CA1446 – フランス国立図書館の現況 / Veronique Beranger

カレントアウェアネス
No.269 2002.01.20

 

CA1446

 

フランス国立図書館の現況

 

 2001年2月に就任したサール(Agnes Saal)新事務総長は,フランス国立図書館(BnF)の2001-2003年事業計画目標に沿って,その具体的な実施作業に取り組んでいる。ここではそのうち,トルビアック館およびリシュリュー館の利用体制の発展,書誌情報提供の改善,オンライン出版物の納本化,各事業において比重を増している電子化技術の重要性,の4点を取り上げたい。

 

1 両図書館の環境変化

 トルビアック館界隈では,近くに「世界の言語と文化」に関する資料センターと大学図書館の新しい施設を作る計画があり,その関連で特に非ラテン語文字資料の目録について,BnFの諸方針との調整を図ることになった。

 リシュリュー館では,現在の写本室,版画室,地図室,コインおよびメダル室を所管している部門に,2006年頃に移転してくる舞台芸術資料室が加わる。そしてここには,フランスにおけるこの分野では初めての研究施設である国立芸術史研究所が同居することになっている。こうした共通分野での展示と研究の協同関係は,芸術史研究を資料面で支えるというBnFの役割をはっきりさせていくことになろう。

 

2 オンライン全国書誌(2001年夏〜)

 BnFでは,図書館や研究者に対して,全国書誌の書誌情報と典拠ファイルをオンラインで検索できるようにする計画に着手し,現在では2001年1月以降に納本された資料について,Web上で自由に見ることができるようになった。図書は15日おき,逐次刊行物は1か月おきに情報が更新される。これは,2000年末で発行を停止した紙媒体の全国書誌に代わるものであり,オンラインでの年間累積版の提供も計画されている。新たにUNIMARC形式でのダウンロードなども可能になるだろう。

 

3 ネットワーク系情報の納本による保存

 法定納本の対象は広がっており,電子媒体(パッケージ系)の納本を定めた1992年の法律は,世界的にもパイオニアといえる。しかし,ネットワーク系電子情報まではその範疇に入っておらず,近年の著しい出版環境の変化への対応が課題とされるようになってきた。

 そこでBnFでは,同館も参加する欧州全体での計画NEDLIB(Networked European Deposit Library)の枠組みのなかで,法定納本の対象をオンライン出版物にまで拡大することを考慮している。また同時に,出版環境の変化を分析したり,法律の改正に必要な専門的要件を決定したりするため,技術的な検討を加えている。

 その検討のなかでは,フランス語のWeb情報を自動的に収集・蓄積するための検索エンジンの開発や,そのような画一的な収集の対象とならない個別のWeb情報源を継続的に集めることが課題となっている。そのため,電子的に逐次刊行物(文字情報や視聴覚情報)を発信しているサイトとの接触を続けている。

 

4 電子化技術の利用

 2001年末には,利用者の要求に応えた,いくつかの電子的サービスの進展が見られる予定である。例えば,複製サービス部門が最近開設したトルビアック館およびリシュリュー館にそれぞれ1か所ある電子化センターでは,資料の一部を電子化してCDに取り込んだり,電子化されたカラー画像を印刷したりして,複製物を受け取ることができることになる。このセンターは同時に,貴重な資料の利用促進と保護の両方を目的とするBnF内部の電子化作業のためにも使われ,視聴覚資料は特に重要な対象となる。

 目覚しい進展を見せる電子化計画Gallica 2000であるが,2001年には,これまでの歴史的文献等に,辞書,百科事典,定期刊行物などが追加され,ますます内容が豊かになった。また,テーマによるアクセスも初めて可能となった。それが「旅行」である。「フランス旅行」は,2001年3月に始まった企画で,作家のテクスト,案内書,文書,地図,インタビューの記録などから構成され,16世紀以降のフランスにおける地図作製の歴史を思い起こさせるものである。この後,2002年3月には「アフリカ旅行」,その次に「イタリア旅行」と続くが,「日本旅行」は果たしていつになるか……。

 BnFの持つ最もすばらしいコレクション類を見せるBnFの「記憶」プロジェクトは,2003年末にお目見えする予定である。これは,米国議会図書館の「アメリカンメモリー」に範をとったものである。最後に,現在所蔵する敦煌文書を電子化するため,メロン財団と交渉中である。同財団の援助により,電子化の前に,最良の状態でこのコレクション全体の再フィルム化が行われることになっている。

(フランス国立図書館コレクション局:Veronique Beranger 訳:柳 与志夫)

 

Ref.

BnF. [http://bibliographienationale.bnf.fr] (last access 2001. 11. 20)

BnF. Gallica 2000. [http://gallica.bnf.fr] (last access 2001. 11. 20)

BnF. Gallica Voyages en France. [http://gallica.bnf.fr/VoyagesEnFrance] (last access 2001. 11. 20)

 


柳与志夫. フランス国立図書館の現況. カレントアウェアネス. 2002, (269), p.2-3.
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