カレントアウェアネス-E
No.145 2009.03.04
E896
ALA,議論の末に「ライブラリアンのコア・コンピタンス」を定義
米国図書館協会(ALA)では10年以上に渡って,ALA認定の図書館情報学修士号(MLS/MLIS)を取得しているライブラリアンすべてが身につけているべき「コア・コンピタンス」の定義について議論を続けてきた。このほど2009年のALA冬季大会(E893参照)の場で,ALA評議員会がその最終案を承認した。
今回承認されたコア・コンピタンスは,下記の8つの分野の専門知識からなる。それぞれの専門知識の下位には,具体的に求められる知識が数個ずつ列挙されている。
- 専門職の基礎
- 図書館・情報専門職の倫理,価値,根本原理
- 民主主義の原理及び知的自由の促進における図書館・情報専門職の役割
- 図書館とライブラリアンシップの歴史
を含む,全11項目。
- 情報リソース
- 作成から,様々な段階の利用を経て廃棄に至るまでの,記録された知識及び情報のライフサイクルに関する概念と課題
- 評価,選択,購入,処理,保管,除籍といった,リソースの収集と処分に関連する概念・課題・方法
- 多様なコレクションの管理に関連する概念・課題・方法
を含む,全14項目。
- 記録された知識・情報の組織化
- 記録された知識・情報の組織化とその表示に関する原則
- 記録された知識・情報リソースを組織化する上で必要となる,発展的・記述的・評価的スキル
- 記録された知識・情報を組織化するために必要な,目録作成・メタデータ・索引化・分類標準と方法の体系
- テクノロジーに関する知識とスキル
- 図書館や他の情報機関のリソース,サービス提供,利用に影響を与えるような,情報技術,コミュニケーション技術,補助的技術及び関連技術
- 専門職倫理や主なサービス規範,主なサービスアプリケーションと合致した,情報技術,コミュニケーション技術,補助的技術及び関連技術,ツールの応用
- テクノロジーに基づく製品とサービスについての仕様書,有効性,コストの査定と評価の方法
を含む,全4項目。
- レファレンスと利用者サービス
- 全年齢,全集団の個人に対し,関連があり,正確な,記録された知識・情報へのアクセスを提供するレファレンスと利用者サービスの概念,原則,テクニック
- 全年齢,全集団の個人の利用に供するため,様々な情報源から情報を検索し,評価し,統合するテクニック
- 記録された知識・情報の利用に当たっての相談,仲介,案内のため,全年齢,全集団の個人とうまく交流するための方法
を含む,全7項目。
- 研究
- 量的・質的調査法の基礎
- その分野における主要な研究成果と研究文献
- 新しい研究の実際の価値と潜在的な価値を評価するために必要な原則と方法
- 継続教育と生涯学習
- 図書館や他の情報機関の実践家の継続的な専門性の向上の必要性
- 利用者の生涯学習における図書館の役割の理解
- 学習理論,指導方法,達成評価(そしてそれらの図書館や他の情報機関への応用)
を含む,全4項目。
- 運営・管理
- 図書館や他の情報機関における企画と予算の原則
- 効果的な人事実務と人的リソース開発の原則
- 図書館サービスやそのアウトカムを査定・評価するために必要な概念と方法
を含む,全5項目。
今回定義されたコア・コンピテンスに対し図書館関係者からは,「プロのライブラリアンの業務に関するすべてが網羅されている」という評価がある一方,専門教育と図書館の実務の関係の困難を強調する人も少なくなく,引き続きこのギャップを狭めていくことが,今後の課題の1つとなりそうである。
Ref:
http://www.ala.org/ala/educationcareers/careers/corecomp/index.cfm
http://www.ala.org/ala/educationcareers/careers/corecomp/finalcorecompstat09.pdf
http://www.libraryjournal.com/article/CA6632572.html
E893