E651 – 研究図書館の将来像は?: 研究者の意識調査報告書公開

カレントアウェアネス-E

No.107 2007.05.30

 

 E651

研究図書館の将来像は?: 研究者の意識調査報告書公開

 

 英国研究情報ネットワーク(RIN)と研究図書館コンソーシアム(CURL)は,2006年9月から共同で,研究者の研究図書館の利用について,調査を進めてきた。その成果を報告書『研究図書館とそのサービスの研究者の利用(Researchers’ Use of Academic Libraries and their Services)』としてまとめ,2007年4月に公表した。

 本調査は,研究者が研究図書館をどのように利用し,認識しているかを把握し,研究図書館の政策を議論する際の根拠(エビデンス)として利用していくことを目的としている。調査手法としては,アンケート調査をおこない2,250名以上の研究者と300名以上の図書館員から回答を得たほか,質的調査として,(1)図書館員30名に対する電話インタビュー,(2)アンケートの際寄せられた自由意見の分析,(3)図書館員3名,研究者7名に対するインタビュー,を行うなど,複合的なアプローチをとっている。

 その結果によれば,研究を進めてゆく上で必要となる情報を得る際に,研究機関の図書館が有効もしくはやや有効と回答した研究者は,あわせて約72%に上っている。また総じて,図書館が研究サービスにおいて効果的な業務を行っていると認識されていることを明らかにしている。しかしながら研究サイクルにおける研究者や図書館等の役割・責任について考察すべき時であるとし,下記の7つのテーマについて,現状を分析している。

  • 現在の図書館にのしかかっている課題
  • 「場」としての図書館の問題
  • 研究者の情報入手行動
  • 研究手法の変革
  • 研究資源の流通過程の変革と図書館の役割
  • 研究資源の可視性・共有性・開放性の進化
  • 図書館と研究者コミュニティとの関係,および将来の図書館サービス普及活動

 4月30日には,本研究の成果報告を兼ねたワークショップ“Who needs libraries anyway?”が開催され,研究図書館員,人文科学研究者,自然科学研究者から1名ずつパネリストが参加し,それぞれの立場から本報告書に対するコメントを発表した。この調査結果をもとに,英国は研究図書館の将来像をどのように描いていくのか,議論の進展が期待される。

Ref:
http://www.rin.ac.uk/files/libraries-report-2007.pdf
http://www.rin.ac.uk/files/programme.pdf
http://www.rin.ac.uk/register