E734 – 「文頭の“The”をどう扱うか」の研究がイグノーベル賞を受賞!

カレントアウェアネス-E

No.120 2007.12.26

 

 E734

「文頭の“The”をどう扱うか」の研究がイグノーベル賞を受賞!

 

 イグノーベル賞(Ig Nobel Prize)は,「まず人々を笑わせ,次いで考えさせる業績」に対して,1991年から毎年授与されている賞であるが,2007年のイグノーベル賞文学賞は,フリーランスの“indexer”,“trainer”,“database consultant”などとして活動している,オーストラリアのブラウン(Glenda Browne)氏に贈られた。表彰式は2007年10月にハーバード大学のサンダース・シアターで行われ,ブラウン氏は大小さまざまな“The”の文字を模様としてあしらったTシャツ姿で登場した。

 今回受賞の対象となったのは,ブラウン氏が雑誌“The Indexer”上で2001年に発表した論文,「定冠詞“The”を索引項目として認めることについて(The definite article : acknowledging ‘The’ in index entries)”である。英米目録規則(AACR)や,オーストラリアとニュージーランドで使用されている目録規則AS/NZS(Australian/New Zealand Standard)などで定められているように,英語の資料の索引を作成する際,“The”は省略するというのが基本ルールとなっている。一方で,“The”と一体となって意味をなすような一部の言葉(オランダの行政上の首都である“ハーグ;The Hague”のような地名など)の扱いは例外とするなど,索引が依って立っているルールを知らない人にとっては混乱を招くもととなっている。ブラウン氏はこのような“The”の取り扱い方を問題視し,利用者の使い易さ,簡素さ,一貫性という原則に依って立つなら,もっと“The”に注意を払うべきであり,“The”を入れた索引と,入れない従来の索引の2種類を作成し,情報への入口を2つ準備してはどうか,と提案している。

 2007年のイグノーベル賞を受賞した研究にはその他,医学賞として「剣を飲み込むこととその副作用に関する研究」,化学賞として「牛の糞からバニラの香りと味のする物質(バニリン)の抽出に成功した研究」などがあり,いずれも研究者たちが真面目に取り組んだものではあるが,その分野に詳しくない人にとっては一見奇異に映る研究が並んでいる。資料の排列の際に“The”をどのように扱うかという議論も,図書館の専門家以外の人にとってはユニークなものとして映ったようである。

Ref:
http://www.theindexer.org/files/22-3/22-3_119.pdf
http://www.theindexer.org/index.php?option=com_content&task=view&id=101&Itemid=63
http://www.webindexing.biz/joomla/index.php?option=com_content&task=view&id=458&Itemid=1
http://www.ignobel.com/ig/ig-pastwinners.html#ig2007
http://www.ignobel.com/ig/2007/2007-details.html
http://www.ignobel.com/ig/2007/webcast/