カレントアウェアネス-E
No.103 2007.03.28
E627
分断されたコミュニティの架け橋として進む図書館協力(南ア)
南アフリカでは,富裕層/貧困層間もしくは就業者/未就業者間の情報格差,図書館サービスの分断や資料の配置の不均衡,あるいは図書館情報専門職の分断など,かつてのアパルトヘイトが残した負の遺産の解決が課題となってきた。このような分断されたコミュニティの架け橋として,図書館協力のあり方が改めてクローズアップされている。2007年南アフリカで開催されるIFLA大会でも,図書館間のパートナーシップの構築がテーマの1つとなっている。
南アフリカの図書館協力は,1990年代後半から大きく変わりつつある。1997年に南アフリカ図書館協会,1999年には南アフリカ図書館コンソーシアム連合(COSALC: Coalition of South African Library Consortia)及び南アフリカ国立図書館があいついで設立され,図書館協力を担う組織的基盤が整備された。このうちCOSALCは,1980年代から存在してきた5つの地域的学術図書館コンソーシアムを統合して設立されたものであり,そのプロジェクトであるSASLI(South African Site Licensing Initiative)では,出版社,コンテンツアグリゲータ,情報ベンダーとライセンス条件に関する交渉を進めるなど,資源共有の効率化・適正化に向けて実質的な活動を行っている。
電子図書館の構築への取り組みも始まっている。クワズール・ナタール大学をベースに活動するDISA(Digital Imaging South Africa project)では,歴史的に重要な資料のデジタル化を進めている。すでに“Southern Africa’s Struggle for Democracy: Anti Apartheid Periodicals, 1960-1994”では,約40誌の逐次刊行物のデジタルイメージをオンラインで見ることができるようになっている。このプロジェクトには,南アフリカ国立図書館のほか,南アフリカ大学,ローズ大学,ウィットウォータースランド大学,ケープタウン大学などが協力している。
また,学術情報流通のための取り組みとして,電子出版物のアーカイブについても取り組みも始まっており,プレトリア大学,ヨハネスブルグ大学がオープンアクセス(OA)の機関リポジトリを構築し,南アフリカ大学,ローズ大学,ウィットウォータースランド大学,フリーステート大学が,非OAの機関リポジトリを構築している。
南アフリカの図書館協力は,数多くの課題を抱えながらも,技術の発展を取り入れつつ,新しい方法で展開され始めている。
Ref:
Tsebe,J.; Drijfhout,D. Libraries Without Walls: Linking Libraries in South Africa. Alexandria. Vol.18(2006)no.2, p.97-102.
http://www.liasa.org.za/
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http://www.uovs.ac.za/faculties/index.php?FCode=12&DCode=431