カレントアウェアネス-E
No.120 2007.12.26
E735
ネット上の違法・有害情報への対策,集中的な検討が続く(日本)
インターネット上の違法・有害情報への対応については,かねてから総務省を中心にさまざまな検討が行われ,対策が講じられているところであるが(E452,E538,E584参照),出会い系サイトなどの有害サイトに関連する犯罪の被害児童の増加を背景に,更に踏み込んだ対策が必要であるとの認識から,2007年度も集中的な検討が行われている。
2007年4月5日には,内閣のIT戦略本部が決定した「IT新改革戦略政策パッケージ」にて,2010年までにインターネット上の違法・有害情報に起因する被害児童等を大幅に縮小することを目標に集中対策を実施する,という方針が決定された。その決定を受け,関係省庁の連絡会議として内閣官房が設置しているIT安心会議では,2007年10月15日に「インターネット上の違法・有害情報に対する集中対策」を策定した。同対策では,内閣官房が青少年団体,電気通信事業者団体,相談窓口等の外部関係者から行ったヒアリング結果をもとに,各論点につき,関係者の問題意識をまとめ,考え得る対応策を示している。前半は,法令改正に向けて検討すべき対応策,後半では,プロバイダによる自主規制の支援,情報モラル教育の充実,相談窓口等の充実,フィルタリング導入の促進の4方策を強化する対応策が示されている。
とりわけ,出会い系サイトに関しては,多くの被害者が生み出されている現状が指摘され,現行の出会い系サイト事業者への規制についての法令の施行状況について検討し,規制のあり方の方向性を策定することとされた。サイト運営者自身による自主的な取り組みを促進するための仕組みについても,さらに検討する方針が示された。迷惑メールについては,現行のオプトアウト方式の見直し等,法制度のあり方について検討を行い,「特定電子メール法」「特定商取引法」の法改正案の提出を予定している。
プロバイダによる自主規制の支援では,中小のISPにとって負担が困難な,ネット上の有害情報を削除などの対処を行うことで生じる可能性のある損害賠償や訴訟に対する支援,また業界団体との連携のあり方について検討する。情報モラル教育の充実では,学習指導要領の改訂やe-ネットキャラバンの実施など,児童への教育に加えて,保護者及び教職員を対象にした啓発活動の強化が挙げられている。相談窓口等の充実では,警察庁が委託しているインターネットホットラインセンターの体制強化と業務のより効果的な推進の検討が示されている。フィルタリング導入については,携帯電話等におけるさらなるフィルタリングの普及促進への検討の必要性が示された。
この「集中対策」を受けて,総務省は2007年11月26日に「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第1回会合を開催した。第1回会合では,総務省の取り組みと論点,インターネット上の違法・有害情報の現状,フィルタリングの普及促進の現状と課題が議題となった。同検討会では,計10回の会合を予定しており,2008年3月頃に中間報告をとりまとめ,2008年秋には,最終報告書のとりまとめが行われることになっている。
Ref:
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/070405honbun.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/070405gaiyou.pdf
http://www.it-anshin.go.jp/images/it071015.pdf
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html
E452
E538
E584