E1709 – 地域課題解決に向けた空間情報の活用‐UDC2015本格始動!

カレントアウェアネス-E

No.288 2015.09.10

 

 E1709

地域課題解決に向けた空間情報の活用‐UDC2015本格始動! 

 

1.アーバンデータチャレンジ2015(UDC2015)の経緯

 東京大学空間情報科学研究センター「次世代社会基盤情報」寄附研究部門(CSIS-i)と,一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)は,本年度で3年目の取り組みとなる「アーバンデータチャレンジ2015」(UDC2015)のプロジェクトを開始した。UDC2015は,さまざまな国土情報および公共施設等の社会インフラに関わるデータの持続的な流通を目的としている。2015年8月時点で150自治体以上におよぶオープンデータの流通環境を整備し,それらの有用なデータを基にした地域課題や,魅力創出に効果的なツールやアイデア等を市民の手で作品に仕上げる活動を実施するものである。

 昨年度開催されたUDC2014では,東京および10の地域拠点において地域課題に関するミーティングやハッカソン等を十数回にわたって開催し,地域におけるオープンガバメントの現状や課題等の共有を図ると共に,アイデア,データ,アプリケーション,ソリューションを募集するコンテストを開催し,76点におよぶ作品が集まった。本年度は全国の地域拠点数を20に拡充し,地域間の連携を図っている。6月22日に開催したキックオフ・シンポジウムを皮切りに,東京や各地域拠点で地域イベントが順次実施されている(詳しくは3.を参照)。なお,UDC2015も2015年10月以降,2014年度と同様に作品募集を開始予定である。

2.UDC2015キックオフ・シンポジウムの開催

 6月22日に開催したシンポジウム「地域の課題解決力を全国に拡げよう!~第2期・10の地域拠点&支援拠点が新たに参戦~」では,庄司昌彦氏(国際大学GLOCOM准教授)や郡司哲也氏(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)による「地域課題×オープンデータ」に関する基調講演が行われた。そのほか,UDC2014で取り組みが高く評価された久保まゆみ氏(Code for Sapporo)による「さっぽろ保育園マップ」,長谷川瑶子氏(東京大学大学院工学系研究科修士課程)による「MyCityForecast~あなたのまちの未来予報~」に関する事例紹介が行われ,UDC2015が目指す市民による地域課題解決に向けたデータ流通・活用のイメージを広く共有した。

 続けてUDC2014からの継続である北海道・静岡・石川など10の地域拠点とUDC2015から新拠点となる岩手・奈良・鹿児島などの地域拠点コーディネーターから活動計画についてのプレゼンテーションがあった。ここでは,各拠点で有する地域課題やアーバンデータチャレンジを盛り上げるための地域イベント(地域を知るための地図づくり活動,具体な地域課題に対するアプリケーション実装など)に関するそれぞれの計画が発表された。さらに地域拠点を超えた支援枠組みとして,UDC2015には,国立国会図書館(NDL)および株式会社ナビタイムジャパン,オープンガバメント推進協議会が「データ提供・支援拠点」として参画することになり,シンポジウムの場でワークショップの開催やデータ提供,特別賞の設置に関する計画を発表した。

3.地域拠点イベントの開催と今秋以降の取り組みについて

 UDC2015は,20の地域拠点およびコーディネーターを核としながらも,地域課題の解決に携わる,各地域に根ざして活動するローカルなコミュニティを支援している。地域イベントを開催して具体的な機会を創りだすと共に,コンテスト自体も応募者の所属組織や他のコンテストへの応募状況を不問とし,出来るだけ自由に参画できるように考えている。なお10月以降から開始予定のコンテストでは,地域課題の解決に向けた新規性の高いアイデア,データ,アプリケーションはもちろん,既に開発済みあるいは商用化された製品等であっても,地域を超えて展開可能なソリューションであれば積極的に評価する部門を計画中である。さらに,幾つかの地域拠点では,当該地域の地方自治体の有する課題に直結した解決策を明確に示した作品を,「拠点特別賞」として表彰する計画もある。

 地域拠点主催のイベントとして,8月8日は北海道(室蘭市)でアイデアソン,鳥取県(鳥取市)ではハッカソンが行われ,9月5日には静岡県(静岡市),石川県(能登町),滋賀県(大津市,8月22日にも)で開催された。静岡市では,10月10日,11日もそれぞれ開催予定である。また東京では,UDC2015とNDLが連携し「NDLデータ利活用ワークショップ~「国立国会図書館デジタルコレクション」のお宝資料248万点から地域の歴史・文化を掘り起こそう~」(E1710参照)を開催した。地域資料の発掘と活用という観点で多くの発見があり,アプリケーションの開発に限らない,地域に根ざしたアーカイブの活用に対する期待も大きい。例えば,地域図書館・資料館に保存されている郷土資料や古地図の掘り起こしあるいはデジタル化を通したオープンデータ化などが挙げられよう。

 UDC2015は,FacebookやAIGIDのホームページ上に開設するイベントページにおいて地域拠点での継続的な取り組みについて発信するとともに,来る9月29日にはUDC2015地域拠点の活動に対する中間報告に関するシンポジウムを開催予定である。また,10月以降は20の地域拠点で,コンテストに向けてますます活発にイベントを開催することを予定している。今後それらのイベントでは,地域に眠っている資料を活用するアイデアの発掘など,地域課題に関わるさまざまな主体が気軽に協働できる場づくりに取り組みたいと考えている。

東京大学空間情報科学研究センター・瀬戸寿一

Ref:
http://i.csis.u-tokyo.ac.jp/event/20150622/
https://www.facebook.com/UDCT2013
http://i.csis.u-tokyo.ac.jp/news/20150929/
http://aigid.jp/?page_id=1175
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/41588/
http://papamama.codeforsapporo.org/
http://mycityforecast.net/
E1710