E2761 – 「電子リソースデータ共有サービス」の概要と検討の経緯

カレントアウェアネス-E

No.494 2025.01.16

 

 E2761

「電子リソースデータ共有サービス」の概要と検討の経緯

国立情報学研究所・三村千明(みむらちあき)

 

  電子リソースデータ共有サービスは、電子リソースの管理に必要なデータを共有する、国立情報学研究所(NII)の5つのサービスの総称である。これによって、各機関において重複している電子リソース業務を減らすとともに、さらなる電子リソースの活用を促すことを目的としている。本稿では、各サービスの概要と検討の経緯、今後の展望について簡単に紹介する。

●ERDB-JP

  ERDB-JP(E1678参照)は、主に日本で刊行された電子リソースのタイトルリストを、大学等・出版社・ナレッジベースベンダーが共同作成し、共有するサービスである。2015年4月1日に公開した。

  2012-2013年度、大規模化する電子リソースの管理に対応するため、NIIは大学図書館と連携・協力し、また大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)の協力を得て、ERDB(電子リソース管理データベース)プロトタイプ構築プロジェクトを実施した。2014年度からは、これからの学術情報システム構築検討委員会の下に設置された電子リソースデータ共有ワーキング・グループ(以下「電子WG」)が検討を進めた。その成果の一つがERDB-JPである。

●ライセンス(JUSTICE)

  JUSTICEは、出版社・学会等と交渉し合意したJUSTICE会員館向けの契約条件を、電子リソース製品の提案書(以下「JUSTICE提案書」)の形でJUSTICE会員館に共有している。「ライセンス(JUSTICE)」は、JUSTICE提案書のうちライセンスに関するデータを、OPAC等での公開可否を含めて、JUSTICE会員館限定で共有するサービスである。2022年12月26日に公開した。

●タイトルリスト(JUSTICE)

  「タイトルリスト(JUSTICE)」は、JUSTICE提案書の電子リソース製品に含まれるタイトルリストをKBART II形式(CA1784 参照)で広く一般に共有するサービスである。タイトルリストをリンクリゾルバやOPACに登録した上で、対応するライセンスの公開可の条件を注記欄などに登録して公開すれば、利用者への利用条件の案内に用いることもできる。

  電子WGを引き継いだ電子リソースデータ共有作業部会と、更にその後継であるシステムワークフロー検討作業部会(以下「SW部会」)は、ERDB-JP公開後も、電子リソース管理業務の効率化のために検討を続けた。2019-2021年度には、JUSTICE提案の製品をターゲットとして、JUSTICE会員館の実証実験や、テスト公開後のフィードバック等の協力を得て、2024年5月24日に本サービスの正式公開に至った。

●電子ブックメタデータ(国内)

  「電子ブックメタデータ(国内)」は、電子ブックプラットフォームが持つ書誌データを収集し、一括して検索できるサービスである。SW部会の検討の下に構築され、2024年9月30日に公開した。現在は主に契約検討のための利用が想定されており、ある電子ブックがどのプラットフォームから販売されているのかを確認することができる。

●ライセンス(公開)

  「ライセンス(公開)」は、JUSTICE会員館限定公開である「ライセンス(JUSTICE)」とは異なり、一般に公開可能なライセンス情報を共有するサービスで、現在提供開始に向けて準備中である。「電子ブックメタデータ(国内)」に提供された電子ブックのライセンス情報を共有することを検討している。

●今後の展望

  CiNii Books及びCiNii Researchでは、書誌詳細ページに電子版のアクセス先を表示するために、ERDB-JP(E1894参照)や「電子ブックメタデータ(国内)」のデータを利用している。これは利用者が紙と電子の区別なく情報を検索できる統合的発見環境の先駆けである。

  今後、SW部会では、「電子ブックメタデータ(国内)」に各館の所蔵状況(契約情報)を登録し、「ライセンス(公開)」のデータと連携することで、電子ブックの目録を構築することを検討している。これらの活動を通して真の統合的発見環境の構築へとつなげていきたい。また、大学図書館における新たなサービスの創出や業務効率化に、本サービスが貢献することを願っている。

Ref:
“電子リソースデータ共有サービス”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
https://contents.nii.ac.jp/korekara/libsysnw/e-resources
三村千明. 電子リソースデータ共有サービスの現状. NII, 2024, 60p.
https://www.nii.ac.jp/event/upload/libfair2024_forum3_4.pdf
ERDB-JP.
https://erdb-jp.nii.ac.jp/ja
“ライセンス(JUSTICE)”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
https://contents.nii.ac.jp/korekara/libsysnw/e-resources/licenses-justice
“タイトルリスト(JUSTICE)”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
https://contents.nii.ac.jp/korekara/libsysnw/e-resources/titlelists-justice
“電子リソースデータ共有作業部会”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
https://contents.nii.ac.jp/korekara/about/erdbwg
“システムワークフロー検討作業部会”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
https://contents.nii.ac.jp/korekara/about/sw_wg
“電子ブックメタデータ(国内)”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
https://contents.nii.ac.jp/korekara/libsysnw/e-resources/ebooks
“CiNii Booksと電子ブックメタデータ(国内)との連携機能を公開しました”. NII. 2024-09-30.
https://support.nii.ac.jp/ja/news/cinii/20240930
“CiNii Researchと電子ブックメタデータ(国内)との連携機能を公開しました”. NII. 2024-10-07.
https://support.nii.ac.jp/ja/news/cinii/20241007
塩野真弓. ERDB-JP:共同で構築する電子リソース共有サービス. カレントアウェアネス-E. 2015, (282), E1678.
https://current.ndl.go.jp/e1678
古橋英枝. CiNii Booksの本文アクセス強化. カレントアウェアネス-E. 2017, (321), E1894.
https://current.ndl.go.jp/e1894
渡邉英理子, 香川朋子. 図書館におけるナレッジベース活用の拡がりとKBARTの役割. カレントアウェアネス. 2012, (314), CA1784, p. 14-17.
https://doi.org/10.11501/6006433