CA602 – 公共図書館にエイズ情報センター設置 / 千代由利

カレントアウェアネス
No.118 1989.06.20


CA602

公共図書館にエイズ情報センター設置−アメリカ

地域住民のニーズにいかに素速く対応していくかは,公共図書館の大きな課題である。次は住民の要求にこたえ,全米でも初めて,公共図書館がエイズセンターを設置した例である。

発病したら殆ど三年以内に死亡するといわれるエイズ患者にとって,新しい治療法はup-to-dateどころかup-to-the-minuteで欲しい情報である。しかしこうした最新情報を個人レベルで入手することは経済的負担からも困難である。米国カリフォルニア州のウェストハリウッド市はこうした住民の要望に応えるべく,ウェストハリウッド・コミュニティ図書館に『エイズ情報センター』を設置した。センターには,エイズ関連単行書,逐次刊行物,パンフレット類をはじめ抄録誌『AIDS Targeted Information Network』を揃えている。しかし売り物は,利用者自らがキーを叩いて利用できるエイズ関係のデータベースCAIN(Computerized AIDS Information Network)である。これはカリフォルニア州厚生省が資金を負担し,“ゲイ・レズビアンセンター”が運営するデータシステムである。このネットワークには,アトランタにある『国立疾病管理センター』をはじめとする国,州,地方医療機関からの最新情報が集められており,811の利用契約者がいる。

ウェストハリウッド市及びロサンゼルス郡が,センター開設資金20万ドルを負担し,資料購入費に1万2000ドル,コンピュータに6000ドルが投じられた。CAINの利用料金は,最初の1時間は無料だが,その後は1時間毎に料金を徴収($17.50/時間,夜間と週末$7.50/時間),センターの運営費や資料購入費に充てられる。

エイズは今や大きな社会的関心事となっており,センターの利用者もエイズ患者,エイズウィルス感染者およびその家族,医学生などの他にも幅広い利用者が見込まれている。

しかし,ロサンゼルス郡では,郡内に90余りある他の分館に,同様のエイズ・センターを設置する予定はない。ウェストハリウッド・コミュニティ図書館にセンターが設けられたのは,ホモセクシュアル人口及びエイズ患者が極立って多い地域であること,さらに豊かな財政を誇る市が財政援助を申し出たからである。勿論,郡内全分館から端末,電話を通じて,センターの資料,データベースの利用は可能である。

千代由利

Ref. Los Angeles Times 1989.4.17