カレントアウェアネス-E
No.162 2009.12.02
E997
イトーヨーカドー子ども図書館,各地で再開へ向けた動き
イトーヨーカドー子ども図書館の第1号館が静岡県沼津市の店舗と共に誕生したのは,今から31年前の1978年7月のことであった。以来,利用登録は必要なものの,身分証の提示を必要とせず,地域・年齢の制限がない,だれもが無料で利用できる「図書館」として運営が続けられていた。業務は株式会社童話屋が委託を受けて,スタッフに司書有資格者も配し,読み聞かせや展示,工作会などさまざまなイベントを行っていた。
全国各地の店舗に設置されていった子ども図書館は,最盛期には全国13の店舗に存在していた。2005年には,母体であるイトーヨーカ堂が,専任の司書をスタッフにした子ども図書館の運営と「小さな童話」大賞の実施を評価されて,芸術文化の振興に高く貢献した企業・企業財団を表彰する「メセナアワード2005」の「児童文化賞」を受賞している。
2008年2月末時点での子ども図書館設置店舗数は10店舗(沼津・豊橋・秋田・大宮・堺・加古川・郡山・安城・福山・浜松宮竹)であったが,来店者および子ども図書館利用者の減少などを理由に,同年10月に秋田店,翌2009年4月に豊橋店の図書館が相次いで閉館し,2009年9月23日には残る8つの図書館も一斉に閉館となった。
このうち,2008年10月に閉館した秋田の子ども図書館は,住民らの再開へ向けた支援活動により,翌2009年4月に秋田県立図書館の管理の下で,場所を児童会館「みらいあ」に移して運営を再開している。
こうした先例もあり,2009年8月1日に新聞の折り込み広告などで全国8つの図書館の一斉閉館が発表された直後から,閉館が伝えられた各店舗の地元では,支援者らが応援ブログを立ち上げたり署名活動を行うなど存続に向けた運動を開始し,9月23日の一斉閉館の後も再開に向けた活動を続けている。
一斉閉館からおよそ2か月後の2009年11月,これらの活動が実を結び始めたことを伝える記事が報じられた。11月13日に沼津市の支援者が市長へ要望を伝え,市での引き継ぎに前向きな回答を得たほか,11月24日には兵庫県加古川市で,イトーヨーカドー加古川店が入居している商業施設のオーナー会社の関連財団が事業を引き継ぐことで再開を果たしている。
大宮店のあるさいたま市や沼津市の支援者らが再開へ向けた活動の一環として行ったアンケートでは,共に回答者の9割以上が子ども図書館の存続を希望するという結果が出ているとのことで,加古川での動きが各地の活動に好影響を与えて,広がりを見せるかもしれない。
Ref:
http://www.dowa-ya.co.jp/library/library.html
http://mothergoose-0510jp.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-735d.html
http://www.mecenat.or.jp/awards/winners_2005/winners_2005_itoyokado.html
http://toyohashi-noriko-net.seesaa.net/article/117374439.html
http://akita.keizai.biz/headline/596/
http://puratto.com/philanthropy/2009/06/01/group-12/
http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20091117ddlk28040347000c.html
http://saitamakodomoto.blog.so-net.ne.jp/2009-10-18-1
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20091114ddlk22100233000c.html
http://librarykodomo.jugem.jp/?eid=20