E420 – 災害から本を守るために−IFLA/PAC公開セミナー <報告>

カレントアウェアネス-E

No.72 2005.12.14

 

 E420

災害から本を守るために−IFLA/PAC公開セミナー <報告>

 

 2004年12月26日のスマトラ島沖大津波・地震(E282参照)から間もなく一年。被害を受けた文書遺産の復興状況と,同様の災害からこれらの遺産を守る政策等に関する情報の共有を目的として,12月6日,公開セミナー「スマトラ沖地震・津波による文書遺産の被災と復興支援」が国立国会図書館で開催された。セミナーでは,マリー=テレーズ・バーラモフIFLA/PAC国際センター長の基調講演に続き,復興状況・活動についての現地からの報告(注),IFLA地域センターの対応と今後の方針についての報告が行われた。

 大津波・地震の被災地であるインドネシア,スリランカ両国の国立図書館長ダディ・P・ラフマナンタ氏およびウパリ・アマラシリ氏によると,大津波から一年になろうとする今でも,被災地では生活基盤の復旧・復興を進めている段階であり,「優先度の低い」被災図書の修復までには手が回っていないのが現状であるという。蔵書,職員,施設,機器など手当の必要なものがいくつもあり,関係機関と協働で復興を進めているところであるそうだが,両図書館長が特に要望していたのは「本を寄贈してもらえないだろうか」ということであった。また,IFLA側からは,災害時に必要な対応を情報として共有することを目的としてこの度「防災計画マニュアル」を作成,2006年に3か国語で発表することを予定していること,大津波へのIFLA/PACオセアニアセンターの対応などについて報告があった。

 質疑応答では,こうした復興,防災の問題に対する市民レベルでの活動の可能性について質問があったほか,インドネシアなどで被災文書の復旧に関わった経験を持つ参加者から図書館のみならず民間で保有されている文書等にも対象を広げる必要性についてコメントがあった。

(図書館協力課:上田貴雪)

(注)被災文書の修復活動にあたっている坂本勇氏の報告も予定されていたが,氏は当日も現地において活動中であり,講演原稿の代読という形がとられた。なお,『カレントアウェアネス』第286号(12月20日発行予定)には,現地における被災文書の修復活動に関する氏の記事を掲載する。(http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/index.html

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/seminar_info.pdf
国立国会図書館. 公開セミナー「スマトラ沖地震・津波による文書遺産の被災と復興支援」配付資料. 2005-12-06.
E282