E2245 – 愛媛県議会における議会図書室機能強化の取組について

カレントアウェアネス-E

No.388 2020.03.26

 

 E2245

愛媛県議会における議会図書室機能強化の取組について

愛媛県議会図書室・天野奈緒也(あまのなおや)

 

●議会改革検討協議会での協議

 愛媛県議会では,超党派の議員で構成する議会改革検討協議会(議長の非公的諮問機関)で議会改革の検討に取り組んでおり,2017年度に議会図書室の機能強化について検討を行った。これは当時,利用が減少傾向にあった図書室が,2018年に1948年の設置から70年の節目を迎えることから,愛媛県議会基本条例の「議会は,議員の調査研究に資するため,議会図書室を適正に管理し,及び運営するとともに,その機能の強化に努めるものとする」という規定を踏まえ,検討を進めたものである。

 図書室の現状分析と議員・議会事務局職員へのアンケート調査を基に協議を重ね,二つの改革案を取りまとめた。一つは,従来の購入図書選定委員会を,図書の選定に加えて,図書室の管理や運営の大きな方針について協議・調整を行う「議会図書室管理・運営委員会」として,その役割を見直すものである。もう一つは,「愛媛県議会図書室機能強化のためのアクションプラン」の策定である。

●愛媛県議会図書室機能強化のためのアクションプラン

 これは,機能強化の施策を3年間(2017年度から2019年度)の年次計画としてまとめたもので,議会図書室としては全国初の取組である。目指すべき姿を「質問・政策づくりに「役立つ」県議会図書室」とし,機能強化の施策を図書館の三要素とされる「職員」「資料」「施設・設備」の観点でまとめ,観点ごとに現状と課題,目指す方向,具体的な取組,年度別事業計画を記載した。

 図書室には,図書室長1人(議会事務局長が兼務)と,専任の司書1人の計2人が配置されている。再任用期間を含め38年勤務した前任の司書の退職に伴い,2017年度に県立図書館との人事交流により司書(筆者)の転入があった。職員の観点では,このように常勤の専任司書を配置していることを強みととらえ,その専門性を生かして議会の情報収集力の強化を図ることとした。具体的には,レファレンスサービスの利用拡大や,積極的な情報提供・情報発信(利用案内の作成,図書室だよりの刷新,テーマ展示の実施),司書の専門性の向上(研修機会の確保,県図書館協会への加入)に取り組んだ。

 資料の観点では,多様な情報源の充実化を図ることとした。具体的には,図書・雑誌の充実化(蔵書管理や蔵書検索等ができる図書館システムの導入,図書の借受けやレファレンス等における県立図書館との協力体制の構築,購読雑誌の見直し),インターネット情報源・データベースの充実化(インターネット情報源の積極的活用,愛媛新聞主要記事見出しや愛媛県関連人物雑誌記事等の独自のデータベースの作成継続,有料データベースの導入),行政・議会刊行物の充実化(愛媛県等の行政刊行物の整備(新着コーナーの整備等),収集した行政刊行物の情報共有等の行政資料室との協力体制の構築,他府県や県内市町の議会刊行物の整備(提供依頼,コーナーの整備))に取り組んだ。

 施設・設備の観点では,図書室を使いやすく快適な利用環境に整備することとした。具体的には,魅力ある書棚づくり(不要な図書・資料の処分,図書の配置の見直し,書棚の整理・見出しの整備),快適な読書空間の整備(机・椅子等の交換),使いやすい利用方法への改善(貸出冊数・期間を増やすための利用規程の改正,プライバシーに配慮した形式への貸出簿の改善)に取り組んだ。特に不要な図書・資料の処分には2017年度当初より注力し,図書4,982冊(内容が古くなったもの,汚損が甚だしいもの等)を廃棄処分,239冊を県立図書館に移管して有効活用を図り,書庫のスペースを確保した。

 これらの施策は,おおむね計画期間内に完了する見込みである。アクションプラン開始前の2016年度と2019年度(1月まで)の利用状況を比較すると,利用者数は議員が169人から285人,議会事務局職員が188人から661人,貸出件数・冊数は議員が49件106冊から91件216冊,議会事務局職員が67件116冊から150件255冊,レファレンス件数は議員が20件から77件,議会事務局職員が15件から129件と,いずれも大きく数字を伸ばしている。また,2019年度の議員の実利用率は,47人中27人の利用で57.4%(改選後の2019年5月から2020年1月まで)となっている。

●愛媛県議会図書室機能強化ビジョン

 アクションプランの計画期間完了後の機能強化の長期的な指針として,「愛媛県議会図書室機能強化ビジョン」を,議会図書室管理・運営委員会での協議を経て,2019年12月に策定した。目指すべき姿はアクションプランから継承し,機能強化の方向性は,強化すべき三つの機能(集める,見つける,伝える)と二つの推進姿勢(進化する,つながる)の五つの観点でまとめた。具体的な取組は,毎年年間計画を立てて実施し,進捗状況を議会図書室管理・運営委員会でチェックする。今後担当者が代わっても,このビジョンに沿って,これまでの取組を止めることなく継続・推進するとともに,図書室を取り巻く状況の変化等に対応した新たな施策を展開することができる。これからも成長し続ける愛媛県議会図書室でありたい。

Ref:
https://www.pref.ehime.jp/gikai/katsudou/kihon/index.html
https://www.pref.ehime.jp/gikai/katsudou/topics/h300319_topics.html
https://www.pref.ehime.jp/gikai/katsudou/topics/r011209_topics.html