E2365 - 本を通じたコロナ禍でのコミュニティ形成:聖学院大学の取組

カレントアウェアネス-E

No.410 2021.03.25

 

 E2365

本を通じたコロナ禍でのコミュニティ形成:聖学院大学の取組

聖学院大学経営企画部入試・広報課

 

   聖学院大学(埼玉県)は,本学が運営するウェブサイト「&Seig」(あんど・せいぐ)に,新たなコンテンツとして『Bookyard あなたと出会う、本の中庭』(以下「Bookyard」)を創立記念日である2020年10月31日に公開した。

   「&Seig」とは,本学で日々を過ごす一人ひとりの「出会いを通じて気づきを得る活動」を取り上げ魅力(ブランド)を発信するウェブサイトである。本学では,創立30周年(2018年)のタイミングで,教職員・学生の協働により新たなタグライン「一人を愛し、一人を育む。」を策定した。「&Seig」は,このタグラインが何を意味し何を目指しているかを発信するメディアとしても位置付けられている。

●Bookyardについて

   コロナ禍で日々の活動が制限されるなか,本学学生も通常であれば感じられていた大学生活での人とのつながりや帰属意識が薄れ,その分,自分自身と向き合う時間が増えているのではないか。Bookyardは,本をきっかけにコロナ禍でのできごとや考えの変化を投稿し,その内容を大学に関わる人々(学生・教職員・OBOG・地域の人々)と共有することを目指して立ち上げたウェブコンテンツである。Bookyardには,「あなたと出会う、本の中庭。同じ学校に通う,誰かの感性・偏り・思考。そういったものが垣間見える「本」がきっかけとなり新たな出会いが生まれる中庭のような場所,それが「Bookyard」です」というリード文を掲載している。投稿はテーマ(「コロナ禍に誰かに贈りたい本」など)を設定しながら,次の投稿者(本学に関わる人であれば誰でも可)を指名するリレー形式で行い,本のバトンをつなぎながら増えてゆく。入試・広報課がBookyardの運営を担っており,現在は学生編集チームの立ち上げも準備している。

●企画の意図

   マスクで隠された顔,リモートで行われる授業,すでに仲の良かった友だちだけと交わされる会話……コロナ禍において,オンラインでの授業をはじめ,新しい仕組みや可能性が生まれ広がった反面,教室や学食で生まれていたような,予期せぬつながりの連鎖といった新しい出会いは激減している。本学においても感染拡大防止対策のため「活動制限ガイドライン」を設け,キャンパスへの立ち入りを制限することとなった。2020年度は通年平均で70%から90%の授業をオンラインで展開し,同時双方向型,オンデマンド型,課題学修型で実施した。学生へのオンライン授業アンケート調査の結果では,課題は多くあるものの,教員との距離感が丁度よく,他の受講生の声を聴くことができる同時双方向型の授業が好評だった。その一方,キャンパス入構制限により直接顔をあわせる機会が減り,部活動やサークル活動などをはじめとした課外活動が停止となるなど,授業以外における学友とのつながりや出会いが減ってしまった等の学生からの声が寄せられたことから,本学でもオンラインでの学生交流イベントが複数企画された。そのような学内の機運も高まる中,入試・広報課でもインターネットを使って新しい出会いの形を生み出せないだろうかと模索したところから企画がスタートした。

   企画を検討するにあたり,ネットコースといったオンライン教育の場を経験した外部の有識者等に話を聞き,同期や先生とどのようなコミュニケーションをとっていたかをヒントにした。それによって導き出されたのは,インターネット上のコミュニケーションやコミュニティの活性化には,個々人の「偏愛」や「感性」がキーになるのではないかということだった。本学ではビブリオバトル(CA1830参照)が浸透していることもあり,多くの人にとって身近な「本」を媒介として自身の偏愛を発露させる機会を生み出す,そのための場を用意することが企画された。Bookyardの参加者には,投稿する際「本を踏まえた個人的なエピソードを書くこと」を促すよう,投稿フォームを設計している。

●今後の展開

   2021年3月現在,「コロナ禍に誰かに贈りたい本」「まだ読んでないけど読みたい本」をテーマに学生,教職員,卒業生,関係者から42の投稿が公開されている。

   Bookyardに投稿された本にまつわるエピソードはアーカイブしたあと,冊子の発行やリアル展示,オンラインイベントなどへの展開も計画している。 2021年2月には,投稿の一部が桶川市(埼玉県)の図書館と書店を融合した新しい文化交流施設「OKEGAWAhonプラス+(オケガワホンプラス)」のイベントスペースで展示され,本学の取組を地域の人々に知ってもらう機会を得ることができた。本をきっかけとして滲み出る思考や生活。垣間見える瞬間に感じ取れるその人自身の感性に触れられる場として,さらなる交流を創出することを目指している。

Ref:
“聖学院大学が,コロナ禍だからこそ立ち上げた新しいWEBコンテンツ『Bookyard あなたと出会う、本の中庭』を公開”. 聖学院大学. 2020-10-31.
https://www.seigakuin.jp/news/press-release/20201031bookyard/
“Bookyard あなたと出会う、本の中庭”. &Seig.
https://www.andseig.org/bookyard/
吉野英知. 新しい本の楽しみ方「ビブリオバトル」の多方面への展開動向. カレントアウェアネス. 2014, (321), CA1830. p. 14-17.
https://doi.org/10.11501/8752503