カレントアウェアネス-E
No.124 2008.03.05
E761
2008~2013会計年度のLCのデジタル保存戦略
米国議会図書館(LC)のデジタルコンテンツ戦略を企画運営する戦略企画局(OSI:Office of Strategic Initiatives)が,2008~2013会計年度のデジタル保存戦略計画を発表した。
計画は6章で構成され,まず「概要」ではデジタル保存に関するLCの基本理念やOSIの役割について概説した上で,ビジョン・戦略目標について述べている。続く「コンテンツ」「サービス」「技術インフラ」「組織の資産」の各章では,本計画の核となる4つの戦略目標がそれぞれ示され,さらに具体的な実現策が挙げられている。そして最後に「結論」がまとめられている。
以下では,4つの戦略目標の概略を紹介する。
- (1)コンテンツ
目標:持続可能なデジタルコンテンツの作成と受け入れの実現- 保存に適した標準フォーマットを普及させるとともに,ボーンデジタルコンテンツの自動収集,蔵書のデジタル化の推進により所蔵コンテンツの増加を図る。
- 法定納本,購入など多様なチャネルを通じ,持続可能な形式でデジタルコンテンツを作成し,受け入れられるようにする。
- デジタルコンテンツについて,国内の諸機関との分担管理を目指す。
- デジタルコンテンツの保存とアクセスのための情報アーキテクチャを勧告する。
- デジタルコンテンツの保存とアクセスに向けて,デジタルコンテンツの所有者,提供者 ,管理者に対し,バランスの取れた政策(著作権法のあり方など)を提案する。
- (2)サービス
目標:デジタルコンテンツとサービスの利用と,それらへのシームレスなアクセスの向上- ターゲットとなる利用者による,コンテンツとサービスの利用を促進するとともに,認知度を高める。
- LCのコレクションを内外から発見可能にするとともに,統合検索ツールを開発する。
- デジタルコンテンツとサービスを法に則って安全に配信する。
- RSSや携帯端末など新しい情報伝達技術について動向を調査し,サービスを拡大する。
- 幼稚園から高校までの教育環境と教育ネットワークにおける,LCのデジタル形式の一次資料 の利用を促進する。
- (3)技術インフラ
目標:使命の達成をサポートし,情報管理を可能にする,技術インフラの維持,拡張,適合化- オープンな標準の採用やコンポーネント化などにより,安定性・可用性・拡張性に優れたインフラを実現する。
- ネットワークでつながれた国内の諸機関との間で共有する,ツールとサービスのための技術インフラを定義する。
- 将来の技術変化を見据えた,アーキテクチャの将来像を定義する。
- 多様なデジタルコンテンツに対応した,安全で,信頼でき,拡張可能なデジタルメディアリポジトリを構築・提供する。
- 技術の旧式化,コンテンツの損失に備えたマイグレーション戦略を立て,時代を超えて真正のデジタルコンテンツを保存していく。
- (4)組織の資産
目標:組織の資産が戦略目標に適い,さらに成果を得,LCのミッションの価値に貢献するために投資されることの保証- 人員,予算や資本投資など,戦略的に資産を配置する。
- パフォーマンス指標を導入し,運営の結果が戦略目標の成功を反映するものにする。
- ミッションへの貢献を測定可能で,累積的なものとする。
なお,本計画には計画の一部や全体像を概観するチャートがついており,理解の一助となる。
Ref:
http://www.digitalpreservation.gov/pdf/OSI_StrategicPlan.pdf
CA1203
E752