カレントアウェアネス-E
No.102 2007.03.14
E619
全国古典籍保護プロジェクトが始動(中国)
中国では,2006年からの第11次五か年計画の中で,国内の古典籍の一層の保護を図ることを目的とした「全国古典籍保護プロジェクト」が位置づけられている。2007年2月28日,中国政府文化部の主催によりの第1回会議が開催され,このプロジェクトが本格的に始動した。具体的には,以下のような事業が実施される予定である。
- 全国の古典籍の調査 文化部の計画に基づき,各自治体が新中国成立以来初の古典籍の全国調査を行い,その結果を国家図書館が登録する。対象となるのは,甲骨や布帛,金石などの特殊な資料を除いた,漢文または少数民族の言語で書かれた古典籍である。2007年は一級,二級にランク付けされる古典籍を調査対象とし,登録制度を制定する。そして2008年から2010年に,二級以下の古典籍を調査し,『中国古典籍総合目録』を作成する。海外に流出した古典籍についても,所蔵機関と適宜協力し,将来的には海外所蔵分の目録も作成する予定である。
- 『貴重古典籍目録』の作成 『貴重古典籍目録』に収録される古典籍は,専門家の審議を経て,政府の文化部,財政部等の各部門からなる「中国古典籍保存委員会」で決定され,国務院の承認を得て公表される。この目録に収録された古典籍は,政府の財政的支援を重点的に得ることができる。
- 重点保護機関の設置 全国各種の図書館,博物館などの古典籍の所蔵機関の中から,貴重な古典籍を多く所蔵し,管理制度が整っている機関を重点保護機関に任命し,財政的支援を行う。『貴重古典籍目録』への収録と同様の決定プロセスを経て,2007年末までには最初の重点保護機関が公表される。
- 古典籍の保護の専門家の育成 古典籍の鑑定,修復,整理の専門家を育成し,古典籍の保護の水準を向上する。
- 確実な修復作業の実施 『貴重古典籍目録』に収録された古典籍,また破損が著しい古典籍の修復作業を重点的に行う。条件が整っている機関には,国家レベルの研究室を設立し,古典籍の保護についての研究・実験を行う。
- 保護成果の活用 ポータルサイトを設けて,『中国古典籍総合目録』のデータをウェブ上で提供する。また古典籍のデジタル化の標準を定め,デジタル化プロジェクトを加速させ,古典籍の全文データを提供する。なおマイクロ化も継続して行う。
今回の会議では,文化部の責任者や国家図書館館長,全国各省・自治区・直轄市の文化庁・局の責任者,省立図書館の館長などが参加し,各事業の実施計画案について議論を交わしたという。これらの案は意見募集に付される予定である。なお,調査・研修・保存などの実務を行うための「国家古典籍保存センター」が国家図書館に置かれる予定であり,このプロジェクトについての資料も同館のウェブサイトで公開されている。
今回の会議に先立ち,政府の執務機関である国務院官房からは,国家の重大プロジェクトであるとして推進を指示する意見書が出されている。国を挙げてのプロジェクトとして,今後の動向が大いに注目される。
Ref:
http://www.nlc.gov.cn/service/jiangzuozhanlan/zhanlan/baohu/html/index_cn.htm
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/59/200703/01/2326.html
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/58/200703/01/2333.html