E1877 - 伊那谷をもっと楽しく知るアイデアソン

カレントアウェアネス-E

No.318 2017.01.26

 

 E1877

伊那谷をもっと楽しく知るアイデアソン

 

 アーバンデータチャレンジは,地域課題の解決を目的に,地方自治体を中心とする公共データを活用した一般参加型コンテストであり,2016年は全国30拠点がエントリーしている。本稿では,これまでの伊那市立図書館(長野県)の地域アーカイブを活用したプロジェクト「高遠ぶらり」及び,2016年のアーバンデータチャレンジの拠点の一つである長野ブロックのキックオフイベント「伊那谷をもっと楽しく知るアイデアソン」を紹介する。

●「伊那谷の屋根のない博物館」の「屋根のある広場」へ

 伊那市立図書館(高遠・伊那)は,地域の自然環境とそれに働きかけてきた人々の暮らし,ヒト・モノ・コト全体を「伊那谷の屋根のない博物館」と考えている。その中で人々と共に知り,学び,アーカイブし,誰もが自由に編集し,新たなコンテンツを創造し発信するための基盤を整え,そのプロセスを共創し,図書館がそうした「知る」行為のハブとして「情報と情報」,「人と情報」,「人と人」を繋げ,地域の人々と共に「実感ある知」の営みをデザインする「屋根のある広場」を目指している。

●「知る」プロセスを共創の場とする「高遠ぶらり」/「ウィキペディアタウン」プロジェクト

 「高遠ぶらり」とは携帯端末用アプリケーションである。古地図や絵図の上にGPS(全地球測位システム)で現在地を表示し,現在の地図と切り替えて見ることができる。地図上には,文章や写真・絵図などの様々な情報と記事が埋め込まれており,地域学習や観光のセルフガイドツールとなっている。現地を歩けば,まるで古地図の時代にタイムスリップしたような感覚を楽しむことができる。

 単にデジタルコンテンツやアプリ制作をすることが目的ではなく,掲載地図の範囲を街歩きしながら,参加者と共に「知る」場をデザインしている。

 2010年に開始したプロジェクトでありオーナーは伊那市立図書館だが,ワークショップの運営やアプリの制作などは,参加者が自発的におこなう制作委員会方式で運営している。参加者それぞれが,情報を収集,編集し,表現し,現実に働きかけ「共に知り」「共に作る」プロセスを通して「情報リテラシー向上」や地域課題に取り組む「共創」の場として寄与している。

 そのスピンアウト企画として「ウィキペディアタウン」を2015年1月に開始し,2015年12月から2016年1月にかけては地元の高校でウィキペディアを利用した「地域情報の編集・発信」カリキュラムを市立図書館,学校図書館と連携して展開した。

●「伊那谷をもっと楽しく知るアイデアソン」

 2016年10月14日・15日,県立長野図書館との共催で「伊那谷をもっと楽しく知るアイデアソン」を開催し,計41名の参加があった。1日目は,「地域情報資産を開き,活かし,学ぶことの今」をテーマに,データ公開や流通の現状と今後の課題を考えるセッションとして,地域情報を活用した地域アーカイブ活用事例紹介,国立国会図書館デジタルコレクションの活用等のナショナルアーカイブ活動事例紹介と,地域データのオープン化の推進や地域アーカイブに関わる方々による,トークセッションを行った。トークセッションでは,学びのなかでの「小さな挫折」経験や「地域で知的活動をする人々を育てる場としての図書館活動」,「郷土史と地域アーカイブ活動の違い」など,地域を見るため普段とは少し違う視点が提示された。2日目には,まず「ウィキペディア編集」「高遠ぶらり街歩き」のアーカイブ活動を体験し,次に行ったアイデアソンでは地域データを活用するだけではなく,地域データ蓄積から考える「まちの風景を後世に向けアーカイブするため,街を訪れた人・住民が散歩コースや写真・豆知識などをシェアするアプリ」などのアイデアが出された。

●おわりに

 図書館では,多くの地域資料を集積しているが,それらを手にし,地域を知るために利用する人は限定されていると推測されるため,より多くの人に活用してもらうには工夫が必要である(CA1876参照)。伊那市立図書館で,企画している「ウィキペディアタウン×高遠ぶらり」や今回の「アイデアソン」は,図書館が集積している地域の情報を調べる機会を提供し,自ら情報検索,選択整理,さらには編集表現する能力,つまり情報リテラシーの向上を支援することで,その課題の解決を目指したプログラムである。街歩きにより自発的な興味事項を発見してもらうことで,日頃図書館を利用していない人々や資料の貸出のみ利用していた人々に対しても,情報や資料の「利用」「調査」を楽しみながら体験する機会を提供し,自ら得た情報を表現,発信,共有することで情報活用能力を向上させる。その後,参加者が自ら地域情報を発見し課題を自ら調査し,各地域アーカイブ活動を活発にしていき,その地域アーカイブを集積させたものがナショナルアーカイブとなっていくのではないだろうか。

伊那市立高遠町図書館・諸田和幸

Ref:
http://urbandata-challenge.jp/
http://www.library.pref.nagano.jp/futurelibnagano_161015takatoo-%E2%80%8E
http://takato-burari.info/
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/04/11/1346615_006.pdf
http://www.atr-c.jp/burari/product/library/takato.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%9A%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3
E1709
CA1876

CA1847