カレントアウェアネス-E
No.526 2026.07.09
E2894
図書館を使った調べる学習コンクール®30年の軌跡
図書館振興財団教育支援担当・片岡則夫(かたおかのりお)
公益財団法人図書館振興財団が主催する「図書館を使った調べる学習コンクール」が2026年度で区切りの第30回を迎える。コンクールの目的は、図書館の利用促進と調べる学習の普及であり、財団の図書館利用促進事業の柱である。近年、応募総数が12万点を超える本コンクールの、歴史と意義、今後への期待について紹介する。
●図書館振興財団とコンクール
図書館振興財団は図書館の振興を目的とし、2008年に設立された。2012年に公益認定を受け、公益財団法人として、図書館を起点に“ひとの成長”と“まちの活性化”を支援する様々な活動を行っている。
「図書館を使った調べる学習コンクール」のはじまりは財団設立11年前の1997年にさかのぼる。財団の前身NPO法人「図書館の学校」の事業を通じて普及が図られてきた。
例年、9月から10月にかけて作品を募集し、全国の地域コンクールから選ばれた作品が財団に届く。地域コンクールは自治体の教育委員会や公共図書館が主催しているが、参加地域は毎年増加している。一方、審査会ではのべ百数十名の審査員が数次の審査を行い、2月から3月に表彰式が行われる。2025年度は文部科学大臣賞6作品のほか、観光庁長官賞、「2030生物多様性枠組実現日本会議」賞等の入賞32作品が選ばれ、同時に、優良賞141作品、奨励賞282作品、佳作1,423作品も選定された。応募総数は、小学生の部・中学生の部・高校生の部・大人の部・子どもと大人の部をあわせ、12万7,456点である。さらに、171地域(172自治体)で実施された地域コンクールの中から、顕著な推進活動が認められた地域に対し、総務大臣賞が1地域に、図書館を使った調べる学習活動賞が2地域に与えられた。
●コンクールの歴史と意義
第1回当時の応募作品数はわずか925作品であったが、地域コンクールの増加とともに全国に拡がった。新型コロナウイルス感染症感染拡大下の2020年度から2022年度を除き、応募者数は一貫して増加し、累積の応募作品数が2022年には100万点を超えた。
学習指導要領に「総合的な学習の時間」が登場したのは、コンクール開始の翌年の1998年である。その後、学校司書の法制化(2014年)、「主体的・対話的で深い学び」の導入(2017年)と、現代の探究学習にいたる道のりと歩調を合わせ、コンクールは自由で主体的な学びを先取りしながら発展を続けてきた。また、広く一般成人が大人の部に応募できる機会も設けており、ここには、地域の歴史などを深く掘り下げるような、優れた作品が毎年応募されている。
自ら課題を見つけ、学んだ成果を応募するこのコンクールは、そのまま「なにを学びたい?」と子どもらに問いかける場でもある。子どもたちは個性に応じ多様な興味を抱く。興味を原動力にした学びへの手助け、それが図書館を使うコンクールのシンプルな意義である。「図書館で調べるっておもしろい」「読書は楽しい」「学んでまとめて読んでもらうのは素敵だな」…。そう感じられる、豊かな時間をもたらす機会を作りたい。
●コンクール作品の進歩と展開
図書館を使って調べる要素と、自発性や主体性の重視はコンクール開始当初から変わらない。しかし、子どもたちの調べる手法や表現方法は年を経るごとに進歩している。インターネットの活用はもちろん、フィールドワークやインタビューなど多彩な展開がみられる。さらに、研究の基礎ともいえる引用や出典の記述も年を追って上達し、今では小学校の中学年でも、引用ごとに出典が示されるようになってきた。
こうしたコンクールの現状や意義については、これまで何度か調査研究が行われ報告書も出版されている。また、すぐれた応募作品からは出版にいたるケースがいくつもあり、たびたびテレビ番組やニュースで取り上げられている。
ちなみに、一部の受賞作品や調べ方・まとめ方がウェブサイトで公開されているので、是非とも参照されたい。
●これからのコンクール
探究的な学びを重視した本コンクールにとって、図書館が果たす役割は不可欠である。学校図書館では学校司書が図書館の入り口として多くの子どもたちを迎えてくれるだろう。また、地域の公共図書館もあらゆる市民の学びを支援し、より広い資料の世界へと利用者を誘う。こうした図書館利用の活性化をコンクールは支え続ける。
第30回を迎える2026年度、独立行政法人日本芸術文化振興会により伝統芸能に関するテーマの作品を表彰する国立劇場賞が新設され、応募者数のさらなる増加が期待される。
最後に、コンクールに長く関わった筆者自身の関心は受賞者たちの現在である。調べる学習と図書館が、その後の人生にどのような影響を与えたのだろうか。親しく語り合える機会があればうれしい。
Ref:
公益財団法人図書館振興財団.
https://toshokan.or.jp/
図書館を使った調べる学習コンクール.
https://concours.toshokan.or.jp/
“伝統芸能を調べてみませんか?「図書館を使った調べる学習コンクール」に国立劇場賞を新設”. 日本芸術文化振興会.
https://www.ntj.jac.go.jp/topics/top/2026/library/
根本彰. 探究学習と図書館:調べる学習コンクールがもたらす効果. 学文社, 2012, 157p.
図書館振興財団. 図書館と学校が地域をつくる. 学文社, 2016, 156p.
倉持よつば. 桃太郎は盗人なのか?:「桃太郎」から考える鬼の正体. 新日本出版社, 2019, 143p.
たけたにちほみ他. まぼろしの動物ニホンオオカミ:小学生、なぞのはくせいの正体を追う. 学研, 2025, 143p., (動物感動ノンフィクション).
