カレントアウェアネス
No.149 1992.01.20
CA784
LCが目録作業の優先順位を見直し
米国議会図書館(LC)では,ほぼ10年ぶりに単行書・逐次刊行物・マイクロ形態資料についての目録作業の優先順位の見直しを行った。
今回の改訂に際して,外部の機関からも意見等が寄せられた。例えば調査研究図書館協会(Association of Research Libraries)では,加盟館に改訂案を配布し意見等を求めた。またそれ以外にも幾つかの団体が研究支援を行うとともに,研究者らによって行われた調査の成果も利用することができた。
では具体的に今迄の優先順位とはどこが異なっているのだろうか(前回1981年に決められた方針についてはCA155を参照)。前回と比較して,
- 英語で書かれた資料を優先する,ということは行わない
- 出版後にレベルアップされるCIP(post publication CIP)レコードについては,具体的な資料の内容に重点を置き,自動的に最優先順位とはしない
- 資料の優先順位の選定を行う職員を支援するため,資料内容の程度ないし性質を表すような“major publication”“substantial publication”といった語についての定義を行う
などがあげられる。もっとも最後の項目については,必ずしも明確に定義付けされていないようにも思われる。
また今回でも資料それ自体の調査価値や要求の高さ,といったものを順位決定の大きな要素としたことにかわりはない。
そこで,具体的にその順位付けの概要をみてみることにする。
ランク1. 議会関係者や行政府の長,或いは連邦最高裁の裁判官などの極めて高い地位にある人から要求された資料
CIP対象資料(ただし出版後のレベルアップについては個々の資料単位で具体的な内容を考えた上で順位を決定する)
ランク2. 参考調査用に指定された資料
モノグラフシリーズの初巻や,年鑑類等で受け入れられたもののうちの初号
稀覯書や特殊コレクションに指定されるような資料(81年の方針では500ドル以上と金額まで述べられていた)
高い調査価値を持つ資料(例えば連邦議会資料や学術書)
時事的な主要(substantial)出版物で,例えば系譜(前回はランク3に入れられていた),外国の政府刊行物で一次資料となるものなど
ランク3. 中程度の調査価値を持つ資料で,例えば学術書でも高い順位の与えられなかったものや,同じく高い順位の与えられなかった一般参考用図書,外国語の辞書,全ての米国地方史,州政府や主な外国の政府刊行物で一次資料以外のものなど(前回では他にも例えば稀覯書でも500ドル以下のものなどがこのランクに含まれていた)
ランク4. 低いレベルでの調査価値しか有しないもので,例えば児童書,大学レベルのテキスト,私家版(ただし外国,特に発展途上国のものはより高い順位にすることもありえる)など
アンソロジーや実用書,趣味の本,リプリント版などはほとんど上位には位置付けられない
これらを見てみると,必ずしも明確には区分できない場合も多いのではないかと思われる。例えば学術書では専門家の意見を聞く,といった対策もとれようが,それでも区分する人の主観によることが大きいのではないだろうか。また純文学などはどのランクに入れるのがよいだろう。
もっとも資料整理の優先順位について根本的な解決案があるとも思われない。どこで妥協するか,というところを考えてみることも必要ではないかと思われる。
飯倉 忍(いいくらしのぶ)
Ref: LC revises cataloging priorities and levels of cataloging. LC Information Bulletin 49 (25) 441-443, 1990
Library of Congress implements new cataloging priorities. LC Information Bulletin 40 (24) 207-209, 1981