カレントアウェアネス
No.118 1989.06.20
CA598
ユネスコの学術情報国際交流促進計画
−コアージャーナルのCD-ROM化を目指す
発展途上国の科学者・研究者のフラストレーションは大きくいって二つある。その一つは自国の国立図書館やドキュメンテーション・センターが購読している抄録誌・索引誌などによって読みたい論文を特定できても,論文そのものを自国内で手に入れることがむつかしいということである。例えばインドネシアの場合satisfaction rateは30%あまりと報告されているから,研究者が読みたいと思う論文10のうち7は国内では手にはいらないわけである。その場合,研究者たちは通常英国ボストン・スパにある英国図書館文献供給センター(BL DSC)に複写申し込みをし,3〜4週間後にようやく一次文献のコピーを手にすることができるわけである。第二のフラストレーションは,学術雑誌は多く欧米で発行されているため,発展途上国の研究者たち自身の研究発表の機会が少ないということである。学術論文はふつう著者がページ・チャージを支払い,レフェリーの審査を経て学術雑誌に掲載されるわけだが,発展途上国の研究者の関心はしばしば欧米学術雑誌が寄せる関心と異なっており,かといって国内に適当な学術雑誌が発行されているわけでもないので,彼らにとって発表の機会は少ないのである。
こうした不満解消の抜本策としてユネスコ情報事業計画局では,世界の学術雑誌中のコア・ジャーナル約4000誌の掲載論文のCD-ROM化と,発展途上国科学者の研究論文のCD-ROMによる発表計画に着手した。わが国が技術的にリードしていることもあり,この計画の国際センターをわが国におき,最終的には月産100枚(種類)のCD-ROMを発行していこうという大規模な計画である。配布は手初めにアジアの発展途上国を対象としているが,受益者は言うまでもなく発展途上国だけにとどまらない。国内関係機関,特に学術情報センター,JICST,国立国会図書館の協力が強くユネスコ側から要請されている。
松本慎二