カレントアウェアネス-E
No.521 2026.04.23
E2875
スペインにおける文化的習慣・活動に関する調査(2024-2025)
国立国会図書館関西館図書館協力課・三崎彩(みさきあや)
●はじめに
2025年10月、スペイン文化省が、同国における文化的習慣・活動に関する2024-2025年調査報告書(Encuesta de Hábitos y Prácticas Culturales en España 2024-2025)を公開した。全国統計計画(Plan Estadístico Nacional)に基づくこの調査は、スペインにおける文化的習慣・活動に関する主要指標の推移を明らかにすることを目的に2002-2003年に初めて実施された。その後継続的に2~4年ごとに行われており、2024-2025年調査は第7回に当たる。本稿では、調査の概要と、2024-2025年調査結果のうち読書及び図書館利用に関する箇所の概略を紹介する。
●調査の概要
調査では、文化的習慣・活動の状況、関心度、満足度、参加の動機や障壁に加え、年齢・性別・学歴などの社会属性との関連、また、書籍、音楽・映像コンテンツなどの入手状況・方法等も含めたデータが広く収集・分析される。文化的習慣・活動のカテゴリーとしては、文化施設(博物館・美術館・アーカイブズ等)の利用、読書と図書館利用、舞台芸術・音楽、視聴覚分野(映画、テレビ、録音音楽等)のほか、情報端末・インターネットの利用やオンライン文化活動(バーチャル博物館、オンラインコンサート視聴等)等が設定されている。
2024-2025年の調査では、これまでの調査と同様に、スペイン在住の15歳以上1万6,000人を対象に、2024年3月から2025年2月にかけて四半期ごとのインタビュー形式で実施された(有効回答率85%)。今回の調査では、プラットフォーム型サービスとして、オーディオブックやポッドキャストの利用に関する項目が新たに加えられた。
●読書に関する調査結果
2024-2025年調査では、64.9%が過去1年で1冊以上本を読んだと回答した。年齢別では15歳から19歳の若者が最も多く(86.5%)、年齢層が高くなるにつれその割合が低くなる傾向が見られる。過去1年間に読んだ本の形態として、紙の本(60.8%)、電子書籍又はオーディオブック(29.8%)と続き、コロナ禍に実施された前回調査(2021-2022)において顕著となったデジタル形式の読書が引き続き拡大していることが確認された。
調査では、読書をその目的によって区別している。過去1年に仕事や学業に関連して読書をしたのは全体の35.2%、余暇に読書をしたのは全体の58.8%となり、仕事や学業以外による動機が読書を促進する要因として重要であると報告されている。読書に対する関心度の平均値は6.3(0から10の評価尺度)で、音楽や視聴覚コンテンツに次いで文化活動の中で高い関心度が示された。読書を妨げる要因としては、「時間がない」が最も多く(45.9%)、興味・関心がない(17.1%)、お金がかかる(15.5%)が挙がった。
過去1年で本を購入した人は50.1%で、そのうち94.6%が紙の本を、27.8%がデジタル形式のものを購入した。オーディオブックを購入した人は6.7%であった。読む本を選ぶ際に最も影響を与えるものとしては、主題(49.4%)、著者(23.2%)、家族や友人の意見(14.3%)のほか、ソーシャルメディア上の意見(5.2%)等が続いた。自宅で電子書籍やオーディオブックのデジタルプラットフォームのサブスクリプションを利用している人の割合は12%であった。
●図書館の利用に関する調査結果
28.6%が、来館又はインターネット経由でアクセスして図書館を利用したと回答(来館22.4%、インターネット経由14.7%)し、コロナ禍の前回調査から7.4ポイント上昇した。図書館利用に対する関心度の平均値は2.9であった。来館・インターネット経由のいずれも15~24歳の若者の利用が顕著であり、高齢層では低い数値となっている。
図書館を利用する主な動機としては、資料貸出しサービスの利用(29.8%)、勉強(26.5%)、図書館の本の閲覧(16.9%)が上位を占めている。来館した人が最後に訪れた際の満足度の平均値は8.3と、インターネット利用(7.1)よりも高い結果となっている。
●おわりに
報告書は、スペインの文化的習慣・活動は、ほぼ全てのカテゴリーにおいて、最初の調査以来最も高い水準に達しており、COVID-19パンデミックの影響を受けた2021-2022年調査時の落ち込みを回復し、2018-2019年調査で記録されたピークを上回っていると評価している。
文化省では、文化的習慣・活動の促進のための様々なプログラムを実施しているが、中でも読書推進は重点分野であるとされており、読書率の向上や出版文化の活性化等を目指す読書推進計画のほか、地方の公共図書館が行う読書促進活動を評価・支援する文化政策プログラムであるマリア・モリネル読書推進キャンペーンなどが展開されている。今後のスペインの読書推進や図書館振興を注視したい。
Ref:
“La Encuesta de Hábitos y Prácticas Culturales registra los mejores datos de consumo cultural en España de las últimas décadas”. Ministerio de Cultura. 2025-10-08.
https://www.cultura.gob.es/actualidad/2025/10/251008-encuesta-habitos-culturales.html
Encuesta de Hábitos y Prácticas Culturales en España 2024-2025. Ministerio de Cultura, 2025, 592p.
https://www.cultura.gob.es/dam/jcr:f6d9b66a-ac72-4d89-8986-7f6c6e94aaa5/encuesta-de-habitos-y-practicas-cultures-en-espana-2024-2025.pdf
Encuesta de Hábitos y Prácticas Culturales en España 2024-2025 : Síntesis de Resultados. Ministerio de Cultura, 2025, 48p.
https://www.cultura.gob.es/dam/jcr:86572f1d-ab4a-422b-8c68-ce1604d4cf5e/sintesis-de-resultados-2024-2025.pdf
“Encuesta de Hábitos y Prácticas Culturales en España. Resultados”. Ministerio de Cultura.
https://www.cultura.gob.es/servicios-a-la-ciudadania/estadisticas/cultura/mc/culturabase/encuesta-de-habitos/resultados-habitos.html
“The Ministry of Culture records the best ever figures for cultural consumption in Spain”. La Moncloa, 2025-10-08.
https://www.lamoncloa.gob.es/lang/en/gobierno/news/paginas/2025/20251008-cultural-consumption.aspx.
“Plan de Fomento de la Lectura 2021-2024”. Ministerio de Cultura.
https://www.cultura.gob.es/pfl-2021-2024/inicio.html
“Campaña de animación a la lectura María Moliner”. Ministerio de Cultura.
https://www.cultura.gob.es/cultura/bibliotecas/maria-moliner/presentacion.html
水野翔彦. スペインにおける読書習慣と書籍購入(2023)の概要. カレントアウェアネス-E. 2024, (490), E2746.
https://current.ndl.go.jp/e2746
