E2666 – オープンサイエンス時代の大学図書館員像<報告>

カレントアウェアネス-E

No.473 2024.02.08

 

 E2666

オープンサイエンス時代の大学図書館員像<報告>

東北大学附属図書館・三角太郎(みすみたろう)

 

  2023年12月12日、令和5年度国立大学図書館協会シンポジウム「オープンサイエンス時代の大学図書館員像:これからの<人材>構築にむけて」が、東北大学の会場とオンライン配信のハイブリッド形式で開催され、400人を超える参加があった。本稿ではその概要を紹介する。

  国立大学図書館協会(JANUL)は2021年に策定した「国立大学図書館協会ビジョン2025」のもと、大学図書館の新しい在り方について議論を進めてきた。ビジョンでは、「知の媒介:知の交流を促す<人材>の構築」を重点領域の一つとし、人材の確保を求めている。また、2023年に文部科学省が公開した「オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について(審議のまとめ)」でも、人材の問題の重要性が強調されている。JANULでは、人材委員会を中心に、人材の確保・育成の課題に継続的に取り組んできた。

  シンポジウムでは、国内外で求められる大学図書館員像に焦点を当て、大学図書館員の在り方、必要なスキルや能力、そしてこれからの人材構築に向けた展望について議論が行われた。大隅典子氏(東北大学)の開会挨拶、佐藤初美氏(東北大学)の趣旨説明に続き、前半では、海外で求められている大学図書館員像、国内の大学図書館員像の実際、専門人材を生かす人事制度という視点からの三つの講演があった。後半ではパネルディスカッションが行われた。

  鈴木一生氏(城西大学)、百鳥直樹氏(筑波大学)から「海外で求められる大学図書館員像の実際:経営計画・人事政策・研究データ管理」と題した講演があった。まず海外の大学の経営戦略計画における図書館の位置づけの分析の報告があった。次に求人情報の分析による大学図書館員採用時に求められている専門性・スキルについての報告があった。また研究データ管理(RDM)関連文献の包括的文献レビューに基づいたRDM関連業務に必要となるスキル及び業務の導入プロセスの分析についての報告があった。

  伊原尚子氏(京都大学)からは「キダハミから見えたもの」と題して、図書系人材獲得にむけた事業である「きみも大学図書館で働いてみないか」(略称:キダハミ)実行委員会(令和4年度国立大学図書館協会近畿地区協会助成事業)についての講演があった。事業の背景や実施した調査の結果、就職先として大学図書館を意識してもらうために実施した展示・ウェブサイト・SNSによる情報発信とその結果についての報告があった。

  佐藤龍彦氏(東北大学)からは人事企画部の立場から、「専門人材を活かす人事制度の構築」と題し、大学全体の人事制度における、人材獲得、従来型キャリアパスとその限界、キャリアパスの複線化と専門人材を活かす人事制度等についての講演があった。

  パネルディスカッションでは、JANUL人材委員会の髙野恵子氏(岡山大学)をモデレータとし、パネリストとして、登壇者に加え、国立大学図書系管理職の立場から大山努氏(東京大学)、人材委員会から大和田康代氏(筑波大学)、上野友稔氏(電気通信大学)が参加し、これからの大学図書館員像について、人材の獲得・育成、キャリアパス、求められるスキルなどの様々な視点から議論を行った。会場やオンライン参加者も交えて、活発な質疑応答や議論が展開された。

  最後に、坂井修一氏(東京大学、JANUL会長)から挨拶があり、シンポジウムは閉会した。

  参加者からは「人事制度に踏み込んでの議論が良かった」「図書館員の専門性とは何かについて考える良い機会となった」「これからの大学図書館員に求められるものの多さを実感し、日々スキルアップに努める必要性を感じた」などの感想が寄せられた。

  当日の資料及び動画はJANULウェブサイトから公開している(一部会員館限定)。詳細はそちらを参照されたい。

Ref:
“令和5(2023)年度 オープンサイエンス時代の大学図書館員像:これからの<人材>構築にむけて”. JANUL.
https://www.janul.jp/ja/operations/symposia/2023/symp2023
“国立大学図書館協会ビジョン2025”. JANUL.
https://www.janul.jp/ja/organization/vision2025
オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について(審議のまとめ). 科学技術・学術審議会 情報委員会, オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方検討部会, 2023, 24p.
https://www.mext.go.jp/content/20230325-mxt_jyohoka01-000028544.pdf.pdf
きみも大学図書館で働いてみないか.
https://www.kidahami.com/