか18館であった(30)。それに対し、国立国会図書館が学術文献録音サービスを開始した1975年は、日本では一般録音図書の製作・提供においては点字図書館や一部の公共図書館がそれなりの実績を持っており、サービス開始当初で135館の協力館があったのである(31)。
 米国の全国ネットワークは、NLSを頂点として、二つのマルチステート・センター(Multistates Center)、57館の地域図書館(Regional Library)と、79館の副地域図書館(Subregional Library)、地域図書館内にある機器貸出し機関(Machine Lending Agency)、副地域図書館内にある副機器貸出し機関(Machine Sublending Agency)で構成されている(32)。地域図書館と副地域図書館の総称はネットワーク図書館である。
 マルチステート・センターは、1974年に始まったものである。それまでは、DBPH(NLSの前身)の下に直接地域図書館が組織されていたが、これでは広い米国ではどんなに急いでも資料の郵送に最低2週間はかかってしまうため、全米をおよそ13州ごとに、北部、中部、南部、西部に分け、各部に1施設を設置した。今まですべてDBPHに集中していたマスターテープの保管、プリント、機器の保管、貸与、カタログ等をセンターに分散し、利用者の要望に数日でこたえられるようになった(33)。マルチステート・センターは、ネットワーク図書館に2年間寄託されて利用された図書があまり利用されなくなると集められる書庫にもなっている。また、NLSが提供するすべての図書の複本を保有しており、要求に応じて、直接ここから貸し出されることもある(34)。
 1986年に予算の都合で南部センターがなくなり、1990年に北部センターもなくなって、現在は、ミシシッピ川より東のネットワーク図書館を担当する東マルチステート・センター(Multistates Center East)がオハイオ州シンシナティに、ミシシッピ川より西のネットワーク図書館を担当する西マルチステート・センター(Multistates Center West)がユタ州ソルトレークシティに置かれている(35)。
 地域図書館は、57館のほとんどが州政府管轄下の公共図書館の一部門である。中にはアメリカ点字協会(Braille Institute of America:BIA)のように古くから活動していた民間機関、パーキンス盲学校録音点字図書館(Braille and Talking Book Library, Perkins School for the Blind)のような盲学校の図書館、オクラホマ盲人・身体障害者図書館(Oklahoma Library for the Blind and Physically Handicapped)のように州のリハビリテーションサービス部門と図書館の両方の管轄下にある機関など、特色のある機関も含まれている。ワイオミング州、グァム島以外のすべての州に地域図書館があり、カリフォルニア州、ミシガン州、ニューヨーク州、オハイオ州、ペンシルヴェニア州には、二つの地域図書館がある。グァム島の利用者はハワイ州の、ワイオミング州の利用者はユタ州の地域図書館を利用している。
 副地域図書館は、地域図書館によって組織され、地域図書館から録音図書・点字図書・大活字図書の補充をすることにより、その地域に住む利用者のためにサービスをしている。サービス開始当初は存在しなかった副地域図書館が地域図書館の支援機関として発展したのは、地域図書館だけでは利用者の急速な増加と地域レベルの幅広いサービス利用の要求に対応し切れなかったためである(36)。
 直接NLSから提供されるのは、国外在住の米国民の利用者へのサービス、音楽資料の提供、Web-Brailleサービスである。
 音楽資料のコレクションは、約3万タイトルで、点字や大活字のスコア、点字や大活字の教科書や書籍、音楽カセットや個々の楽器に関する個人レッスンカセットなど多種多様である(37)。
 Web-Brailleサービスは、1999年8月から開始されたサービスで、インターネットを経由して点字図書や点字雑誌を利用するものである(38)。データはすべて2級点字(39)で、1級点字や外国語の資料は含まれていない。音楽資料のうち点字のものは、一般の点字図書・点字雑誌と同様にインターネットを経由して利用できる。Web-Brailleサービスは、著作権法により、NLSの利用者と盲学校等の機関しか利用できない。機関がWeb-Brailleファイルから作成できるのは、点字のコピーだけであり、大活字やEテキストの作成は許可されていない。利用は、地域図書館か副地域図書館で手続きをし、ユーザー名とパスワードを取得してから可能となる。
 NLSは、前述したように、「学習障害者」や「読書障害者」の存在を意識していても、連邦規則法典の規定により、それが「身体的制限に由来するもの」でなければサービスできないとしている。その結果、学習障害者、ディスレクシア、注意欠陥障害の人、慢性疲労症候群の人、自閉症者、機能的非識字者、知的障害者等は、NLSのサービス対象者とはならない。ネットワーク図書館も独自にサービス対象を拡大していない限りはNLSと同じ範囲でサービスを展開していると思われる。
 NLSを頂点とした図書館ネットワークがカバーできていない部分を補完している民間機関として二つの機関が挙げられる。専門的な録音図書の全国サービスを行うRFBD(Recording for the Blind and Dyslexic)と読書に障害のある人個人やそのサービス機関に対しオンライン上でアクセシブルなデジタルフォーマットの図書を提供するブックシェア(Bookshare)である。録音図書のデジタル化には大きく二つの方向があるが、米国では、DAISY図書の貸出しを行っているのがRFBDで、ネット上でのコンテンツの提供を行っているのがブックシェアである。
 RFBDは、視覚障害・知覚障害・身体障害により通常の印刷物を読むことができない人に対して録音資料を提供する民間機関である(40)。利用には登録料と年会費が必要であるが、NLSが製作しない教科書や教育的資料などを製作し、NLSがサービス対象としない知覚障害者、特にディスレクシアへのサービスに力を入れているため会員は2002年現在116,948人と多い。2002年現在の所蔵タイトルは246,303タイトルである。
 蔵書構成とサービス対象者の特徴により、NLSは、高齢の視覚障害者の利用が多く(41)、RFBDは若年者、学生、学習障害者、ディスレクシアの利用が多い。RFBDの学習障害者の利用は1970年ごろから増え始めていた。1995年から機関名にDyslexicを付けたのも、その現状を反映し、読書に障害を持つ人(print disabilities)すべてをサービス対象とすることを明確に名称に表したためである(42)。
 RFBDは再生機器の貸出しをしないため、RFBDの会員の中には、再生機器の貸出しを受けるためにNLSの録音図書サービスに申し込む者もいる(43)。RFBDの会員がNLSのサービスを受けられるようにすることが期待されているが、NLSは連邦法の範囲を超えてサービスすることができないため、RFBDと同じ基準に利用者を拡大することはできていない。
 ブックシェアは、全盲の人、メガネやコンタクトレンズを使用しても通常の活字の新聞を読むことが困難なほどの視覚障害のある人、印刷資料を読んで理解することの妨げとなるディスレクシアのような学習障害のある人、本を持ったりページをめくったりすることの妨げとなるような運動障害のある人のために、オンライン上でアクセシブルなデジタルフォーマットの図書を提供する(44)。ブックシェアのサービスは、障害のある人にアクセシブルな資料を提供する機関も利用することができる。利用者は会費を払ってサービスを利用する。
 ブックシェアの図書は、録音図書はNISO規格に則ったXMLフォーマットで、点字図書はピンディスプレイや点字プリンターに対応したBRFフォーマットであり、著作権法上の障害者のための「特別な形態」として認められている。この図書は、スキャニングすることによって作成されるが、作成にはボランティアを募るだけでなく、会員自身にも他の会員のためにデジタルコピーを提供することを呼び掛けている。著作権者からオリジナルのデジタルコピーも受け入れている。また、ブックシェアの目録は、検索をしたときに、他のプロバイダーのアクセシブルな図書を「遠隔図書」(Remote Books)として表示するようなシステムになっている。実際にその図書の詳細を調べたり、注文したりする場合は、そのプロバイダーのサイトに自分で行き、そちらでも料金を払う必要がある。これは書誌情報提供サービスの一つである。
 更に、ブックシェアは、自らのサービスをNLSやRFBDと比較している。NLSとRFBDが質の高いデジタル図書を提供する小さな図書館であるのに対し、ブックシェアは低コストのスキャンされた図書を提供する広大な図書館であるというのである。NLSとRFBDは図書の質を高く維持する必要があるため図書1冊当たりのコストが高くなる。実際、製作者のスキルを高めていくことは両機関にとって常に重要な課題であった。NLSのWeb-Brailleサービスが提供したBRFフォーマットの点字図書が約4,700タイトルで、RFBDが2002年9月時点で提供できるDAISY録音図書が6,000タイトルであるというデータからブックシェアは、質の追求によって両機関の製作数が限られてしまっていると捉えている。それに対し、ブックシェアは提供する図書の質を保証しないで図書の数を増やすという道を選んだ。ブックシェアの図書は、質のランクがスキャニングのエラーの数で分けられている(45)。ほとんどエラーのないものが優(Excellent)、少しエラーのあるものが良(Good)、エラーが多いが読み取りに耐え得るのが可(Fair)といった付け方である。そのうち優と良の図書は、BIAの協力で、リクエストに応じて校正しない状態の点字図書として直接打ち出すことができる。優の図書だけが、資格のある点訳者が体裁を整えた点字図書として製作される。点字図書として打ち出されたものは、会員以外でも利用できる。可の図書は会員がデジタルフォーマットでのみ利用する。ブックシェアのサービスは、デジタル環境下の新しいサービスとして注目に値する。
 以上のように米国では、主として図書館ネットワークが一般的な読書(recreational reading)に対応し、民間機関が専門的な読書(professional reading)に対応している。また、図書館ネットワークが対象としない利用者に対しては民間機関が積極的にサービスを行っている。
 このように図書館ネットワークと民間機関は、相互に補完し合っている。しかし、視覚障害者と身体障害者は図書館ネットワークのサービスも民間機関のサービスも受けられるが、その他の学習障害者は民間機関のサービスしか受けられず、障害によって選択肢が狭められているという問題点が残されている。
2.1.2 米国議会図書館盲人・身体障害者全国図書館サービスの視覚障害者等図書館サービス支援機能
 現在、 NLSは、合衆国法に基づき、内外の米国市民の視覚障害者・身体障害者へ読書資料を提供する国家計画を実行するという責任を果たすため、次のような業務を行っている(46)(47)。
1.選書、著作権処理、読書資料の調達
2.直接、あるいは、ネットワーク図書館を通した資料と関連書誌情報の流通
3.音声再生機器の設計、開発、流通
4.製作物とサービスの基準の確立と質の保証
5.ボランティアの訓練、講習、調整
6.相互貸借計画の管理
7.目録、印刷形態の出版物、視覚障害者・身体障害者用メディアの出版物の整備
8.視覚障害と身体障害に関する全国的なレファレンス・レフェラルサービスの提供
9.音楽資料の開発、維持、貸出し
10.NLS資料を効果的に利用するためのネットワーク図書館の監督とガイドライン・プロデューサーマニュアルの提供
 また、NLSは、視覚障害者・身体障害者のための特別な形式の読書資料(点字・音声その他利用できる形態の図書や雑誌を含む)を保管する責任(Custodial Responsibilities)を持つ。
 NLSの本部では、これらの業務を、局長室の調整により、資料開発部、ネットワーク部の二つの部門に分けて行っている。
 局長室は、局長が中心となり、方針の策定、計画立案、すべての業務の管理、二つの部署の調整を行う。局長室には、オートメーション室、調査開発室、管理課、出版メディア課がある。
 資料開発部には、書誌調整課、点字開発課、コレクション開発課、工学技術課、製作調整課、品質保証課の六つの課があり、それらを資料開発部事務室が調整している。また、製作調整課の管理下にレコーディングスタジオもある。1、3、4、5、7の業務にかかわっている。
 ネットワーク部には、在庫管理課、音楽課、ネットワークサービス課、レファレンス課の四つの課があり、それらをネットワーク部事務室が調整している。また、利用者関係職を置き、個々の利用者や利用者グループとの連絡、利用者調査などを行っている。2、3、6、8、10の業務にかかわっている。
 図書の点訳・朗読は、広範なボランティアの協力に依存しており、NLSではこれらボランティアの養成・指導援助に力を入れるとともに、民間のボランティア組織と協力して全国サービスを行っている。
 資料の所蔵概況(48)は、点字図書の所蔵が63,000タイトルで、年間受入れ点数が1,300タイトルである。録音図書(4トラック半速と2トラック半速)の所蔵が55,000タイトル、年間受入れ点数が2,123タイトルである。まだDAISY図書の製作実績はない。大活字図書の所蔵が200,000タイトルと非常に多い点が特徴的である。
 なお、カナダ盲人援護協会は、ナレーション付きビデオやナレーション付き映画フィルムも所蔵しているが(49)、NLSではこれらを所蔵していない。米国では、字幕付きフィルム・ビデオ提供計画(Captioned Films/Videos Program)は1958年から1965年までは教育省が担当し、1965年からは外郭団体のCEASD(Conference of Educational Administrators Serving the Deaf)に委託された(50)。更に、この計画は、ビデオの選定と字幕製作を担当する部門と字幕付きフィルム・ビデオの配布を担当する部門に分けられ、前者はNAD(National Association of the Deaf)に、後者はMTP(Modern Talking Pictures, Inc.)に委託されるようになった。この間図書館はこれらの計画やこれらの資料の収集にかかわることはなかった。また、米国では、録音にはクローズドシステムを採用したが、字幕は聴覚障害者だけでなく、障害者や英語を母語としない移民を含んだ一般の視聴者をターゲットとしたオープンシステムであるという点も特徴的である。
2.1.3 米国における視覚障害者等図書館サービスの現状と特徴
 ここでは書誌情報の提供と録音図書のデジタル化について述べる。
 NLSのオンラインカタログ(the online catalog)は、NLS、ネットワーク図書館、RFBDなど国内の他機関、国外の他機関(カナダも含まれる)のspecial format資料のみを収録した目録で、LCの目録からは独立している(51)。LC本体の目録からはNLSの資料は検索できない(52)。NLSの目録は、FormatとAnnotationで資料の特徴を詳しく述べているが、LC本体の目録にはその項目は存在しないのである。NLSのオンラインカタログからは、現時点では資料請求をすることはできない(53)。NLSでは、地域の図書館でそのようなサービスが受けられるところがあるので、基本的にそちらを調べて、地域の図書館からサービスを受けてほしいと考えているようである。
 次に、録音図書のデジタル化についてであるが、NLSは、2002年5月にデジタル録音図書計画に関する進捗報告書を発表した。その内容は、2004年からは最新タイトルのデジタルフォーマットでの製作を開始すること、アナログからデジタルへのコンバートを2008年の4月までに完了させ、約2万タイトルの録音図書をデジタルフォーマットで利用できるようにすることであった(54)。
 米国は、当初、DAISYとは異なる方式でのデジタル化を考えていたため、DAISYコンソーシアムへの参加は発足(1996年5月)よりも1年ほど後(1997年8月)であった。米国のDAISYコンソーシアムへの参加決定は、DAISYの世界標準化を最終的に後押しする形となった。
 これに先立ち1996年12月に、NLSは、米国情報標準化機構(National Information Standards Organization:NISO)を通じてデジタル録音図書の標準化に着手することを発表していた(55)。NISOがデジタル録音図書の標準化について定期的に討議するようになったのは1997年5月からである。ワーキンググループには、NLSのほかに、アメリカ盲人協会(American Foundation for the Blind:AFB)やRFBDなど、視覚障害者にかかわる21機関の代表が参加した。このワーキンググループにはDAISYコンソーシアムの方から参加を表明し、代表を出した。5年間の討議を経て、NISOは、デジタル録音図書に関する基準をNISO規格として承認した(ANSI/NISO Z39.86-2002, Specifications for the Digital Talking Book)(56)。この基準は、デジタル録音図書を含む電子ファイルのフォーマットと内容を定義し、デジタル録音図書の再生装置の必要条件を設定するものである。国際標準規格DAISY2.02仕様(57)を更に進化させ、従来の音声や静止画像だけでなく、動画やビデオデータを含めたオープンなマルチメディア仕様となっており、事実上のDAISY3.0仕様と目されている。
 米国では、DAISYコンソーシアムに参加し、DAISY録音図書の製作と貸出しで先行していたのは、RFBDである。NLSは、デジタル録音図書に関する基準のNISO規格化において大きな役割を果たしたものの、今まではDAISY録音図書の製作実績はなかった。今後、NLSが計画に基づきどのようにデジタル録音図書サービスにかかわっていくかが注目される。
[注]
(1)外務省.アメリカ合衆国−基礎データ.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(2)Paciello, Michel G. ウェブ・アクセシビリティ:すべての人に優しいウェブ・デザイン.ソシオメディア監訳.東京,アスキー,2002,12.
(3)石渡和実.’Q2 日本にはどのような障害者がどれくらいいるのですか’.Q&A 障害者問題の基礎知識.東京,明石書店,1997,20.
(4)Job Accommodation Network. ‘The Americans with Disabilities Act of 1990, Titles I and V’. JAN : ADA Hot Links and Document Center. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
JANは、条文を掲載しているだけでなく、ADAのアクセシビリティ・ガイドラインやテクニカル・アシスタンス・マニュアル、関連資料などを収集した優れたADAリンク集である。
(5)アメリカ障害者法(全訳).斎藤明子訳.東京,現代書館,1991,84p.
(6)The Library of Congress(LC). ‘Especially for Persons with Disabilities’. The Library of Congress.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(7)Section 508. ‘Section 504 of the Rehabilitation Act’. Section 508(online), available from ,
(accessed 2003-01-31).
(8)Scotch, Richard.アメリカ初の障害者差別禁止法はこうして生まれた.竹前栄治監訳.東京,明石書店,2000,232p.
(9)Section 508. ‘1998 Amendment to Section 508 of the Rehabilitation Act’. Section 508(online), available from ,
(accessed 2003-01-31).
(10)ユーディット.’508条について:本文全訳’.リハビリテーション法508条.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(11)前掲(2),33-34.
(12)W3C. ‘Web Content Accessibility Guidelines 1.0 : W3C Recommendation 5-May-1999’. World Wide Web Consortium : Leading the Web to its Full Potential. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(13)LC. ‘Access to Our Web Site’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(14)LC. ‘World Wide Web Style Guide, Chapter One : Introduction’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(15)本報告書では、blindの訳語は基本的には「視覚障害者」を使用し、NLSのように機関名でblindを用いている場合は「盲人」の方を採用した。
(16)The Library of Congress, National Library Service for the Blind and Physically Handicapped (NLS). ‘Act of March 3, 1931 (Pratt-Smoot) An Act To provide books for the adult blind’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(17)宍戸伴久.アメリカにおける身体障害者に対する図書館サービス:議会図書館の全国サービスを中心に.現代の図書館.13(3),1975,97, 99-100.
(18)LC. ‘Research & Reference FAQ, 9.Who is eligible to do research at the Library? ‘. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(19)NLS. ‘P.L. 89-522, An act to amend the Acts of March 3, 1931, and October 9, 1962, relating to the furnishing of books and other materials to the blind so as to authorize the furnishing of such books and other materials to other handicapped persons’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(20)NLS. ‘Copyright Law Amendment, 1996 : P.L. 104-197’. The Library of Congress. (online), available from ,
(accessed 2003-01-31).
(21)Weinstein, David A. ‘第7章 フェア・ユース’.アメリカ著作権法.山本隆司訳.東京,商事法務研究会,1990,92-93.
(22)IFLA. International Directory of Libraries for the Blind. 4th ed. (online), available from , (accessed 2003-01-31).によると、カセット録音図書の形態は、一般(Standard Compact Cassettes(4.8cm/sec))、4トラック半速(4Track2.4cm/sec Cassettes)、2トラック半速(2Track2.4cm/sec Cassettes)の3種類がある。4トラック半速や2トラック半速を再生するには特殊な再生機器が必要である。掲載されている機関のカセット録音図書の形態は国ごとに特徴が見られる。スウェーデンでは3機関のカセット録音図書のすべてが一般カセットであり、4トラック半速や2トラック半速の形態は見られない。日本では2トラック半速の形態を製作するのは日本点字図書館のみで、他の機関は一般カセット形態で製作する。カナダは一般カセットのみが6機関、半速のみが5機関、両方の形態が3機関で、ほぼ半数ずつの結果となった。米国は一般カセットのみが8機関、半速のみが10機関、両方の形態が5機関で、カナダと似た傾向となったが、一般カセットのみよりも、半速のみの機関の方が多いという点でよりクローズドシステムの傾向が強いと言える。ちなみに、日本では半速も2トラックだが、北米では半速は4トラックの方が多い。なお、本稿(第1節・第3節)では、録音図書の製作・提供システムについて、「障害のある人だけが利用できるように特別な方法で製作し、障害によりニーズを持つ利用者に提供するもの」を「クローズドシステム」、「障害のある人の利用を目的とするが、障害のない人も利用できる形態で製作し、ニーズを持つ幅広い層の利用者に提供するもの」を「オープンシステム」としている。
(23)U.S. Government Printing Office(GPO). ‘Title 2 The Congress, Chapter 5 Library of Congress, Sec. 135a. Books and sound-reproduction records for blind and other physically handicapped residents; annual appropriations; purchases’. Keeping America Informed. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(24)GPO. ‘Title 2 The Congress, Chapter 5 Library of Congress, Sec. 135a-1. Library of musical scores, instructional texts, and other specialized materials for use of blind persons or other physically handicapped residents; authorization of appropriations’. Keeping America Informed. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(25)GPO. ‘Title 2 The Congress, Chapter 5 Library of Congress, Sec. 135b. Local and regional centers; preference to blind and other physically handicapped veterans; rules and regulations; authorization of appropriations’. Keeping America Informed. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(26)NLS. ’36 CFR 701.10, Title 36 Code of Federal Regulations, Sec 701.10 Loans of library materials for blind and other physically handicapped persons’. The Library of Congress. (online), available from < http://www.loc.gov/nls/sec701.html&gt;, (accessed 2003-01-31).
(27)読み書きを習得すること、特に正しく語を綴り、自分の考えを表現することが困難であること。医学的には「失読症」、一般的には「難読症」と言われている。発達性ディスレクシアでは、視覚、聴覚の疾患ではないこと、知的には正常に成長していること、教育環境の貧困によるものではないことが証明されなければならない。ディスレクシアの診断は、何種類かの心理テストの組合せで多方面からアプローチする多軸診断によって可能になる。アメリカ精神医学協会の診断基準の中では、特異的発達障害の中の「Academic skills disorder」に当たり、それによると「全体的認知能力に比べて、計算する能力、書く技能、又は読む技能が著しく低下している障害を総称するもの。これらの学習に直接関係する障害はしばしば、行動面で注意散漫、衝動性、多動を伴うもの」とされている。日本では、学習障害の中の一つとして扱われているが、広く認識されるには至っていない。
Hornsby, Breve. 読み書き障害の克服:ディスレクシア入門.苧阪直行,苧阪満里子,藤原久子訳.東京,協同医書,1995,163p.(テキスト版補足:著者名Breveの最後のeには鋭アクセントが付く。)
特別非営利活動法人EDGE.Edge.(online) , available from , (accessed 2003-01-31).
(28)NLS. ‘NLS Factsheets : Talking Books and Reading Disabilities’.The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(29)NLS. ‘International Interlibrary Loan’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(30)前掲(17),100.
(31)国立国会図書館編.’第4章 一般公衆に対する奉仕’.国立国会図書館年報.昭和50年度.東京,国立国会図書館,1977,23.
(32)NLS. ‘NLS Reference Directories : Cooperating Library Address List’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(33)加藤洋子.テープ・ライブラリーを中心とした情報サービス体制.視覚障害.(56),1981,6.
(34)北川和彦.米国議会図書館における盲人・身体障害者全国図書館サービスの概要.国立国会図書館月報.(238),1981,9.
(35)NLS. ‘History’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(36)Cylke,F.K.’National Library Service for the Blind and Physically Handicapped’.The Bowker Annual of Library & Book Trade Information.20th ed.New York,Bowker,1975,88.
(37)NLS. ‘Music Services for Blind and Physically Handicapped Individuals’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(38)NLS. ‘NLS Factsheets : Web-Braille’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(39)1級点字は省略のないフルスペルの点字、2級点字は省略のある点字である。前者は初学者向けで、一般的な英語点字は2級点字である。
(40)Recording for the Blind & Dyslexic. ‘Quick Facts About RFB&D’.RFB&D : learning through listening. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(41)北口利昭.米国議会図書館の視覚障害者サービスについて.国立国会図書館月報.(248), 1981,19.
(42)Recording for the Blind & Dyslexic. ‘The RFB&D Story’. RFB&D : learning through listening. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(43)前掲(28).
(44)Bookshare.org. ‘About Bookshare.org’. Bookshare.org. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(45)Bookshare.org. ‘Support’. Bookshare.org. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(46)NLS. ‘Function of NLS’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(47)Cylke,F.K.’Chapter 7,National Library Service for the Blind and Physically Handicapped’.Manegemnt of Federally Sponsored Libraries:Case Studies and Analysis.New York,The Haworth Press,1995,109-128.
(48)前掲(22).
(49)本稿2.カナダを参照のこと
(50)石川准,関根千佳.’米国の社会背景と字幕の歴史’.石川准のホームページ:社会学とアシスティブ・テクノロジー.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(51)NLS. ‘About the Online Catalog’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(52)LC. ‘Library of Congress Online Catalog’. The Library of Congress. (online) , available from , (accessed 2003-01-31).
(53)NLS. ‘Ordering Books Online’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(54)LC. ‘Library of Congress Issues Report on Digital Talking Books’. News form The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(55)NLS. ‘NLS Technical Writing : Digital Talking Books, Plannning for the Future, July 1998’. The Library of Congress. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(56)ANSI/NISO Z39.86-2002 Specifications for the Digital Talking Book. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(57)Daisy Consortium. ‘DAISY 2.02 Specification Recommendation, February 28 2001’.Daisy Consortium … a better way to read. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
第2節 カナダ
2.2.1 カナダにおける視覚障害者等を対象とした図書館サービスの提供体制
(1)カナダの視覚障害者等関連施策の概要
 人口3,075万人を抱える連邦国家カナダは、10州3準州から構成され、世界有数の多民族多文化国家として知られている。カナダは1990年代の初めには深刻な財政赤字を抱えていたが、自由党のクレティエン(Jean Chretien)政権下で「小さな政府」への転換を図り、財政再建を果たした。同政権は財政黒字を背景に、減税と社会福祉政策にバランスの取れた政策を掲げ、現在3期目に入っている。多民族多文化という特徴は、障害者を含めてあらゆる面での機会の平等を要求する。1982年にカナダ国憲法の一部として発効した「権利と自由の憲章」において、障害の有無による差別も禁じられることが明記され、1977年の「カナダ人権法」とともに、障害者政策を展開する上で、その依拠するところとなっている。
カナダの障害者政策
 カナダの障害者関連施策は1980年代には経済的社会的参加に重点を置くものであった。雇用機会均等の促進や交通バリアフリー政策もその一端である。しかしながら1991年に実施された調査によって、障害者の社会参加がなお非常に不十分な状況にあることが判明し、また「国連障害者の10年」の最終年に当たる1992年、「自立の92年」(Independence ’92)と題する国際会議に次いで、国際閣僚会議が開催されると、内外の多くの目がカナダの障害者施策に向けられるようになり、その前後からより積極的な障害者政策への取組が見られるようになった(1)。
 1998年、カナダ連邦政府はケベック州を除く地方政府との連携の下、以後の障害者政策の一つの指針となる文書をまとめた。障害を持つ人々の完全な社会参加を促進する方針を示した 《In Unison: A Canadian Approach to Disablitiy Issues》 である。これに基づき1999年、連邦政府は行動の優先順位を示すアジェンダを発表した(2)。
IT先進国カナダ
 これら一連の政策を支える重要な柱の一つが、平等な情報アクセスの保障である。情報ネットワークの整備においても先進的(3)なカナダは、世界初の完全光インターネット及び世界で最も安価なインターネット接続コストを誇る。教育関連では、連邦政府の情報政策コネクティング・カナダ(Connecting Canadians)の一部であるスクールネット(School Net)プログラムにより、1999年3月30日までにカナダ中の学校及び図書館がインターネットに接続完了した。更に現在そのネットワークを個々の教室に拡張しようとしている。2000年5月時点で約50万台のコンピュータが学校に配置され、インターネットに接続されている(4)。2000年には国家財政委員会が掲げたコモン・ルック・アンド・フィール(The Common Look and Feel:CLF)政策に基づき、2004年までに政府の提供する情報に、すべてのカナダ国民が平等にアクセスできることを保障する基準が制定されており、視覚障害者のウェブアクセス環境も急速に整備されつつある(5)。
カナダ著作権法
 視覚障害者への情報アクセス保障においては、著作権問題がしばしば制約を与えることが知られているが、1997年4月には、著作権法において、知覚に障害のある人(6)の求めに応じての場合、又はそれらの人々の利益に資する非営利組織が行う場合であれば、事前にも事後にも許諾の要なく、知覚に障害のある人のために特に設計された形態で、1.複製・録音(特に電子形態を排除していない)、2.手話による翻訳、改作、複製、3.手話実演、の三つを可能とする法的整備も実現している(7)。
(2)カナダの視覚障害者等に対する図書館サービス提供体制
 カナダでは図書館サービスは州内の各市の責任事項であり、各州内の公共図書館において、優れた視覚障害者サービスを提供している自治体も多い(8)。例えばブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー公共図書館においては、およそ13,000タイトルの録音図書、3,500タイトルの大活字図書、100タイトルのナレーション付きビデオサービスが提供されている(9)。公共図書館以外でも、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)内に設置されているクレーン・リソース・センター及び図書館(Crane Resource Centre and Library)のサービスは広く知られており、カリキュラム関連の資料を録音図書、大活字図書、点字図書の形態で、学生以外にも提供している(10)(11)。ここで取り上げるのはこうした個別図書館の活動ではなく、各館の取組を支える全国サービス組織のサービス提供体制である。主たるものとして以下の二つを挙げることができる。その一つはカナダ国立図書館(National Library of Canada: NLC)(12)である。NLCは直接サービスよりもむしろ政策面、特に電子媒体資料にかかわる政策に主導的役割を果たしている。もう一つはカナダ盲人援護協会(Canadian National Institute for the Blind:CNIB)の図書館である。CNIBは1918年から視覚障害者、聴覚視覚障害者、その他の視覚に障害を持つカナダ国民に対して援助を行ってきた非営利機関である。
 以下では、NLC及びCNIBの視覚障害者等図書館サービス支援機能について述べる。
 2.2.2 カナダ国立図書館及びカナダ盲人援護協会の視覚障害者等図書館サービス支援機能
(1)視覚障害者関係資料所蔵概況
 カナダ国立図書館及びカナダ盲人援護協会の視覚障害者関連の所蔵概況を次表に示す。(テキスト版補足:冊子体では以下に表が挿入されていますが、ここでは形式を変えています。)
NLCの所蔵状況
 1.点字資料:なし
 2.録音資料:4,762タイトル、形態はカセットテープ(一般タイプ)、雑誌4,000タイトル、年間受入れ点数は報告なし
 3.DAISY:報告なし
 4.大活字資料:1,394タイトル
 5.電子テキスト:報告なし
CNIBの所蔵状況
 1.点字資料:35,940タイトル、年間受入れ点数800タイトル、雑誌を含む
 2.録音資料:21,256タイトル、形態はカセットテープ(4トラック、2トラック)、オープンリール、雑誌もあり、年間受入れ点数1,500タイトル
 3.DAISY:5、うち自館作成5
 4.大活字資料:なし
 5.電子テキスト:1,500タイトル、うち自館作成1,500タイトル
 以上、《IFLA. International Directory of Libraries for the Blind 4th Edition》 (2002年12月現在)(13)による。
 なお、CNIBについては更に下記の所蔵が確認された(14)。
 透明点字シート付き絵本 1,600タイトル以上
 点字楽譜等 18,000タイトル以上
 ナレーション付きビデオ 250本以上
 ナレーション付き映画フィルム 50本以上
(2)カナダ国立図書館(15)
 NLCの視覚障害者等をサービス対象とした蔵書は、1953年という開館時期自体の遅さを考慮に入れても、先のバンクーバー市立図書館や後述のCNIBに比べて顕著に乏しい。比較的まとまった分量を所蔵する録音資料も、高齢化に伴い視覚に障害を持った移民世代が増加し、そうした人々を対象とした多文化政策の一環として作成されたという側面を併せ持つ(16)。NLCの視覚障害者等をサービス対象とした資料の乏しさは、既に資料提供サービスにおいて長い歴史を持つCNIBや各市等の図書館と棲み分けを図り、個別のサービスの直接的な提供ではなく政策面、基盤整備面に徹していることの現れと見ることもできよう。政策面での取組も前述の通り、比較的歴史は浅く、その政策が具体的な形を見せるのは今世紀に入ってからのことである。
報告書『約束の達成』
 1990年代における視覚障害者等関連施策の展開の中、1995年、NLCは「障害者情報アクセス評価プログラム」(Evaluation of the Information Access for Persons with Disabilities Program)を実施し、1999年の報告書『カナダ国立文書館及びカナダ国立図書館の将来の役割』に繋げた。更に2000年10月NLCとCNIBは共同で『約束の達成:印刷物の利用に障害のあるカナダ国民のための情報アクセスに関するタスクフォース報告書』を提出した(17)(18)。ここでは26項目にわたる勧告が示され、この勧告を受けて、NLCは「印刷物の利用に障害のあるカナダ国民のための情報アクセス委員会」(Council on Access to Information for Print-Disabled Canadians)を設置した。
 2001年には報告書の勧告にAからEまでの5段階の優先レベルを設定することにより、今後の戦略が練られた(19)。
 2002年5月に改訂されたワークプランの中で最重要課題とされたのは、以下の6項目であった。
1.CANUC-H/CANWIPデータベースの継続的更新及び包括性の向上。無料提供。
2.NLC館長は点字資料出版社等との交渉を通じて、利用可能性の拡大を目指すこと。
3.NLC館長は視覚障害者のための録音資料のサイトライセンス契約交渉を行うこと。
4.国家財政委員会はすべての連邦政府の印刷物がオンデマンドで複数の形態で利用できるよう要求すること。
5.NLCはカナダの図書館においてILLや資料共有が促進されるよう、先導し支援すること。
6.NLCは、印刷物の利用に障害のあるカナダ国民のためにアクセス可能性を高める計画と並行して、衆知計画を積極的に推進すること。
カナダ全国総合目録AMICUS
 前記勧告を受けて現在進められている計画中で特筆すべきは、書誌データの提供インタフェースの向上である。1983年以来障害者のための図書館資料については、全国総合目録CANUC-Hとしてマイクロフィッシュで提供されてきた。CANWIPは障害者が利用可能な形態で作成されている途中の資料に関する情報である。一方NLCは、NLCを含む全国約1,300館からの2,600万件に近い書誌レコードと、NLCの4,600万件に及ぶ所蔵レコードについて、ウェブでのアクセスを実現し、1日24時間週7日の無料アクセスが可能となった。また登録をしておけばウェブベースの検索だけでなくコマンド検索も可能である。カナダ国内の各館のILL担当者は登録しておきさえすれば、ウェブからILL要求を送信できる。個人の利用者がウェブから直接ILL要求を送信することはできないが、検索結果の所蔵情報から各所蔵館のILL要件を確認することができるようになっている。このウェブベースの全国総合目録AMICUSに、約25,000件の点字資料、録音資料などの書誌データが含められ、他の資料と同時に検索することが可能となったのである。既に点字資料や録音資料の形態で利用可能なものとそうでないものとを別々に検索する必要のあった状態から、それらを同一のインタフェースで同時に検索することができる状態に移行したという点で、より円滑なアクセスへの一歩を築いたと言うことができる。
AMICUSの検索性
 実際にAMICUS Webの検索画面で’advanced search’を選択すると、フォーマット指定でき、点字、コンピュータファイル、大活字、マイクロフォーム、録音資料、ビデオ、ウェブ資料の選択肢が用意されている。しかし録音資料やビデオのように利用対象者が障害者に限らない場合に、例えばナレーション付きビデオに限定して探索することはできない。件名を’Video recordings for visually handicapped’とする、注記フィールドに’described video’、’narration’のように該当するキーワードを入れて検索するなどの方法が考えられるが、件名が必ずしもすべての書誌データに統一的に付与されているわけではないこと、注記フィールドの記述方法は更に自由度が高いことから、いずれも網羅的な検索は望めないという問題点を残している。
 AMICUSのデータ維持には国内の多くの図書館が貢献しており、その中にCNIB図書館も含まれているが、2002年度には協力の後退が見られる。むしろCNIB図書館は別の方向での展開を図っていると見られる。これについては後述する。
 NLCはまた代替フォーマット資料の国際的な資源共有を図るため、米国議会図書館のNLS(本稿第2章第1節米国参照)の維持するオンライン全国総合目録にAMICUSから当該更新データを年2回提供している。NLCが障害者サービスについての多くの勧告を実現することによって目指す形は「電子テキストのクリアリングハウスの構築」であるが、その動きはまだ緒についたばかりである。
(3)カナダ盲人援護協会図書館(20)
 カナダの全国規模での視覚障害者サービスを語る上でもう一つ忘れてならないのがCNIB図書館である。CNIB図書館はカナダ最大の視覚障害者向けの資料作成機関であるとともに、カナダ唯一の全国サービス提供機関でもある(21)。アルバータ大学による視覚障害者の公共図書館利用に関する調査によれば、調査対象者の50%以上が公共図書館を利用しているにもかかわらず、多くの公共図書館が蔵書の面で不十分な状態にあるという(22)。CNIB図書館は80年以上の歴史を持ち、こうした公共図書館への支援機能を長く果たしてきた。CNIB図書館が対象とする利用者は、親機関であるCNIBの会員約90,000人及びCNIBと提携関係にある公共図書館や教育機関など他の情報サービス機関を利用する約50,000人の読みに障害のあるカナダ国民である(23)。CNIBの会員は1982年から1994年の間に倍増し、今後の人口の推移をもとに2015年までに125,960人に達するであろうとの予測がなされている。この予測を一つの裏付けとして、CNIBはサービス展開を図っている。
VISUNET: CANADA
 1997年からCNIB図書館はインターネットを利用したネットワークプログラムVISUNET: CANADAを推進してきた。VISUNET: CANADAは、インターネットOPACであるVISUCAT、インターネットにより全文データへのアクセスを提供するVISUTEXT、電話及びインターネットにより新聞・雑誌へのアクセスを提供するVISUNEWSの三つのサービスから構成される(24)。
 このネットワーク計画を更に充実させるため、1999年10月CNIB図書館5ヵ年計画《Independence: It’s About Choices》が発表された。その中で、
 ・出版物のうち、視覚障害者がアクセス可能なものは3%に満たないこと、
 ・視覚障害の児童は5歳になるまでほとんど図書館を利用していないこと、
 ・視覚障害者の資料へのアクセスはそうでない人の3分の1以下であること、
の課題が指摘され、2005年までの5年間で、視覚障害者に対して、
 ・更なるネットワーク接続
 ・自立的かつ幅広い情報利用
 ・多様なフォーマットによる情報の提供
を実現することが目標とされた(25)。具体的にはVISUNET: CANADAの充実である。その一環として、より幅広い資料提供を目指し、CNIBは1999年より、同一の図書館システムを採用している英国盲人図書館(National Library for the Blind: NLB)と資料共有の提携関係を築き、VISUCATからNLBの点字資料の所蔵情報アクセスを実現した。単に所蔵確認できるだけでなく、点字ファイルやテキストファイルを電子的に転送することも可能で、共同選書計画、共通ファイルフォーマットの採用、作成状況の情報共有を通じて、より包括的な協力関係を築きつつある(26)。
VISUCATの検索性
 VISUCATからはCNIB図書館の資料、NLBの資料、その他図書館の資料(NLCの資料も含まれる)を同一インタフェースで検索することができる。資料種別の限定は書誌データのIDの頭に識別コードを付与することにより実現されている。例えばナレーション付きビデオの書誌データはDV90403、DAISY形態の図書はDC19466というようにコードと番号の組合せでIDが付与される。これを手がかりに、検索時にプルダウンメニューの中から求める資料種別を指定する。この機能を使用するためには同様のルールに従ったIDの付与が必要であり、VISUCATで検索できるすべての資料にこの機能が適用できるわけではない点で限界がある。
その他
 地域の図書館はCNIBの提携協力館となることにより、CNIB図書館の提供する様々なサービスを利用することが可能になる。サービスを提供する地域の規模によって年会費が課され、サービス基準合意書への署名が求められる。州によって参加の仕方は様々で、州内の各市の図書館システムごとに参加している場合もあれば、州のコンソーシアムを通じて参加している場合もある(27)。一方、提携協力館となった地域の図書館からは、アクセス技術が複雑であること、利用が少ないためにサービス提供についての合理的理由が見つけられないこと、等の課題も寄せられ、CNIB図書館はこうした相談にもこたえている。
 より広範囲に効果的にサービスを提供するに当たって蔵書のデジタル化は不可欠である。CNIBはその作業を急ぐべく、2002年7月、3,300万ドル規模のプロジェクトを開始した。このプロジェクトは、蔵書の倍増、世界初の視覚障害者のための図書館ポータルの構築、カナダ最大の録音資料アーカイブなどの計画を含んでいる。コンピュータ業界を含む民間企業や財団等からの寄付の現時点における到達額は820万ドルであり、目標額の約25%となった(28)。今後の目標額達成に要する時間には、プロジェクト成果の訴求度や国内景気の動向が大きな影響を及ぼすと考えられる。
2.2.3 カナダにおける視覚障害者等図書館サービスの現状と特徴
 全国サービスを目的としたデータベースの公開については前項で既に述べた。ここではDAISYの導入状況及びウェブ・アクセシビリティの確保への取組について述べる。
 カナダ・デイジー・コンソーシアム(Canadian DAISY Consortium)(29)に参加している最大の機関はCNIBである。CNIB図書館は現在DAISY形態の図書を、アナログデータからの変換だけでなくオリジナルでも作成している。現在提供されているのは、「カナダ遺産ミレニアム電子コレクション」(Canadian Heritage Millennium Digital Collection)(30)のうちの300タイトルで、英仏両国語で利用可能である。貸出しは行っていない。まだ実験段階でもあり、ウェブ上でのデモンストレーションやサンプルデータの提供によって、利用結果のフィードバックを収集し、その結果分析を通じて、貸出し方法等についても検討予定である。
 冒頭でも述べたように、カナダ連邦政府各部署は2004年までに、政府が提供するすべてのウェブサイトに全国民がアクセスできるよう、整備が義務付けられた。更に各州の地方政府もこれにならう必要が生じた。整備を進めるに当たりカナダ政府は『管理者のための複数フォーマット作成ガイド』(Manager’s Guide to Multiple Formats)を公表して、作成するフォーマットごとに政府出版物へのアクセスを容易にするための方法、資料の作成から配布に至るまでの各プロセスを詳細に指示している(31)。図書館の提供物やウェブページについても同様の配慮が必要とされる。
[注]
(1)Canada’s International Record on Disability Issues. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(2)In Unison: A Canadian Approach to Disability Issues. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(3)電子政府の水準について国連公共経済行政局とアメリカ行政学会が190ヵ国を対象に実施した2001年調査の結果を2002年5月に発表しており、カナダは第6位であった(日本26位)。また別の調査で、人口当たりのインターネット普及率は世界第10位であった(日本16位)。
United Nations Division for Public Economics and Public Administration and American Society for Public Administration. Benchmarking E-government: A Global Perspective. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
総務省『情報通信白書平成14年版』PDF版, 2002, 6, (online), available from
, (accessed 2003-01-31).
(4)Industry Canada. Canada’s SchoolNet. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(5)Treasury Board of Canada Secretariat. Common Look and Feel for the Internet. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(6)「知覚に障害のある人」(perceptual disabilities)とは、言語、音楽、ドラマ、芸術の著作物を、もともとの形態では読んだり、聴いたりすることが不可能若しくは困難な人を指し、次の三つの場合を含むとされている。
(a)視覚、聴覚の重度若しくは全体的な障害の場合、あるいは焦点・視点の移動ができない場合、
(b)本を手に持つことができない場合、
(c)理解力にかかわる障害の場合
(7)ただし以下の場合は除かれる。
映画の著作物
大活字本の作成
当該代替資料が市販されている場合
このうち映画の著作物へのナレーションの追加及び大活字本の作成の例外規定については、NLCの施策として更なる議論を深め、修正を求めていくよう勧告がなされている。
Canadian National Institute for the Blind. News and Media: Review of Current Canadian Copyright Act, September 20 2001. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(8)カナダには、コミュニティ・アクセス・プログラム(Community Access Program: CAP)を始め、政府基金及び地域基金のプログラムが多数あり、それらによって必要な経費を補うことができる。
(9)Vancouver Public Library. Outreach Services. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(10)The University of British Columbia Library. Crane Resource Centre and Library. (online), available from ,
(accessed 2003-01-31).
(11)岩下恭士. 北米バリアフリー日記(4)クレーンリソースセンター. 毎日新聞ユニバーサロン. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(12)カナダ国立図書館は2002年カナダ国立公文書館との合併を発表した。
(13)IFLA. International Directory of Libraries for the Blind. 4th ed. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(14)CNIB Library. VISUNET CANADA‐Partners Program. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(15)National Library of Canada. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(16)深井耀子. ‘第6章 カナダ国立図書館多言語図書サービス’. 多文化社会の図書館サービス: カナダ・北欧の経験. 東京, 青木書店, 1992, 103-113.
(17)Task Force on Access to Information for Print-Disabled Canadians. Fulfilling the Promise: Report of the Task Force on Access to Information for Print-Disabled Canadians. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(18)現在印刷物の利用に障害を持つ人口は約300万人で総人口の約10%を占める。視覚障害という言葉を用いずに、「印刷物の利用に障害を持つ」と表現する背景には、高齢化問題がある。カナダにおいては2026年頃には5人に1人が高齢者となり、その高齢者の26%以上が視力に問題を抱えると言われている。
(19)Council on Access to Information for Print-Disabled Canadians. Workplan. Revised May 2002. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(20)The Canadian National Institute for the Blind. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(21)CNIB図書館はケベック州については基本的にレフェラル・サービスの提供のみを行っている。
(22)Paterson, Shelagh. Placing Library Service for the Blind in the Community. Last Updated 2002-02-28. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(23)CNIBの会員資格は重度の視覚障害を持つ人に限られているが、CNIB図書館はVISUNET CANADAのサービスを受ける資格のある対象をカナダ著作権法の第32項(1)に規定される「知覚に障害のある人」とした。VISUNET CANADAを通じた地域の図書館との連携の必要性によるものと思われる。ここには視覚障害だけでなく、身体障害、学習障害の人々も含まれる。NLCとCNIBが共同で作成した『約束の達成』においても、CNIB図書館は学習障害の人々にも門戸を開くべきであるとの勧告が示されていた。CNIB図書館のすべての資料はVISUNET CANADAの利用資格のある人であればだれでも利用可能であるとの文言も明記されている。ただし通常カナダ郵便公社法で郵送料無料の適用を受けることができるのは、盲人規定(Blind Persons Regulations)によって盲人及び視覚障害者と認められた者の利用に供するために送付する場合のみである。
(24)CNIB Library for the Blind. CNIB Library: VISUNET CANADA: Partners Program. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(25)CNIB Library for the Blind. CNIB Library: General Information: Independence: It’s about choices: The CNIB Library for the Blind’s Strategic Vision. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(26)CNIB Library for the Blind. CNIB Library: What’s New: NLB Partnership. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(27)最近になってブリティッシュ・コロンビア州政府は、民間作成の資料が増えていることを理由に、録音図書の作成への基金を取りやめることを発表し、物議をかもしている。
British Columbia Library Services Cancels Talking Book Production. IFLA/SLB Newsletter. 2002(1), 2002, 8-9. (online) available from , (accessed 2003-01-31).
(28)CNIB. News&Media: For Immediate Release: Canadian National Institute for the Blind Kicks Off $33 Million Campaign to Develop World’s First Digital Library for the Blind. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(29)Canadian Daisy Consortium. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(30)「カナダ遺産ミレニアム電子コレクション」は、カナダの視覚障害者のための図書館情報サービス・コンソーシアムが2001年3月より開始しているプログラムで、過去500年間にわたるカナダの小説、詩などの作品をDAISY、電子点字を含む複数の形態で提供する。現在約500件のデータが蓄積されている。カナダ国内のいくつかの出版社が、このプログラムでの利用のためにデジタルファイルの提供に協力している。
CNIB Library for the Blind. Library: What’s New: Canada Millennium Partners Program. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(31)ウェブのアクセシビリティのほか、録音資料、点字資料、コンピュータディスク、ナレーション付きビデオ、大活字、字幕付き資料、手話表示についての基準も示している。ウェブ・アクセシビリティについては、W3CのWAIのガイドラインに部分的に準拠している。
Manager’s Guide to Multiple Formats. Last Updated: 2002-06-14. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
第3節 スウェーデン
2.3.1 スウェーデンにおける視覚障害者等を対象とした図書館サービスの提供体制
(1)スウェーデンの視覚障害者及び図書館関連施策の概要
 スウェーデン(スウェーデン王国(Kungarike Sverige))は、2002年7月現在、面積は約45万平方キロメートル(日本の約1.2倍)、人口は約886万人(日本の約14分の1)、首都ストックホルム(Stockholm)の人口は約74.4万人である(1)。
 スウェーデンには一次自治体として住民サービスにかかわるあらゆる行政を担うコミューン(kommun)と二次自治体として保健・医療を中心に広域レベルの行政を行うランスティング(landsting)の2種類の地方自治体がある。また、広域レベルでの国の機関としてレーン(laen)があり、その執行委員会がレーン内の国の機関の業務を調整している(2)。レーンとランスティングの区画はほぼ重なり合っているが、スコーネ(Skane:aはリングの付いたa)及び西イェータランド(Vaestra Goetalands)はレーンと同格の権限を持つランスティングでレギオン(region)と呼ばれている(3)(4)。ゴットランド(Gotland)は、ランスティングに属さずレーンにのみ属している。2001年9月現在、コミューンが289、ランスティングが18、レギオンが2、レーンが21となっている(5)。
 次に、本調査に関連するスウェーデンの法律及び施策について述べる。
社会サービス法
 スウェーデンの福祉の基本法は、社会サービス法(Socialtjaenstlag(1980:620))(6)(7)である。社会サービス法は、保育、高齢者・障害者福祉、生活保護、麻薬・アルコール中毒などの福祉に関する法律を統合して1980年に制定され、1982年に施行された(8)。社会サービス法は、細かい規定を持たないフレーム法の性格を持ち、障害者の日常生活、社会参加、ニーズに適した住宅等を基本的に保障している(9)。
機能障害者を対象とする援助及びサービスに関する法律
 社会サービス法制定後のスウェーデンでは、長らく障害者のみを対象とする特別立法は行われてこなかった。しかし、1991年に、障害者政策に関する1989年委員会(1989 ars handikapputredning:arsのaはリングの付いたa)から、知的障害者や重度障害者の自立した生活や社会参加の遅れ並びに社会サービス法による権利保障の不十分さが指摘され、障害者の権利を守るためには特別立法も辞さないとの見解が表明された(10)。これを受けて、1993年に機能障害者を対象とする援助及びサービスに関する法律(Lag(1993:387)om stoed och service till vissa funktionshindrade)(11)(12)が制定され、翌年施行された。機能障害者を対象とする援助及びサービスに関する法律は、社会サービス法を補完し、重度障害者のニーズや権利が社会サービス法だけでは十分に保障されない場合にそれを保障するものである(13)。このような特別法を制定しても、一般法の中に障害者関係の規定を盛り込みながら成熟させるという路線は変わっていない(14)。
 この法律は、第1条で機能障害者を次のように定義している。
1.知的障害、自閉症、又は自閉的症状にある者。
2.成人に達した後、身体疾患又は外傷に起因する相当程度の恒久的な知的障害になった者。
3.上記以外の身体的又は精神的機能の障害が継続する者のうち、当該の機能障害が重く、日常生活に相当程度の困難をもたらし、結果として援助及びサービスを必要とする者。ただし、通常の高齢化による機能障害は除く。
 「当該の機能障害が重く、日常生活に相当程度の困難をもたらし、結果として援助及びサービスを必要とする者」という記述は、日本の障害者基本法第2条の「身体障害、精神薄弱又は精神障害があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」という定義と大きくは変わらない。最後に「結果として援助及びサービスを必要とする者」という表現があること、この法律で視覚障害などの個々の障害について定義していないことから、この法律では、医学的な意味での障害だけでなく、社会的な意味で障害に着目していることが分かる。知的障害者が定義の中心となっているのは、この法律が知的障害者福祉法を母体とするためである(15)。従来からの対象である知的障害者を基本に対象の拡大を図り、自立を目指す身体障害者まで含め、「機能障害者」としている。
 また、同時に施行された介護手当に関する法律(Lag (1993:389) om assintansersaettning)(16)(17)により、介護に対する公費助成が確立された。これら二つの法律は、障害者の自立した生活に不可欠な援助やサービスを具体化し、コミューンとランスティングの責任を明確にした(18)。
 スウェーデンの障害者政策を支えるのは、「障害とは、個人と、その個人を取り巻く環境とのかかわりの中で生じてくる問題である」という、障害を環境との関連で捉える概念である(19)。障害を個人の特徴として見るのではなく、機能障害者がアクセシブルではない環境に直面したときに発生するものとして見るのである。これは、障害当事者の運動によって生まれた考え方である。このような障害観は後述する録音図書の利用者の層が広いことにも影響していると思われる。 
図書館法
 スウェーデンでは1905年に図書館法が成立し、改正を重ねていた(20)(21)(22)。スウェーデンの図書館の礎を築くのに図書館法は大きな役割を果たしていた。しかし、1965年に図書館法の新しい法案が準備されたものの、議会には提出されず、図書館法は廃止されてしまった。この時期は、地方自治体も国も、図書館の設立は法で規制するものではなく、地方自治体が自主的に建設し、運営すべきであるという意見が大勢を占めていたため、図書館法廃止に至ったのである。
 図書館法を廃止しても、補助金による政府の援助は必要であった。そのため、1966年から図書館システムを作る意思はあるが、そのための資金がない自治体のために特別補助金を出すようになった。これによって、公共図書館建設が促進された。
 また、法制化をめぐる議論はずっと続けられていた。1970年代は公共図書館の地域格差が争点となった。1980年代は図書館の水準のばらつきは少なくなったが、財政難のため地方自治体が無料原則を廃止する動きを見せたため、図書館法の制定を求める意見が再び高まってきた。議会は、地方自治体が有料制を導入することはないため、図書館法の制定の必要はないと主張した。しかし、地方自治体も政府も公共部門を削減しようとしていた。地方自治体や政府は、公共図書館をコミューンが管轄する最も重要な文化及び情報活動の責任機関と考えていたが、高齢者介護のための膨大な経費の増加という問題も抱えていた。高齢者福祉の水準を下げるべきではないという国民の意見は揺るぎがないものであるため、福祉予算を削ることができなかった。その分、文化予算が削られることになり、図書費の削減が一般的な傾向となった。図書費の削減は公共図書館システムの発展を阻害した。当時の公共図書館は、コミューンが管轄する任意設置機関にすぎなかったため、財源削減の影響を大きく受けることになった。このことは深刻に受け止められ、図書館法に反対していた社会民主党が賛成の側に転じた。
 一方、公共図書館の経費削減が進む中で、読書に障害のある人へのサービスが重要な課題となっていた。政府委員会は、障害者のメディアと情報へのアクセスについて規定した法律を制定することを提案した。読書に障害のある人へのサービスに関係する人々は、図書館法が印刷された本を読めない人々の情報アクセスの権利を規定することを期待した。
 1995年には文化委員会も政府に図書館法制定を提案した(23)。その提案に議会も賛成し、1997年1月1日、ついに図書館法(Bibliotekslag(1996:1596))(24)(25)が施行された。新たに制定された図書館法は、すべてのコミューンとレーンに図書館設置を義務付け(第2条、第4条)、貸出しの無料原則(第3条)を規定した。第8条では、公共図書館と学校図書館は、障害者、移民、その他のマイノリティのニーズに応じた特定の形式やスウェーデン語以外の言語の文献を提供することを義務付けた。財政上の困難が公共図書館の制度化を促進したのである。
著作権法
 文芸作品に関する著作権法(Lag(1960:729) om upphovsraett till litteraera och konstnaerliga verk) (26)は、第17条で視覚障害者等に対する複製を次のように規定した。
 だれでも文芸的出版物及び音楽的作品を点字で複製することができる。
 政府が特定の場合において決定した図書館や組織は、視覚障害者及び書かれた作品を読むことができない他の障害者に貸し出すために、文芸的出版物を、作品の朗読あるいは他の録音からのコピーによって、複製することができる。ただし、市場に出された録音作品については、そのような複製を行ってはならない(27)。
 「視覚障害者と書かれた作品を読むことができない他の障害者」の部分は、法律成立時の1960年は「盲人とその他の重度身体障害者」となっていた。1961年に制定された著作権法の適用規定の7条、8条により、「視覚障害者と重度身体障害者とは、本が読めないほど視力が弱い人々、手や腕に機能障害があるために一般に市販されている本が読めない人々である」とされた(28)。
 視覚障害者以外のグループから録音図書の利用を求められるようになったのは、簡便なカセットプレーヤーが開発されて、録音図書が利用しやすくなった1970年代である。
 1973年に学校教育庁は、録音図書の貸出し対象枠を拡大するための調査を行った。調査の必要経費は、学校教育庁と文化委員会が負担した。この調査には、失語症者、ディスレクシア、知的障害者、行動障害者、回復期患者、長期療養者、精神障害者が参加した。調査は、1973年の春から1976年の1月まで、3館のレーン図書館、1館のコミューン図書館、2館の病院図書館で、スウェーデン盲人協会(De blindas foerening:DBF)の図書館(29)のゆっくり朗読された録音図書を用いて行われた。調査の結果、録音図書は、読むことへの関心を高めることと、障害者と周囲の社会とのコンタクトを密接にするためのメディアとして非常に有効であることが明らかになった。
 録音図書の貸出し対象枠は、1977年に拡大されたが、著作権法はすぐには改正されず、調査結果に関して国とスウェーデン作家協会が合意する形で利用者の拡大が行われた。条文が改正されたのは、1990年代に入ってからである。
 現在、「書かれた作品を読むことができない障害者」として、録音図書を借りる権利があるのは、1.視覚障害者、2.行動障害者、3.失語症者、4.知的障害者、5.精神障害者、6.ディスレクシア、7.難聴者(聴覚器官のトレーニングのため)、8.長期療養者、9.回復期患者、であり(30) 、スウェーデンの総人口の約4%と算出されている(31)。これらの人々が録音図書を借りるために障害者であるという医学的な証明を取る必要がない点が米国のNLSのシステムと異なる点である。
 「録音で複製する権利を持つ図書館や組織」として、録音図書の製作を許可されているのは、スウェーデン国立録音点字図書館(Talboks-och punktskriftsbiblioteket:TPB)、レーン図書館、図書館サービス株式会社(Bibliotekstjaenst AB:BTJ)、視覚障害者連盟(Synskadades Riksfoerbund:SRF)、SRF録音点字製作所(SRF Tal & Punkt AB)だけである(32)(33)。録音図書の製作には著者の許諾は必要ないが、製作の前にその旨を知らせなければならない(34)。製作者は、年に一度スウェーデン作家協会に録音した図書、コピー数、録音時間を知らせる。この数字をもとにして、作家協会は、この目的のために利用できる「図書館の補償金」(biblioteksersaettning)を配分する。
 スウェーデンには、録音図書だけでなく、一般の図書の貸出しについても著者に補償金を支払う公貸権制度がある(35)。1954年に議会で図書館の補償金の制度が可決され、1955年から、国が公共図書館・学校図書館での貸出し数に比例して、スウェーデン著作者基金に補償金を支払い、作家がその配分を決定するという形態が採られている。このように図書館で貸し出すすべての本について著者に補償金を払っているため、録音図書も同じ扱いになっている。
 1.著作権法が視覚障害者以外の書かれた作品を読むことができない障害者にも録音図書の利用を認めていること、2.図書館における図書の貸出しに応じて著者に補償金を支払う公貸権制度があり、録音図書の製作に対しても補償金が支払われていること、はスウェーデンの著作権制度における大きな特徴である。
 著作権と読書権のバランスを取る方法は2種類あると考えられるが、録音方法や再生機器を特殊なものにするというクローズドシステムを採ってきた米国とは異なり、スウェーデンは誰もが利用できる形態で製作した録音図書を、調査を行うことによって、著作権者の合意を得ながら視覚障害者や重度身体障害以外のニーズを持つ利用者も利用できるようにしてきた(オープンシステム)。著作権法の条文もそれを反映し、製作機関を図書館や組織に限定しているものの、製作形態は限定しない法律になっている。
(2)スウェーデンの視覚障害者等に対する図書館サービス提供体制
 スウェーデンの視覚障害者等に対する図書館サービスは、三つのレベルの図書館の協力によって行われている。特に録音図書の提供体制は、スウェーデンモデル (Den svenska modellen) と呼ばれている。三つのレベルとは、TPB、19館(36)のレーン図書館、289館のコミューン中央図書館とその分館である(37)。地域の利用者への直接貸出しはコミューン図書館、レーン内のコミューン図書館への貸出しはレーン図書館、録音図書の製作、網羅的収集、公共図書館への協力貸出しはTPBが行っている。このような3レベルの図書館の役割分担と相互協力により、録音図書業務も一般の公共図書館が元から持っていた分館、ブックモビル、配本所などのサービス網を利用して行われている。
 このモデルを支えるスウェーデンの公共図書館は、次のような機構になっている(38)。レーン図書館、学校図書館は、単独の建物を持たず、コミューン図書館が兼ねている。これは、限られた資源を効率的に活用するためであろう。289館のコミューン中央図書館のうち、19館がレーン図書館、3館が貸出しセンター兼保存書庫を兼ねている。レーン図書館の業務には専任の図書館員がレーンの費用で配置されている。コミューン図書館の分館は約1,700館あり、そのうち500館は基礎学校に、200館は高等学校に置かれている。また、分館は、一部の病院の中にも置かれている。多くが宅配サービスを行い、図書バスを運行している。職場、病院、老人ホーム、デイ・センターなどには、配本所がある。宅配サービスは、「本がやってくる」(Boken kommer)と呼ばれている。長期間病床にある人、身体障害者、高齢者その他何らかの理由で自力で図書館に来ることができない人々からリクエストを受け、月に1度5冊ほど入った本箱を宅配するシステムになっている。このような公共図書館が元から持っていたシステムにTPBの録音図書サービスが加わったのである。
 このモデルは、次の段階を経ることによって、TPBと公共図書館の間で完全に録音図書の業務の役割分担ができるようになって完成したものである。
1.TPBと公共図書館の協力の開始(1960年代)
2.公共図書館の録音図書の貸出しが全体の70%を占める(1980年代)
3.録音図書の個人貸出しは、基本的に利用者の近隣の公共図書館が行う(1986年〜)
 スウェーデンモデルの実現により、専門技術を必要とするサービスをTPBが行い、一般利用者へのサービスと同じサービスを公共図書館が行うようになった。また、録音図書の利用者は、地元の公共図書館での利用が可能になり、録音図書サービスだけでなく、公共図書館の一般的なサービスも受けられるようになった。スウェーデンでは、録音図書・点字図書・大活字図書は郵送無料であるが、多くの利用者は直接地域の図書館を利用する方を好む傾向がある。
 スウェーデンモデルを支える機関としては、公共図書館の他に図書館サービス株式会社(BTJ)が挙げられる。BTJは、スウェーデン図書館協会が株式の7分の5、スウェーデン地方公共団体協会が7分の2を保有している株式会社である(39)。運営委員会には政府からの代表も交え、図書館用書籍の一括仕入れ、製本、配達、図書館付属品等の販売を行っている。また、スウェーデン語を母語としない国民にも良質の図書が行きわたるように、20ヵ国語の図書を取り揃えている。このように、BTJは出版業界と図書館を仲立ちする立場にある。録音図書に関しては、BTJはTPBのマスターテープを無料で借りて、公共図書館に販売する録音図書を製作する権利を持っている。この録音図書販売サービスは、1960年から始められている。そのため、公共図書館は、録音図書サービス開始の初期の頃から、独自の蔵書を増やすことができた。公貸権の場合と同様にできる限り一般図書と録音図書を同じ体系の中で扱おうとしていることが分かる。
 BTJは、利用者のニーズへの対応と良質の図書の選択に留意し、様々な分野から図書を選択することを目標として独自に録音図書の製作も行っている(40)。主として一般文学分野、基礎学校・高等学校の教材、地方独自の文学作品などを製作している。BTJは、公共図書館で貸出し件数が多くなりそうな録音図書を見込んで製作を行っており、公共図書館も貸出し件数が多い録音図書をBTJから購入する。
 一方、TPBは、タイトル数の増加を追求し、網羅的に録音図書を収集しているため、貸出し回数の少ない専門的な録音図書、特に、学生や研究者向けの録音図書も所蔵している(41)。また、少数民族や移民などスウェーデン語を母語としない住民が多い国柄を反映して、スウェーデン語以外の録音図書が多い特徴がある。所蔵している録音図書の言語は50種類ほどにもなる。
2.3.2 スウェーデン国立録音点字図書館の視覚障害者等図書館サービス支援機能
 TPBは、ストックホルムにある国立の録音点字図書館である(42)。TPBの前身は、盲人点字協会が1892年に点字図書の製作・貸出しを目的として設立した視覚障害者図書館である。1980年から文化省及び教育省管轄の録音点字図書館となり、現在に至っている。視覚障害者図書館は、慈善事業団体から視覚障害者団体に引き継がれ、最後には国の機関の録音点字図書館へと変わってきた。その過程で、扱う資料は、点字図書のみから徐々にアナログの録音図書、Eテキスト図書(e-text book)及びDAISY録音図書へ拡大し、それに伴い、利用者も点字使用者のみから視覚障害者、重度身体障害者、読書に障害のある人へと拡大してきている。
 TPBは、視覚障害者等の読書に障害のある人に地域の図書館と共同で文献を提供することを目的とし、1.録音図書業務、2.点字図書業務、3.学生用教材業務、4.研究開発業務、を行っている。これらの業務は、製作部門、貸出し部門、教材部門の三つの主要部門と情報・研究開発活動を行う管理・情報部門の4部門で行われている。
 TPBは、上記の体制で次のような業務を行っている。
・地域の図書館を通じた録音図書の提供
・国内の録音図書製作点数の増加への貢献
・点字図書の貸出しと販売
・盲聾者への点訳サービス
・読書に障害のある大学生用の教材の整備
・点字図書・録音図書に関する助言・情報提供
・機器の開発・新技術の導入
・情報検索データベースHandikatによる書誌情報の提供
 TPBが目標としているのは次の3点である(43)。
1.高い提供率を維持するために、情報のための読書(information reading)と趣味の読書(pleasure reading)(44)の両方に対応できるような適切な蔵書を構築すること。
2.新しい読者を開拓すること。
3.録音図書が多くの障害者にとって有効な読書法であるということに留意し、普及に努めること。
 情報のための読書と趣味の読書の両方に対応できるように努めることはTPBの大きな特徴である。学生用教材部門が存在するのはこのためである。
 また、録音図書の製作・収集は、年間に出版された一般図書のうちの25%を目標として行われている(45)。25%を目標にするのは、1974年の学校教育庁とTPBの前身であるスウェーデン盲人協会による図書館の調査から、一般の読者に好まれ、技術的に録音可能な図書がスウェーデンの出版物全体の約25%であることが明らかになったためである(46)。
 資料の所蔵概況についてであるが、録音図書は、2002年8月現在75,000タイトルを所蔵し、毎年約3,000タイトルを製作している。DAISY録音図書は、2002年10月現在約9,000タイトルを所蔵している。点字図書は、2002年現在10,000タイトルを所蔵し、毎年約400タイトルを製作している。
2.3.3 スウェーデンにおける視覚障害者等図書館サービスの現状と特徴
 ここでは書誌情報の提供と録音図書のデジタル化について述べる。
 TPBは、1997年から読書に障害のある利用者のためにBTJと共同開発したHandikatを情報検索データベースとして提供している(47)。収録されているのは、TPBの所蔵する録音資料のカセット版とDAISY版、点字資料、Eテキストの書誌データである。BTJのデータベースBURKにデータ登録されている手話ビデオもHandikatから検索することができる(48)。利用者も図書館も検索が可能であるが、録音図書をネット上で請求できるのは図書館だけで、利用者は地域の図書館から利用することになる。点字図書は、利用者も図書館も請求することができる。ネット請求を行うにはID登録が必要である。TPBのウェブサイトはスウェーデン語版と簡略スウェーデン語版(49)と英語版があるが、Handikatの検索画面はスウェーデン語版しかない。したがって、資料のタイトルの中などに英語があれば検索可能だが英語はキーワードとしては使えない。
 スウェーデン王立図書館が公開する総合目録LIBRISは、研究図書館を中心とした国内の300の図書館、400万タイトルのデータを収録する(50)。このLIBRISデータ収録図書館の中にはTPBも含まれる。しかし、LIBRISの検索結果表示画面には注記に当たる部分がなく、資料形態等の表示の仕方に課題が残る。
 次に録音図書のデジタル化についてであるが、TPBは、DAISYが世界標準となる以前の1988年からデジタル録音図書の研究開発を開始しており、DAISYの世界標準化においても、初期からのDAISYコンソーシアムの会員として重要な役割を果たしてきた。それだけに、DAISY録音図書のコレクションの構築も進んでおり、2002年10月現在、約9,000タイトルを所蔵している。この多くがアナログ録音図書から作り変えたものである。すべての所蔵録音図書をDAISY化し、2005年からはDAISY等のデジタル録音図書のみを貸し出すことを目標としている。
 DAISY録音図書の製作・提供は、従来のアナログ録音図書のシステムに乗っかる形となっている。利用者は、地元の公共図書館からDAISY録音図書を借りることができ、公共図書館はTPBやBTJにリクエストを出してDAISY図書の蔵書を構築することができる。DAISYの再生機器(VictorとPlextalk)もTPBから公共図書館に貸し出されている。
 TPBは、近年二つの大きなキャンペーンを行ってきた。一つが1996年8月から1998年12月まで行われたディスレクシアを理解するためのキャンペーン(The Swedish Dyslexia Campaign)である(51)。このキャンペーンを行った結果、子供、教師、ディスレクシアの大人などが新たに公共図書館で録音図書を利用するようになった。公共図書館職員も録音図書の利用者は視覚障害者だけではないことを理解するようになった。TPBにはディスレクシアの子供の両親や教師の問い合わせが増えた。録音図書のイメージは、「視覚障害者や高齢者のための本」から、「若者から高齢者までの様々な読書に障害のある利用者のための多様な本」に拡大した。
 もう一つのキャンペーンが2001年から2004年までのDAISYキャンペーン(DAISY Campaign)である。このキャンペーンの目的は、DAISY録音図書への移行を促進すること、地方自治体や政府機関は、録音図書の利用者が読むことのできる新しい録音図書を作成するために、デジタル録音図書の再生機器やコンピュータを購入することに従事する必要があるということを強調することである。
 プロジェクトとして、TPBと2館のレーン図書館で試験的に行っているのが、録音図書の代替配信システムである。従来のように物流に頼るのではなく、TPBがブロードバンド配信した録音図書をレーン図書館が必要なタイトル分ダウンロードして、CD-Rに焼いて提供するという方法である。同様のシステムを大学生の利用者や大学図書館に対しても行う計画がある。“streaming talking books”と題して、ダウンロードせずに直接インターネットから聴くという形の録音図書のテストも行っている。
 TPBは、視覚障害者だけでなく、あらゆる読書に障害のある人への利用に対応するために、スピードや読み方の異なる様々な種類の録音図書を製作してきた。DAISYシステムも視覚障害者のための録音図書から近年は他の読書に障害のある人の利用も配慮した方向でバージョンアップを図っている。DAISYの開発の方向性とTPBのサービスの方向性が相乗効果を生み、より良い録音図書サービスが展開されていくことが期待できる。
 利用者層を拡大させていくオープンシステムを採用したのはスウェーデンの特徴であるが、デジタル環境もまた、利用者層を拡大させていく可能性を持っている。しかし、オープンシステムは、著作権者を巻き込むことによって初めて実現するものであるため、実際は各国の事情により、クローズドシステムが選択されることが多い。デジタル環境との相互作用を生みやすいシステムを採るスウェーデンモデルはこの点でも注目に値する。
[注]
(1)外務省.スウェーデン王国−基礎データ. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(2)訓覇法子,藤岡純一.スウェーデンの社会福祉.世界の社会福祉1:スウェーデン・フィンランド.仲村優一,一番ヶ瀬康子編.東京,旬報社,1998,298-302.
(3)Gustafsson, Agne. ‘補遺 1996年以降のコミューンとランスティングに関する重要な変化’.スウェーデンの地方自治.穴見明訳,岡沢憲芙監修.東京,早稲田大学出版部,2000,267-268.
(4)2000年度欧米主要国における高齢者・障害者の移動円滑化に関する総合調査委員会.欧米主要国における高齢者・障害者の移動円滑化に関する調査報告書.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
「イェーテボリ市のSTS(Goeteborgs Stad Faerdtjaensten)」の節でレギオンに関する記述が詳しい。
(5)The Swedish Institute. Fact Sheets on Sweden : Local Government in Sweden. (online), Available from , (accessed 2003-01-31).
レギオンをランスティングとして数えるか、別に数えるかは文献によって異なる。ここでは、スウェーデン文化交流協会(Svenska institutet)が発行しているファクトシートに従い、レギオンをゴットランドの場合と同様にランスティングとは別に数えることとした。
(6)Socialtjaenstlag(1980:620).(online), available from , (accessed 2003-01-31).
スウェーデンの法令は、Notism社のRaettsnaetetで検索することができる。法令名の後の数字は、スウェーデン法令集(Svensk Foerfattingns Samling:SFS)の掲載番号であり、法令を引用する場合にはこの番号が使われる。
スウェーデンの法令資料・議会資料の検索方法については、
国立国会図書館法令議会資料室.’スウェーデン/Kingdam of Sweden’. (online), available from , (accessed 2003-01-31).が詳しい。
(7)スウェーデンの障害者政策[法律・報告書]:21世紀への福祉改革の思想.二文字理明編訳,東京,現代書館,1998,193-218.
(8)山井和則,斉藤弥生.’17章 高齢者・障害者福祉’.スウェーデンハンドブック.岡沢憲芙,宮本太郎編.東京,早稲田大学出版部,1997,226.
(9)前掲(2),272-273.
(10)前掲(7),62.
(11)Lag(1993:387)om stoed och service till vissa funktionshindrade.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(12)前掲(7),173-181.
(13)前掲(2),273.
(14)前掲(7),11.
(15)前掲(7),171.
(16)Lag(1993:389)om assistansersaettning.(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(17)前掲(7),182-186.
(18)前掲(8),238.
(19)The Swedish Institute. Fact Sheets on Sweden : Disability Policies in Sweden. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(20)Thomas,Barbro.Sweden.Scandinavian Public Library Quarterly.27(1),1994,27-34.
(21)Thomas,Barbro.’スウェーデンの図書館法’.白夜の国の図書館 Part2.大島幹子訳.東京,図書館流通センター,1996,194-197.(LPDシリーズ,7).
(22)フォン・オイラーシェルピン三根子.’6章 図書館行政’.スウェーデンの社会.東京,早稲田大学出版部,1994,121-141.
スウェーデンに図書館法がなかった30年間については、文献(20)の内容を中心に、文献(22)の内容を補足して記述した。文献(21)は文献(20)の翻訳文献である。
(23)Thomas,Barbro.Sweden joins the Library Law Club at last. Scandinavian Public Library Quarterly.30(4),1997,9-12.
(24)Bibliotekslag(1996:1596).(online), available from , (accessed 2003-01-31).
(25)前掲(23),11-12.
(26)Lag (1960:729) om upphovsraett till litteraera och konstnaerliga verk. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(27)第17条の訳は、スウェーデン語の条文とTPBから送られてきた英語の条文、そして、田中邦夫.著作権法と障害者.調査と情報,(334),2000,1-15. の「表2 活字に対する代替的形態によるアクセスに関する各国の著作権規定の概観」を参考に作成した。視覚障害者のための点訳・録音等の各国の著作権法での扱いは、田中が参考文献としているRoyal National Institute of the Blind. ‘Copyright laws and the rights of blind and partially sighted people : A review of copyright legislation as it affects access to the written word through alternative formats’. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
が詳しい。
(28)Utbildningsdepartmentet,Socialdepartmentet,Bostadsdepartementet.Regeringens propsition 1976/77:87:om insatser foer handikappades kulturella verksamhet.Utbildningsdepartmentet,Socialdepartmentet,Bostadsdepartementet,1977,19,75-77.
1977年に教育省、社会省、住宅省によって提出された『障害者の文化活動の推進に関する提案書』である。
(29)TPBの前身の図書館である。
(30)Bergman,Lena.Projects of talking books:for students with reading impairment.Scandinavian Public Library Quarterly.28(2),1995,28.
(31)Talboks-och punktskriftsbiblioteket.Verksamhetsberaettelse.1994/95.Stockholm,Talboks-och punktskriftsbiblioteket,1996,2.
(32)新井敬二.スウェーデンにおける録音図書サービス.図書館雑誌.85(3),1991,129-130.
(33)Skoeld,Beatrice Christensen.’Is there need for repository libraries for the blind and other print handicapped people?’.Solving collection through repository strategies :proceedings of an International Conference held in Kuopio,Finland,9-11 May 1999.Connolly,Pauline ed.Wetherby,IFLA Offices for UAP & International Lending,1999,171.
(34)Cahling,Ulla.The supply of books to the blind and partially sighted in Sweden.Scandinavian Public Library Quarterly.3(2),1970,84-95.
(35)白井静子.スウェーデンの公貸権.みんなの図書館.(199),1993,52-55.
(36)レーンの数は21であるが、ゴットランド・レーン(Gotlands laen)には、ゴットランド電子図書館(Gotlans elektroniska bibliotek)のみがあり、レーン図書館は存在しない。また、西イェータランド・レーン(Vaestra Goetalans laen)は、西イェータランドレギオン図書館(Regionbiblioteket iVaestra Goetalan)があり、レーン図書館は存在しない。したがって、レーン図書館の数はレーンの数より二つ少ない19である。
レーン図書館数の裏付けは、INETMEDIA.’Folkbibliotek i Sveriges alla laen’. Vaelkommen til INETMEDIA. (online), available from , (accessed 2003-01-31).で取ったが、これによるとコミューン数は292、コミューン中央図書館数は281ということになる。文献(3)によると、コミューンは増加傾向にあり、レーンは合併により減少傾向にあるため、現在コミューンは289よりも増えている可能性が高い。しかし、今回は、文献(5)の2001年9月よりも新しいデータでコミューン数を明記したものを見つけることができなかったため、文献(33)の通り289のままとした。
(37)前掲(32).
(38)前掲(22),124.
(39)前掲(22),137.
(40) Talbokskommitten.Talboecker:utgivning och spridning.Utbildningsdepartmentet,1982,16-17.(SOU 1982:7).1982年に録音図書委員会によって出された報告書『録音図書:出版と普及』である。(テキスト版補足:Talbokskommittenのeには鋭アクセントが付く。)
(41)Gustavsson,Sten.Talking book in Sweden:A growing possibility for disabled readers.Scandinavian Public Library Quarterly.25(3),1992,16.
(42)Talboks-och punktskriftsbiblioteket. TPB : The Swedish Library of Talking book and Braille. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
主に参照したのは英語版のため、英語版の方のデータを記述した。以下参照ウェブサイトに関してはすべて同じである。
本稿の2.3.2の加筆及び2.3.3の作成は、主にこのTPBのウェブサイトを参考にして行った。
なお、本稿の2.3.1及び2.3.2は、主に、以下の論文より一部を引用し、修正・加筆・再構成したものである。
深谷順子.スウェーデン国立録音点字図書館の視覚障害者サービス:歴史・制度を中心に.日本図書館情報学会誌.46(1),2000,1-17.
深谷順子.スウェーデン国立録音点字図書館の視覚障害者サービス:サービス内容を中心に.日本図書館情報学会誌.48(1),2002,1-16.
(43)前掲(41).
(44)本稿第2章第1節米国で述べた専門的な読書(professional reading)と一般的な読書(recreational reading)と同じ意味である。ここでは、文献の通りに引用した。
(45)前掲(33),7, 172.
(46)前掲(28),21-22.
(47)Talboks-och punktskriftsbiblioteket. ‘Book catalogue Handikat’. TPB : The Swedish Library of Talking book and Braille. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(48)Bibliotekstjaenst. ‘About Handikat’. Bibliotekstjaenst. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(49)スウェーデンでは、読むことに障害がある人々、あるいは、スウェーデン語を使う習慣がこれまでほとんどなかった人達がニュースや文学にアクセスできるようにするために、「読みやすい図書」(laett-laesta boecker)の製作を推進している。TPBのサイトに「簡略スウェーデン語版」があるのもその一環である。
日本障害者リハビリテーション協会.’スウェーデン読みやすい図書基金−読みやすい図書センター’.障害保健福祉研究情報システム(DINF).(online) , available from , (accessed 2003-01-31).
(50)Kungliga Biblioteket. ‘LIBLIS : the union catalogue of Swedish libraries’.THE ROYAL LIBRARY : National Library of Sweden. (online), available from , (accessed 2003-01-31).
(51)Oennestam,Mona.’Changing an attitude is not done in a hurry’,New Library World.100(1148),1999,109,111-112.