カレントアウェアネス-E
No.92 2006.10.04
E551
ニュージーランドの公共図書館のいま
2006年8月31日,ニュージーランド国立図書館が,2005年9月に全国の公共図書館を対象に行った調査の結果を発表した。調査対象は75の公共図書館で,72%にあたる54館から回答を得た。
同館は2001年にも同様の調査を行っているが,今回の調査でも総じて,前回の調査で見られた傾向が続いているという。 (1)電子的なサービスをはじめ提供するサービスの幅が広がっている,(2)多くの図書館が建物の建て替え・拡張を行っている,(3)子ども・成人の双方に対し学習の機会を提供するサービスが増えている,(4)これまで図書館の利用者ではなかった層(ティーンエイジャー,先住民マオリ人,乳幼児や就学前児童など)に対して利用を働きかけるとともに,利用に障壁のある層(地方の住民,障害者,新しい移民,リテラシーやICTの基本スキルが不足している人,英語が母語でない人など)を意識したサービスも行っている,といった知見が得られた。また今回の調査では,デジタル化,コミュニティにおける図書館の位置付け,財源,スタッフの4分野が,新たに設問項目に加えられた。それぞれの設問からは,相当数の図書館が地域の歴史や写真資料といったデジタルコンテンツを作成していること,多くの図書館が利用者アンケートや公聴会などでコミュニティからの助言を得ていること,25%の図書館が財政難であると認識していること,スタッフの平均年齢は他の職業の平均と比べかなり高く,85%が女性と性別も極端に偏っていることなどがわかった。
なお本調査の報告書では,今回の調査は主に図書館の運営に焦点を当てたものであるが,地方政府が成果に注目するようになっていることを反映して,今後は図書館がコミュニティに与える影響に焦点を当てた調査を行う見通しであるとしている。この調査に先立つ2006年5月2日には,「ニュージーランドの公共図書館:戦略的枠組み2006-2016」(E402で紹介した「2005-2015」を最終化したもの)も発表されており,今回の調査結果や今後の影響調査を踏まえ,どのような図書館活動が展開されていくかが注目される。
Ref:
http://www.natlib.govt.nz/files/REVISED_REPORT_Public_Libraries_Survey.pdf
http://www.natlib.govt.nz/bin/news/pr?item=1156988924
http://www.lianza.org.nz/library/files/store_011/StrategicFramework2006.pdf
http://www.natlib.govt.nz/bin/media/pr?item=1146517363
E402