わが国では,平成13(2001)年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」(法律第154号)が制定・施行されるなど,2000年ごろから学力低下問題とも関連して,子どもの読書に対する社会的な関心が高まっている。現在の子どもたちをとりまく情報メディア環境,子どもたちの読書行動,テレビやインターネットなど活字以外の情報メディアとの接触状況とその影響に関しては,多様な観点から相当数の調査研究が行われており,各専門領域において一定の成果が蓄積されつつあると思われるが,これらの研究成果を包括的に概観する取り組みは,わが国においてはこれまで積極的に行われてこなかった。
以上のような問題意識に基づき,本研究は,子どもの情報メディア利用に関する調査研究を中心に文献をレビューするとともに,関連する統計や調査,政府・自治体等の施策や事業をもとに,このテーマの環境的・背景的なことについてとりまとめている。このように,子どもの情報メディア利用に関する近年の論点及び研究動向を整理することにより,本報告書は,国際子ども図書館をはじめ,わが国の図書館の子ども向けサービスや子どもの読書推進事業に資する基礎資料とするものである。
本報告書は,以下のような7つの章から構成される。
「第1章 はじめに」では,本研究の背景・目的及び「子どもの情報行動」というテーマのとらえ方について述べている。
「第2章 子どもの情報環境の現況」は,本研究の社会的背景を説明し研究の基礎とするために,子ども及び情報メディアの現況及び各情報メディア業界の動向を主要統計資料に基づきまとめてある。
「第3章 先行調査レビュー」は,過去20年間の子どもの情報行動に関する主な調査をリストアップし,年代ごとに調査内容の動向をレビューしている。
「第4章 先行研究レビュー」では,過去約20年間の子どもの情報行動に関する研究をレビューしている。このテーマは学際的なものであるので,図書館情報学の研究を中心に,教育工学,教育学,心理学,社会学の領域の研究を視野に入れて,「公立・学校図書館に関わる子どもの情報行動」,「子どものウェブ情報検索行動」,「子どもの読書に関する教育学的研究」,「各種メディアの心理学的な影響・発達的研究」,「「子どもの情報行動」に関する社会学的研究」「米国の研究動向」の6つに分けてまとめている。
「第5章 読書及び情報教育関連政策」では,「日本の情報政策の展開」と「子どもの読書活動推進」,「情報リテラシー教育」「有害コンテンツ対策」,という4テーマをとりあげ,施策の概要や動向を分析している。
「第6章 「子どもと情報・メディア」に関わる現場の動き」では,関連する国内外の図書館及び関連機関での取り組みの事例を紹介する。
「第7章 おわりに」では全体の総括として,子どもの情報行動に関する研究動向から見えてきたことをとりまとめ,図書館が子どもたちに提供し得るサービスの可能性を探る。