CA603 – 目録費用100年で44倍に―物価は17倍人件費は48倍に / 坂本博

カレントアウェアネス
No.118 1989.06.20


CA603

目録費用100年で44倍に−物価は17倍,人件費は48倍

パリで行われる今年のIFLAの記述目録部会の主題は情報の経済性であり,目録作業に要する経費の問題が話し合われる。同部会は,1986−1991年の中期計画のISBD,UNIMARC典拠フォーマット,団体標目,略語・翻字の標準化,目録の表示形式(特にオンライン目録)などの他に,区切記号に重点を置いたISBDの簡素化,目録情報サービスの費用対効果,遡及入力の指針にも関心を持っていることを既に表明している。国立図書館長会議も目録作業の費用に関心を持っていることは既に報じた(CA585参照)。その実態調査の実施要領には目録費用についての項があるが,当館はたった一行It is difficult to estimate our cataloging costといっている。日本の公務員の給与は,職務給としての性格の他に生活給の性格もあるため,同じ仕事をしていても,家族,年齢・学歴,勤続年数,住居費・通勤費などに応じて目録費用の大部分を占める賃金が変化する以上当然である。

時宜を得た形で,専門誌に目録費用についての記事が現われたので紹介する。この調査によると,アメリカの大学図書館の70%においても目録費用は不明だそうなので,恥じるにはあたらない。要点を著作権を侵害しない程度に列挙してみる。

1956年と1981年のLCカードを比べてみると,文字数が25%,標目数が130%,フィールド数が97%,件名の細目数が156%増えている。

1876年以来,卸売物価は729%,物価の基準になる金の価格は1590%の上昇であるのに対し,大図書館における一冊当りの目録費用は4292%も上昇している。ちなみに図書館員の賃金は,1896年以来,4700%の上昇である。

大学図書館の目録作業に対する第一の関心事は,質,ついで量,三番目に費用である。

今日,目録費用の増大がよく問題にされるが,その原因の一つに,MARCの出現以来その効果的利用を促進するため,一記入当りデータ数が増えたことがある。これはMARCの目的が従来と同じことを安く済ませるなどという消極的なものではなく,従来の方法では不可能だったことを可能ならしめるという積極的なものである以上当然のことであるが,その結果として費用対効果の問題がでてきたのだということを忘れてはならない。アメリカもイギリスもMARCに然るべき性能を期待し,その結果これまでよりも入力データが増え,そのために改めて一部の資料について現在よりは簡素化を検討しているのである。過程を無視して結論だけを金科玉条にするようなことがあってはならない。

坂本 博

Harris, George. Historic cataloging costs, issues, and trends. Library Quarterly 59 (1) 1-21, 1989.