E805 – 知的財産戦略本部,知的財産推進計画2008を発表

カレントアウェアネス-E

No.131 2008.07.09

 

 E805

知的財産戦略本部,知的財産推進計画2008を発表

 

 内閣の知的財産戦略本部は2008年6月18日,知的財産の創造,保護および活用のために政府が集中的かつ計画的に実施すべき施策を定めた「知的財産推進計画2008」を策定,発表した。

 本計画は,副題の「世界を睨んだ知財戦略の強化」が示すとおり,知的財産の創造(研究開発),保護(制度構築),活用(市場開拓)の各段階で,日本が欧米先進諸国に後れを取ってしまっている点があるという問題意識から出発する。そして,「知財制度は技術革新を促進すべきものであり,万が一にもこれを阻害するものであってはならない」として,時代に対応した知的財産戦略の実行と知的財産制度の整備を図り,国際競争力を一層強化する必要があるとする。本計画の前半部分「重点編」では,(1) 我が国の重点戦略分野の国際競争力を一層強化する,(2) 国際市場への展開を強化する,(3) 世界的共通課題やアジアの諸問題への取組にリーダーシップを発揮する,の3つの重点の各々について,下位に展開する形で重点項目を列挙している。

 これらの重点施策,および,その他の施策の具体的内容と担当府省は,本計画の後半部分「本編」に示されている。本編は5章構成で,次のような領域に関する施策が列挙されている。

  • 第1章「知的財産の創造」
     基礎研究分野の創造力強化,大学・研究機関の知的財産戦略の強化,事業化に向けての研究開発の促進
  • 第2章「知的財産の保護」
     知的財産の適切な保護,模倣品・海賊版対策の強化
  • 第3章「知的財産の活用」
     制度の整備等による知的財産の戦略的活用,共通基盤技術の活用の促進,中小・ベンチャー企業支援,知的財産を活用した地域振興
  • 第4章「コンテンツをいかした文化創造国家づくり」
     デジタル・ネット時代に対応したコンテンツ大国の実現,食文化やファッションなど日本の魅力を海外に発信する「日本ブランド」戦略の推進
  • 第5章「人材の育成と国民意識の向上」
     知的財産に係る専門人材の育成

 また別冊の参考資料「知的財産戦略の進捗状況」では,本編と対応する形で,現在までに実施されてきた知的財産に関連する施策・法整備がまとめられている。

 本計画においては,「特許・論文情報統合検索システム」の利便性向上,特許審査のための先行技術文献の検索環境整備,インターネット上の違法コンテンツの排除,国際標準化の推進,パテント・コモンズやクリエイティブ・コモンズ,オープンソースソフトウェアの活用,ネット検索サービスやサーバ上のデータ一時蓄積等に係る法的課題の解決,研究開発における情報利用の円滑化に係る法的課題の解決,権利者不明のコンテンツの利用を円滑に進めるための対策,障害者による著作物の利用促進のための権利制限規定の整備,利用と保護のバランスに留意した著作権保護期間の在り方の検討,青少年を有害情報から守るための取り組みの奨励・支援,国立国会図書館のデジタルアーカイブ化とその資料提供の促進,地域のコンテンツ産業の振興,ユーザの自由な創作・発表の場の提供の促進,学校における知的財産教育の推進など,図書館および図書館情報学に少なからず関係する施策も多く盛り込まれており,今後,このどのように政策展開がなされていくか,大いに注目される。

Ref:
http://www.ipr.go.jp/sokuhou/2008keikaku.pdf
http://www.ipr.go.jp/sokuhou/2008siryou.pdf