CA604 – 図書館におけるCD-ROMデータベース国際会議―英米日の関係者が講演 / 山口和之

カレントアウェアネス
No.118 1989.06.20


CA604

図書館におけるCD-ROMデータベース国際会議−米英日の関係者講演

5月15日に東京大手町の経団連会館でユサコ株式会社の主催による「第1回CD-ROMデータベース国際会議(The Conference on the Use of CD-ROM Database for Libraries)」が開催され,国内外の関係者による講演と製品紹介および実演が行われた。

1)藤川正信(図書館情報大学)基調講演「CD-ROM:現状と問題点」

2)アニタ・ローリイ(Anita Lowry:コロンビア大学バトラー図書館)「学術図書館におけるCD-ROM(CD-ROMs in Academic Libraries)」コロンビア大学では,1987/88年において,学内17カ所で計36種類のCD-ROM(内訳は26種類が書誌的データベース,10種類が非書誌的(全文,数値,図形)データベースが利用されている。その利用状況およびその評価などを報告。

3)殿崎正明(日本医科大学付属図書館)「日本の医学図書館におけるCD-ROM」日本医科大学付属図書館では,現在MEDLINE CD-ROMを導入・利用している。導入の経緯,その利用状況,評価および問題点などを報告。

4)スチュアート・イーデ(Stuart Ede:英国図書館)「CD-ROMと英国図書館(CD-ROMs and the British Library)」英国図書館によるCD-ROMの開発状況,ADONISプロジェクト,テレビ放送を利用した最新のデータ伝送技術などを紹介。

5)アン・スケリオン(Anne Skillion:ニューヨーク公共図書館)「公共研究図書館におけるCD-ROM(CD-ROM Development in a Public Research Library)」ニューヨーク公共図書館における,CD-ROMの導入の歴史的経緯,および12種類のCD-ROMを集中的に設置して新たに開設された電子情報センター(Electronic Information Center)におけるCD-ROMの利用状況およびその評価,将来展望などを報告。

以上報告のあった図書館では,CD-ROMは有用なレファレンスツールなどとして,積極的に受け入れられ,また,その図書館の利用者にも好意的に受け入れられているようである。これには,CD-ROMに先立つオンライン検索の普及も一役かっているとの指摘もあった。以下,報告のなかで気づいた点をいくつかあげると,1)図書館での利用には,専任の技術職員が必要である。2)装置に関しては,図書館利用者が直接利用する場合には,1つのCD-ROMドライブを複数のCD-ROMソフトで利用するのではなく,1つのドライブを1つのソフトの専用機として利用したほうが良い。3)現在のところ,同時に1人の利用者しか利用できない。また,同一の利用者の長時間の占有問題が発生している。(これに関しては,製品紹介で複数のCD-ROMを複数のパソコンに接続して利用するシステムの紹介もされた。現在複数機関で試用中であるが,出版者の側と著作権に関連して了解がえられていないとのことである。)4)利用環境の整備。導入する図書館にとっては,利用者の利用を容易にするためのマニュアル整備,また,CD-ROM製作者にとっては,検索ソフトなどのユーザーインターフェースの改善。5)使用料金。日本医科大学では一定料金を徴収,ニューヨーク公共図書館では,一部全文データベースCD-ROMについてのみ徴収。6)CD-ROMの選択および価格(印刷物に比較して高価である)。同一データベースに複数の製品が存在する場合があり,データ内容や索引,検索ソフトなどが異なる。7)CD-ROMの耐久性。

個人的感想であるが,CD-ROMは,すでにオンライン検索を実施している学術・研究図書館で有用なのはもちろんであるが,現在そのようなサービスをあまり行っていない公共図書館にとってより有用性が大きいのではないかと思う。オンライン検索ほどは最新情報を得ることはできないが,従来の印刷形態資料(目録・書誌や事典など)では得られなかったサービス(より複雑な情報の検索など)を公共図書館の利用者が得られるようになるだろう。

山口和之

Ref. The Conference on the Use of CD-ROM Database for Libraries. Preprints. USACO 1989. 78p. ISBN 4-89700-000-9