カレントアウェアネス
No.202 1996.06.20
CA1071
World 1−オーストラリア国立図書館の新情報サービス−
1996年1月から3月にかけて,オーストラリア国内の主要都市で,今年後半から開始される新しい情報サービス,“World 1”のプロトタイプのデモンストレーションが行われ,3,000人以上が参加した。“World 1”とは,オーストラリア国立図書館(NLA)とニュージーランド国立図書館が共同開発しているNDIS (National Document Information Service)プロジェクト(CA1010参照)のオーストラリア側が提供するサービスのブランド名である。
デモンストレーションで紹介されたのは,書誌検索サービス(サーチサービス),それで検索できるデータベースの種類,その出力形態と,文献のリクエストシステムである。
利用者は既製のネットスケープのようなWWWのブラウザか“World 1”の専用クライアントソフトを用いて,インターネット経由でアクセスできる。どちらの方法を使っても違和感が無いように,できるだけ共通のインターフェースを用いるようにしている。検索方法としては,グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を用いた初心者にも使いやすいものと,さらに高度な検索,そしてコマンドによる検索の3つが用意される。
このサーチサービスによって検索できるデータベースはデモンストレーション時には約2,000のテストデータだけであったが,公開時には約100万レコード,そして1997年には約1,000万レコードへと増える予定である。この中には,過去15年以上にわたって構築されてきたオーストラリア書誌ネットワーク(ABN)の書誌データ,またオーストラリアの雑誌記事索引 (APAIS)のデータ,さらにはUnCover(CA946参照)やMedlineのデータが含まれる。以上のような様々な形式のデータが共通のインターフェースで検索できるのである。
検索結果は,プリントアウトやローカルファイルへの保存ができ,電子メールやファックスでの転送も可能である。
さらに,書誌データ検索から文献のリクエストをすることができる。最初はすでに稼働しているABNの図書館間貸出システムにデータが転送され,それを通じて資料が提供されるが,将来は独自のシステムが取って代わることになる。またその外に,UnCoverやAPAISのフルテキストもリクエストできるので,一つの文献について,いくつかのルートがある場合は,利用者は時間とコストを考えて,最も望ましい方法を選ぶことができる。
以上がデモンストレーションで示された“World 1”の概要で,これらのサービスは今年後半には開始する予定である。さらに1997年に始められる第二期のサービスとして,従来のABNに代わる新しい書誌情報ネットワークや,ドキュメントデリバリーも開発中である。
NLAは1990年,1993年と3年ごとに戦略計画を発表しているが,1993年版でうたわれていたのは,「全国サービスと世界へのアクセス」である。この戦略計画にのっとって,先にNLAの新しい収集方針が報告されたが(CA1056参照),そこで大量に削減された外国資料へのアクセスをUnCoverでカバーするなど,一貫した図書館の姿勢をはっきり打ち出している。
今回紹介された“World 1”は,図書館・図書館員のみならず,インターネットにアクセスできる人ならば誰でも利用できるという全国民を対象としたサービスを目ざしている。“World 1”の今後の展開に注目したい。
原田 圭子(はらだけいこ)
Ref: Presenting WORLD 1. National Library of Australia Gateways. (20) 4-5, 1996
WORLD 1: one step closer. National Library of Australia Gateways. (18) 5, 1995