カレントアウェアネス-E
No.88 2006.08.02
E523
図書館情報学教育の評価制度:IFLA教育研修分科会のレポートが刊行される
国際図書館連盟(IFLA)の教育研修分科会(ET)は,図書館情報学(LIS)教育の評価制度に関するレポート“Report on quality assurance models in LIS programs”をまとめ,公表した。
この調査の目的は,世界中のLIS教育機関で現在用いられている評価基準を集め,LIS教育と研修の質的向上を支援すること,とされている。そこで基本的作業としてまず,地域ごとに十分な数のLIS教育機関を選定し,現在の品質評価に関するプロセスや,何を重要視しているかといったデータを収集した。集まった品質評価基準,品質評価システム,LIS教育のガイドラインや基準を分析して,アンケートを作成し,160のLIS教育機関に回答を依頼した。回収率は31%であった。
その結果,回答のあったLIS教育機関の約89%で,品質評価システムを有していることが判明した。またLIS教育では,少なくとも次の2つのアプローチによる品質保証が戦略的に重要であると考えられていることも判明した。すなわち,職能団体による評価基準,および政府機関が制定した評価基準である。さらに評価の方法は,58%の教育機関で同じ手順をとっており,(1)自己評価とともに第三者評価の実施,(2)LIS教育固有の,もしくは一般的なガイドラインを用いた訪問調査(ほとんどは同分野の研究者が評価する)の実施,(3)調査結果の作成,(4)フォローアップの実施,といったプロセスで行われる。一方,品質評価対象となる領域について調査したところ,授業のデザインや中身(76%),スタッフ,図書館,コンピュータ設備,奨学金といった利用可能な資源(64%),学生による評価(58%),卒業生の進路(52%)といった項目が上位を占めた。LIS教育機関が定めるガイドラインや基準からは,品質評価に関するモデルが明らかになり,(1)教育プログラム志向,(2)教育プロセス志向,(3)教育成果志向,の3モデルが存在するということが明らかになった。
なお今回の調査では,LIS教育機関の評価を改善するための評価プロセスについては,対象外とされているものの,別途調査の予定があるとのことである。