E668 – Amazonも図書館蔵書デジタル化事業に参入

カレントアウェアネス-E

No.110 2007.07.11

 

 E668

Amazonも図書館蔵書デジタル化事業に参入

 

 Google,Microsoftなど,大手インターネットサービス企業による図書館蔵書のデジタル化事業が大々的に展開されている中,米Amazon.com社も,この分野で事業を展開することを発表した。

 同社は2007年6月21日,オンデマンド出版を手がける子会社・BookSurge社と,書籍デジタル化機器・システムの大手Kirtas Technologies社とが提携して,大学・公共図書館の貴重書などをデジタル化し,Amazon.comほかのウェブサイトで公開するとともにオンデマンドで購入できるようにもするプロジェクトを行うと発表した。このプロジェクトは,(1)参加する各図書館がデジタル化する対象の書籍を選び,(2)Kirtas Technologies社が特別の割引価格で非破壊スキャニングを行い,(3)Amazon.comほかの販売ルートで検索・販売できるようにし,(4)購入の注文に応じてBookSurge社が印刷・発送する,という流れで,図書館の蔵書の長期保存・複製・利用を可能とするものである。

 このプロジェクトの参加館の第一弾としては,エモリー大学図書館,メイン大学図書館,トロント公共図書館,シンシナティ・ハミルトン郡公共図書館の4館が参加すると発表されている。なお,エモリー大学図書館とメイン大学図書館はともに,1923年以前に刊行されたパブリックドメインの資料とともに,大学が著作権を所有している刊行物や,教員・学生の学術出版を対象とする予定だという。

 Amazon.comはこれまで,出版社の協力を得て書籍の本文データを全文検索できるサービス“Search Inside the Book”(日本語版では「なか見!検索」)や,ページ単位や章単位での書籍データ販売サービスを提供し,注目を集めてきた(E146E403参照)。今回の連携により,図書館の蔵書も同社のサービス対象,すなわち「商品」に加わることになる。各図書館は,このオンデマンド出版から収益を得られることになるが,エモリー大学図書館は収益をさらなる書籍のデジタル化に費やす予定であるとしている。このように,デジタル化事業に係る費用を自己創出できる点は,先行する各種プロジェクトとは一線を画す,新たなビジネスモデルとして注目されよう。

Ref:
http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1018605
http://news.emory.edu/Releases/KirtasPartnership1181162558.html
http://www.kirtastech.com/uploads/other/Emory_Spotlight.pdf
http://www.umaine.edu/news/article.asp?id_no=1809
http://www.kirtastech.com/uploads/other/Maine_Fogler.pdf
http://www.insidehighered.com/news/2007/06/22/digitize
E146
E403