E2923 – 日本関連の図書館情報資源に関するオープンフォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.533 2026.10.29

 

 E2923

日本関連の図書館情報資源に関するオープンフォーラム<報告>

国際交流基金トロント日本文化センター・畑中理沙(はたなかりさ)
ブリティッシュコロンビア大学コンピュータサイエンス・リーディングルーム・川口亘代(かわぐちのぶよ)
ジョージワシントン大学ライブラリーズアンドアカデミックイノベーション・クリステン・ラック
インディアナ大学インディアナポリス・ビリー・トリンガリ

 

  2026年8月、ジャパン・パスト&プレゼント(Japan Past & Present、以下「JPP」)の図書館サービス・チームは、「日本関連の図書館情報資源に関するオープンフォーラム」をオンラインで開催した。

  JPPは、2024年3月にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と早稲田大学の連携により、日本人文学のグローバル化を目標に掲げて発足した、柳井イニシアティブのプロジェクトである(E2838参照)。2024年12月に発足した図書館サービス・チームでは、日本人文科学分野における図書館学・情報学の専門家の育成と、世界各地の機関における日本関連研究資料へのアクセス拡充を目指して、現在、筆者4人で活動している。

  図書館サービス・チームでは、今後提供していくサービスを検討するにあたり、世界各地における日本研究の図書館、資料、リソースの現状や、研究者および図書館関係者が受けている支援の現状、そして現在彼らが抱える課題およびその対処法について把握する必要があると考えた。そこで2026年3月、世界の日本研究者、および日本研究に従事する司書やアシスタント等を含めた図書館関係者を対象にアンケート調査を実施し、37人の図書館関係者、および95人の研究者からの回答を得た。今回のフォーラムでは、調査結果を共有した上で、JPPと参加者による意見交換の場を設けた。

  今回のフォーラムは、筆者らにとって調査結果を深掘りし、研究者および図書館関係者の双方の声を直接聞くことができる貴重な機会となった。例えば、フォーラムに参加した研究者の一人は、自国では研究時にサポートを提供してくれる図書館員がおらず、日本で客員職に就いた際に初めて図書館員の支援が受けられることを知ったと話した。このような図書館支援の度合の違いは、研究者向けアンケートの回答者のうち、約74%は所属機関の図書館員から何らかの支援を受けている一方、残り約26%(10カ国25人)は研究・教育を支援する図書館職員がいないと回答したことからも明らかだ。

  また、物理的な資料(一次資料、二次資料、アーカイブ資料)へのアクセスの拡充に向けても様々な議論がなされた。例えば、研究者向けアンケートでは、各機関で除籍や寄贈・寄託などに伴い余剰となっている資料を適切な機関に譲渡できるよう配分するプログラムの実施への希望が多く挙がったが、フォーラムに参加した図書館関係者からは、資料の受入に伴う目録登録作業への工数負荷やカタロガーの日本語能力不足といった、現場の課題が懸念事項として挙がった。また、資料の電子化プロジェクトや、研究渡航のための資金援助の必要性についても声が上がった。

  電子的な資料へのアクセスについても、著作権・ライセンスの問題、デジタルプラットフォームやデータベースへのアクセスの困難さが指摘された。特に、国立国会図書館の所蔵資料への日本国外からのアクセス拡充を求める声は、アンケート、フォーラムともに研究者、図書館関係者双方で目立ち、継続的なアドボカシーの重要性が議論された。

  図書館関係者からは、課題解消に向けた支援の形として、ワークショップや会議、シンポジウムの開催への期待が示された。そこで、図書館サービス・チームでは2027年2月にロサンゼルスでハイブリッド形式のシンポジウムを開催する予定である。今回のフォーラムの討議事項を元に、テーマ構築を進めている。

  今回の調査とフォーラムは、世界各地の現場の声を踏まえて、今後のチームの活動を定義する出発点となった。一方で、今回の調査では回答者の勤務先地域が米国に集中し、東南アジアやアフリカに拠点を置く研究者および図書館関係者からは回答が得られないなど、アウトリーチが及ぶ地域に偏りが生じていた。今後は、当該地域の日本研究者および情報専門家との接点を広げてニーズを把握する方法を模索しながら、日本研究資料へのアクセスを支える国際的なネットワークを育てていきたいと考えている。

Ref:
Open Forum on Japanese Library Resources (Survey Results) 日本関連の図書館情報資源に関するオープンフォーラム(アンケート調査結果). Japan Past & Present, 66p.
https://docs.google.com/document/d/1cB_oBAbPf4o7SfMjYs9qpJ5Dr9pjAoCS0XrfhDaPARw/edit?usp=sharing
マイケル・エメリック; ポーラ・R・カーティス. 日本の人文学のためのハブ構築の試み:ジャパン・パスト&プレゼント(Japan Past & Present). カレントアウェアネス-E. 2025, (512), E2838.
https://current.ndl.go.jp/e2838

 

 

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