E626 – 公共図書館の協同レファレンスサービスへ向けて基礎調査(韓国)

カレントアウェアネス-E

No.103 2007.03.28

 

 E626

公共図書館の協同レファレンスサービスへ向けて基礎調査(韓国)

 

 韓国国立中央図書館は2006年9月,同館が計画する協力型デジタルレファレンスを実現するための基礎調査として,公共図書館のレファレンスサービスに関する実態調査を実施した(E572参照)。この結果が同館のウェブサイトで公開されている。

 この調査はインターネットで行われ,全国514の公共図書館(私立の図書館も含む)のうち,73%に当たる375館から回答を得た。回答館の91.2%にあたる342館が自館のウェブサイトを運用しており,そこで提供しているサービスは蔵書検索(98.2%),掲示板(96.2%),電子ブック(77.8%)が上位を占めた。ブロードバンドの普及,電子ブック市場の増大(E404参照)などを背景に,これらのサービスが浸透している一方で,レファレンスサービスへの取り組みは進んでおらず,

  • 現段階の主力サービスを順位付けて聞いた設問に「レファレンスが最も主力」と回答した館 2.1%
  • 専用のレファレンス室を設置している館 6.7%
  • レファレンス用のコレクションを構築している館 30.9%
  • 自館のウェブサイトでレファレンス用メニューを運用している館 11.7%
  • リアルタイムのチャットレファレンスを提供している館 なし

といった結果となった。また,ウェブサイトのレファレンス用メニューや掲示板から受け付けた質問の数は週3件未満(79.8%),7件未満(17.3%)が大半で,その質問もレファレンスの質問よりも,資料検索・貸出に関する質問や,利用に関する質問の方が多かった。

 他の図書館と協力関係を形成して行っている事業についての質問でも,協力型レファレンスのための協力関係を形成していると回答したのは14.9%であり,相互貸借(41.3%),行政業務(33.1%),協同収集(26.1%),協同目録(24.8%)といった事業に比べ低かった。その阻害要因を聞いたところ,担当職員数の不足,業務量の増加,トレーニング不足など人員の問題のほか,資料の不足,利用者の需要がない,PCなどの設備が不足しているといった回答が寄せられた。

 このような調査結果を受け,国立中央図書館がどのように協同型デジタルレファレンスサービスを主導していくのか,今後が注目される。

Ref:
http://www.nl.go.kr/book_year/book_2006_7.pdf
E572
E404